トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ312号目次

甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根
橋岡 崇史

山行日 2003年4月12日~13日
メンバー (L)小幡、(橋岡)

 三峰山岳会での、私にとってはじめての山は甲斐駒ヶ岳だった。
 4月9日のルームに見学に来て、その週末に行くことになった。お試し山行という素晴らしき制度のおかげである。
 私が山登りを始めたのはもう25年も前のことであるが、現在までの間、かなりの空白があり、それほど多くの山に行っていない。有名な甲斐駒ヶ岳さえも行ったことがなかった。ルームに来て、どうしても甲斐駒には行かなくてはならないと、強迫観念に囚われてしまった。どんなルートで行くのかも分からなかったが、そんなことも out of 眼中だった。リーダーの小幡さんがきて、快く?かどうかわからないが、連れて行ってくれることとなった。参加者はどうやら2人きりらしい。もっと大勢の参加者がいると思ったが、あまりいないのはなんでだろう? 会の皆さんは甲斐駒はもう十分すぎるくらい登っているからだろうか?

 金曜の夜、新宿からムーンライト信州に乗って、ビールを飲みながらウトウトしているうちに、甲府に着いた。甲府駅で仮眠して、始発の電車に乗って長坂で降りた。
 竹宇駒ヶ岳神社までタクシーに乗り、登り始めたのは7時半近く。なるほど伝統ある登山コースらしく、神社もあり重々しい雰囲気が漂うルートであった。
 1時間くらい登ると雪道になった。次第に雨足が強くなり、軟雪といっていいのか分からないが、何歩か歩くごとにズボッと沈む、なんとも気力がそがれるような道だった。
 ただ我々の前に中年の三人パーティーがいてラッセルをしてくれたおかげで、多少は楽に歩けた。そのパーティーに追いついてからは、五人交代でラッセルしたが、スピードは落ちてしまった。五合目小屋についたのは3時くらいだったか、これから先、進むかどうかちょっとした迷いがあった。中年三人組はここでビバークするという。同じ場所に一緒にビバークというのも気が進まないので、もっと先まで行くこととした。七丈小屋までコースタイムは1時間、今までの状況から倍くらいの時間はかかりそうである。暗くなるまで到着できるかどうか、微妙な感じとなってきた。気力を奮い立たせて進んでゆく。途中斜度のある道では、ピッケルで雪を崩してから登らなくてはならなかった。こんな事では時間がいくらかかることだろうと心配になってきたが、5時前頃には七丈小屋に無事に到着した。
 ここには小屋が二つある、有人小屋という名の無人小屋と避難小屋である。ただし避難小屋は鍵が掛かっていて、入ることはできない。泊まるなら有人小屋に泊まらなくてはならない。人はいないが、水、石油ストーブなどが完備されているきれいな小屋で、料金を自主的に払って泊まれるようになっている。もちろんテントを張って泊まることもできたが、雨でビショビショになっていることもあり、小屋の誘惑に負けてしまった。そしてストーブを点けて暖まった。

 翌日、雨は上がっていた。甲斐駒を目指し、6時頃出発した。トレースは一人の足跡があるくらいである。最初は時間がかかったが、森林限界を超えてからは、雪がクラストして歩きやすくなっていた。9合目?を過ぎると、塩見岳から北岳・仙丈岳の展望が拡がり、しばし見とれた。昨日ビバークせずに、ここまで来て良かったと思った。それにしてもこのルートは頂上近くに来るまで、あまり展望が良い所がない。お楽しみは最後にというルートであった。
 頂上に到着したのは8時40分頃。休憩もそこそこ頂上から下ると天気が良くなってきた。そのかわり雪が柔らかくなって、歩きにくくなるのであるが、七丈小屋までは速かった。12時頃に五合目小屋につくと昨日は見えなかった甲斐駒の姿も見えた。この日は登ってくる人も結構いた。昨日に比べ道は歩きやすくなっていた。駒ヶ岳神社に下山してビールを飲んだ。そして当初の予定通り、白州まで歩いた。
 小幡さんは体力錬成のため、毎年甲斐駒に来るという。私は初めての甲斐駒だった。何事も最初は印象深いものだが、三峰山岳会ではじめての山行が、よいものとなって良かった。甲斐駒にも親しみを感じた。
 こうして勝手に自分で自分を歓迎する?新人歓迎山行は無事終了したのである。

甲斐駒山頂から北岳・間ノ岳を望む

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ312号目次