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泙川三重泉沢(上部のみ)
金子 隆雄

山行日 2002年8月31日~9月1日
メンバー (L)金子、藤井、福間、天内、金澤

 金曜夜にいつもの東所沢駅に集合し出発する。沼田ICで降りて国道120号を日光方面へと向かう。この道はロマンチック街道と言うらしい(ホント?)。老神温泉を過ぎ、橋を渡った先で国道と分かれて林道へと進む。すぐに舗装は尽きてダートとなり、慎重に車を進めると道は二俣となる。ここが奈良(なろう)の集落らしい。集落といっても今は1軒しかないので集落とはいえないかも。右に進路を取りしばらく進むと、ゲートがあり先に進めなくなる。藤井さんの計測によると国道からこのゲートまでは7kmの距離になるそうだ。ゲートが開かないかトライしてみるが、これを開けるには工具が必要で、持ち合わせていないので諦めて今日はここまでとする。
 ゲートの奥にテントを張って、一杯やってから寝る。が、テントを張った場所が悪かった。朝まで車は来ないだろうと安易に考えていたのだが、夜中にゲートを開けて入ってくる車が結構あるのだ。その度に起き出してテントを端に寄せて、また戻してと、これを何度か繰り返す。このため熟睡は叶わなかった。夜中にやって来た車の人は皆ゲートを開けるための工具を持っていた。

8月31日 快晴
 寝不足でボーッとした状態で出発準備をする。最後に通った車がゲートを開けたままにしていったのだが、閉められてしまったら閉じ込められてしまうので歩いていくことにする。ゲートから先はそれほど悪くはなく充分に車が走れる道だ。
 林道歩き50分で三重泉沢出合の三重泉橋に着く。そこから更に林道を奥へと進み、ニグラ沢に架かる橋の手前で一本とる。林道上には地図に載っていないトンネルがいくつかできている。
 ここからニグラ沢右岸側にニグラ峠を経て三重泉沢へ至る道がついているのでこれを利用する。この道は地図には載っていない。出だしは少し急だが、後はそれほどでもなく良く踏まれたいい道だ。途中踏み跡が錯綜している所もあるが赤テープを丹念に拾えば問題ない。50分でニグラ峠に着き、ここから一気に広河原目指して下降する。峠から広河原まではわずかの距離だった。
 広河原でゆっくりと溯行の準備をする。ここまでかなりいいペースで来ている。広河原から10分ほどで右岸より三林班沢(アザミ沢ともいう)が出合ってくる。時間に余裕があったのでちょっと釣をすることにした。私は三林班沢に入ってみる。三林班沢は岩盤の張った沢でナメ状が続いている。戻って本流を少し遡上してみるがまったくダメで引き返す。出合に戻ると藤井さんが鼻に大きな絆創膏を貼って顔を血だらけにしている。滑って顔面を岩に打ち付けてしまったそうだ。福間さんは私を探しに三林班沢へ入ったきりなかなか帰ってこない。福間さんを呼び戻しに更に天内さんが出動する。
 藤井さんの傷はカギ裂き状に1cmほど切れているだけだが深そうに見える。また腫れてきているため念のため病院へ行くことにする。ここからなら3時間ほどで車まで戻れるはずだ。藤井さんの希望もあり4人はそのまま溯行を続けることになり藤井さんと別れる。
 三林班沢出合からしばらくゴーロを行くと10mナメ滝で、これは左岸を簡単に越える。いずれも容易な小滝をいくつか越えると2段15m滝となり左岸を簡単に捲いて越える。2段17m滝は左手のガレたルンゼを途中まで登り、右手に続く踏み跡を辿って落口に降りる。この先二俣まで滝はなくゴーロとナメが続く。
 二俣は右俣が枝沢のように出合ってくるので二俣と気づかず通り過ぎてしまい、しばらくして戻ることにする。天内さんは左俣を溯行するつもりだったらしく戻ると言うとちょっと不満そうだった。そういえば天内さんには右俣に入るということを言ってなかったんだ。二俣の20mほど上流の左岸にいい幕場があったので今日の泊り場とする。
 タープを張り、ビールを冷やし、薪を集めて準備万端整ってもまだ陽は高い。皆寝不足なので昼寝をする。4時頃より焚き火を始める。流木は乾燥しきっているので良く燃える。その夜は星空を眺めながら焚き火の周りでごろ寝する。天内さんは靴を半分燃やしてしまった。

