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阿弥陀岳北西稜
越前屋 晃一

山行日 2003年1月25日~26日
メンバー (L)越前屋、金子、中館

 深夜、美濃戸口に到着。少し入った広場に車を止めてそそくさと仮眠をとる。
 早朝、しっかりと冷え込む空気に起こされて出発。八ヶ岳が寒いのはいつものことだが、それにしてもこの冷え込みはいったいなんだろう。車に乗り込んでしばらくいったところでエンジンがプスプス言いだして止まってしまった。どうにかこうにかだまして車を動かしはしたが、朝からこれにはまいった。どうも燃料の軽油が凍ってしまっていたようだ。ああー、何か悪い予感がする。
 もう少しで赤岳山荘に到着と思ったところで前の車がスタックして道をふさぎ、小一時間の足止め。やっぱり、悪い予感がする。
 気を取り直して行者小屋をめざす。いつもは踏み固められた南沢も登山道が雪に埋まって歩きにくい。聞けば、八ヶ岳は一昨日大雪だったようだ。
 結局、行者小屋に着いたのはもう昼かという頃だった。幕営料の集金に来た小屋の若い人に聞くと「北西稜はどうでしょうか?おとといの雪に埋まっているので・・・」という返事がかえってくる。悪い予感が当たってしまった。
 とにかく、疲れ気味の金子さんはテントに残ってもらうことにして、予定どおり偵察を兼ねてラッセルに出かけることにした。
 南沢の登山道をすこし下り、道をふさぐように飛び出した木のところからかすかな沢筋をたどり、これも地形図上にはあらわれないような支尾根が取り付きになる。確かにここに来るまですっかり雪に埋もれたルートををさぐりながら2時間ほどかかってしまった。輪かんを持ってこなかった中館さんは後ろでズボズボはまってたいへんだったようだ。あとは、明日の分に残してテントに帰ることにする。
 翌朝、敗退気分に押され出発も7時と遅くなる。とにかくいけるところまでということにして、テントを出る。
 前日のトレースから支尾根に乗って北西稜をめざすがきびしいラッセルが続き遅々として進まない。ようやく登りきったところで沢に出合う。この沢を渡った先の急な登りを終えた所に、実質上の取り付きになる露岩がある。通常はこの沢を下から詰めてここまでたどってもいいらしいが、今日は深いラッセルでどう考えても無理だろう。新雪を乗せた60度ほどの登りは雪崩れそうでいやらしかったが、樹林との境目を登る。あとすこしで急登も終わろうというところまで来て、予定していた11時になり行動を終えることにした。
 あえ無く取り付き敗退となったが、また、挑戦しよう。岩肌に雪をまとった八ヶ岳はことのほか美しかった。


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