トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ312号目次

吾妻連峰山スキー
さとう あきら

山行日 2003年2月8日~10日
メンバー (L)佐藤明、四方田、中舘、飯塚、山沢、鈴木(章)

 吾妻連峰は山岳スキーの一大エリアとしても有名だ。スキーリフトが森林限界直下まで伸び、そのすぐ上には高原状の稜線が続く。ラクして登り、たらたら歩きで眺望を楽しみ、そしてその後は山麓に湧く温泉で大宴会だ、という魂胆での例怪?山行の企画となった。
 募集したところ、参加表明は元気派女性4名に対し、男性はわずかに1名。よもちゃん、来てくれてありがとう。これで私も圧倒されずに済む。
 吾妻の山は浦和みたいなものだ。とは言っても東浦和、西浦和と東西南北全て揃っている訳ではないが、東吾妻、中吾妻、西吾妻と一応の3点セットは完成している。では吾妻の山名の由来は何か、と調べたところ、連峰のほぼ中央位置する家形山がルーツらしい。家の屋根の形をしていたことから東屋(あずまや)山という名が生じ、それが吾妻山に変じたという説が有力なようだ。そうすると家形山はさしずめ「元祖本吾妻山」、となるのかも知れない。
家形山への道すがら  今日のルートは、元祖家形山の山裾のコルから滑り出し、約7km先の五色温泉に滑り込む、という昭和初期のクラッシックルートだ。往時には山岳スキーの一般ルートとして著名だった事は過去の文献でも明らかだが、植生も変わった50年後の今では忘れかけられたような存在だ。実は2年前にもこのルートを滑ろうとしたのだが、悪天のため中止。さて、リベンジなるか。
家形山南斜面はおいしそう、いえ肩をすぼめて、おそろしそー  2月8日朝、吾妻スキー場に到着。リフトを3本乗り継ぎ、出発9時40分。先行トレースに従い樹林帯を進み、家形山のコルに到着12時。予想外に積雪が少ない。それでもコルから続く家形山南斜面は真っ白の1枚バーンになっており、おいしそう。スキーのうまい順に、まず山沢嬢が華麗なシュプールを、と思ったが、3ターン目にはもう転んでいる。次々に滑り出すが、みーんなバタバタ状態。典型的なモナカ雪で、表面の硬いが薄いクラスト部分が割れると、中の雪はふーわふわ。スキーコントロールが不能となり、あとは転ぶしかない。
家形のコルから下る  そんな時に事故が発生した。よもちゃんが足をとられ転倒した際に、足首を痛めてしまったのだ。優しい中館嬢は治療を試みるが、状態は思わしくなく、とりあえず全員で夏山登山道のある追分まで戻る。ここからは下山のトレースもしっかりしており、また一人で歩けそうとの事だったため、パーティを分割し残りメンバーで再び五色温泉を目指す。しかしブッシュが深くてルートが不明瞭であり、時間的余裕もないためあきらめ、結局よもちゃんと一緒に吾妻スキー場に下山となった。
 その夜は五色温泉泊。明治時代から続く温泉旅館だが、スキー場が閉鎖された今は冬季に泊まる人もまばらだ。外湯は改修され、吹雪でも快適に入れるようになったのはありがたいが、宿泊料も割高感があり、今ひとつの満足度である。
西吾妻への稜線は美しい  翌2月9日は朝から雲が低く垂れ込み、山行は中止。米沢の白布温泉「森の館」にて1日中ゴロゴロとなる。この施設は、風呂、休息所に体育館まで付いて一日わずか395円の利用料金。持ち込みの酒と行動食でしっかり元気回復。常に有り余る元気の飯塚嬢は、そのパワーを卓球に投入したところ、ピンポン玉が割れる始末。代わりにバスケットボールをしてもらったが、こちらはこわす事なく良かったっ。
 日程に余裕のない3名は午後帰途に付く。一方残り3名は、せめて1本くらいはツアーをしよう、という事で明日の天気に期待をつなぐ。
ガスの樹氷帯は幻想的だ  2月10日、晴れ。さあ西吾妻から若女平へのツアーに出発だ。元気な章子嬢を先頭にオオシラビソ帯をぐいぐい登ると、わずか20分で西吾妻山への稜線に到着となる。朝日を浴びた飯豊連峰の山並みも神々しく輝き、写真クラブにも所属の中館嬢は撮影に余念がない。
 しかし梵天岩まで来るとガスで視界が閉ざされるが、コンパス片手に何とか西吾妻小屋を発見。ここでシールを脱ぎ、滑降開始となる。最初は狭い樹氷の間を縫っての滑りでちょっとてこずるが、直ぐに沢の源頭の快適斜面に突入。パウダースノーを蹴散らしながら下ることしばしで、美しいダケカンバが続く若女平となる。ここは1ヶ月程前に山スキーの二人組がルートを外し遭難した場所だ。少し左よりに傾斜した斜面なため、視界が悪いと確かにそちらについ引き込まれそうだ。しかし今日のように晴れていれば快適そのもの。標識も林立状態で不安感は全くない。
 その下のヤセ尾根も順調に通過し、白布温泉への到着は1時過ぎ。ツアー時間4時間のお手軽山スキーだった。
 天気が下り坂のため、そのまま帰途に就く事にする。途中福島の飯坂温泉郷のひとつ、穴原温泉共同風呂に立ち寄った。入浴料百円ながらも、かけ流しの熱い湯はとても良く温まる。スキーはたった1ルートしかトレース出来なかったのは残念だが、温泉だけは3つ入れた、という事で相応に満足の山行だった。同行のお姉さんも多かったしね。
パウダースノーをけ散らす


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ312号目次