9月1日 快晴
 今日も天気は良さそうだ。夕べ炊いておいた飯をお茶漬けにして朝飯を済ませ、6時過ぎに出発する。三重泉沢の本流は左俣だが流程の短い右俣に入る。右俣には一つの滝もなく延々とゴーロが続くだけだった。出合から約1時間で二俣となる。左沢は沢床も低く本流に見えるが、ここは過去の記録を参考に、ガレて急峻な右沢に入る。右沢を登って一汗かくと正面を岩壁に塞がれたお花畑に出る。なかなかに雰囲気の良い所だ。振り返れば噴煙を水平にたなびかせる浅間山が見える。
 ここから右に続く踏み跡を辿ると、すぐに目指すニグラ尾根の頭と1927mピークとのコルにヤブ漕ぎもなく到着する。コルから1927mピークへ上がり、三俣沢の支流のス沢を目指して笹ヤブを掻き分けて下降する。30分でス沢に降り立つことができた。ス沢の最初の一滴は岩の間から湧き出していた。ス沢は適度な間隔で滝が出てくるが全てクライムダウンが可能だ。三俣沢に出合う所には堰堤があり、右岸の捲き道を辿って三俣沢の広河原に降り立つ。
 広い河原をしばらく下降すると徐々に沢幅は狭まりゴルジュ状の素晴らしい渓相になってくる。下降中、二人の釣り人と二人の沢屋風の人に出遭う。ニグラ沢出合を過ぎると再び広い河原となり林道が見えてくる。林道へ上がる場所を探しながら河原を行くと堰堤があり懸垂しないと降りることができない。右岸の浅いルンゼを少し登ると踏み跡が出てきたのでこれを辿って林道に上がる。作業小屋のある場所の少し先だった。
 暑い林道をテクテク歩き、三重泉橋を過ぎて程なく藤井さんが迎えに来てくれた。予定よりかなり早い下山だったのでゲートまで歩くことを覚悟していただけにありがたかった。おまけに冷えたビールまででてきて喜びも頂点に達しようというものです。ゲートには『ケガ人搬出のため夜10時までこのゲートを閉めるな』という貼り紙があった。藤井さんが昨夜泊まった旅館で作ってもらって貼ったとのこと。実態は逆にケガ人がまともな人達を搬出しに来たという次第です。
 藤井さんのケガの具合ですが、近くの皇海診療所というところで治療を受け、傷口が開いたままだったので縫ったとのことでした。
 藤井さんは泊った老神温泉の近辺を半日間徘徊したらしく、やたらと精通してました。

 今回は尾根越えで入渓し右俣へ入ったため溯行距離が短くちょっと物足りなさを感じてしまった。三重泉沢はやはり出合より八丁暗がりのゴルジュを突破して行ったほうが充実した沢登りを味わえるだろう。今度行く時はそうしようと思っている。また、三俣沢も結構いい感じだったので大岩沢を溯行して三重泉沢の右俣を下降するのもいいかも知れない。

〈コースタイム〉
8月31日 林道ゲート(6:50) → ニグラ沢(8:30~8:50) → ニグラ峠(9:40) → 広河原(10:10~10:40) → 三林班沢
9月1日 二俣(6:10) → ニグラ尾根上のコル(7:25~7:40) → ス沢出合(10:00) → ニグラ沢出合(11:30) → 林道(11:50)
泙川周辺概念図

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