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天子・毛無山塊 毛無山
内山 弥生

山行日 2003年2月2日
メンバー (L)服部、(SL)小堀、天内、西尾、古野、渡部、内山、(河村)

 登山口の麓集落から標高差1,100m。とにかく歩きがいのある山だった。ほんとうならど~んと見えるはずの富士山が、登りだしてからは雲に隠れてしまったのと、参加予定だった若い人たちがみんな来られなかったのが残念だったが(俺は若い! と思っている参加者のひと、ごめんなさい)、山頂のあったかいお汁粉と、歩き終えたときの「歩いたゾ!」という充実感が最高、の例会だった。
 天子・毛無山塊にど~んとそびえる毛無山。標高1,946m。昨年、雪で道がわからず、途中で断念したコースを同じ時期に再度チャレンジ。と、いっても、私は今年がはじめての参加。昨年、山行計画をみて登りたいな、と思い、ガイドブック3、4冊を読んでみると、地蔵峠まわりのコースは「路肩が切れ落ちた道」とか、「ロープにすがって登る」とか、私に「行くな」と言っているような表現がいっぱい。これは夏道でもわたしにはむずかしいな、となると、雪がつくと、絶望・・・。と思って、実は去年はあきらめた山。
 今年も行く、と、聞いて、おそるおそるリーダーにたずねてみた。地蔵峠からまわるコースは路肩が切れている、とか、ロープがあるそうですが、私でも登れるでしょうか?
 服部氏の返事。「富士宮側からの案内の多くは急登の尾根を頂上に登ってから地蔵峠経由でもとの登山口に下山していますが、逆に行きます。その方が時間的に速いです。夏道で5時間くらいなので、この時期6時間~7時間かなと思います。地蔵峠に上がるロープのところまでは昨年確認済みです。ロープのところは3m位で易しいです。」
 ど・こ・が? どこがやさしいの? って、あとで登りながら思ったけど。
 1週間ほど前から、天気予報はどうもあやしい。一度は山行日を日曜から土曜に変えようかという話もあったが、土曜だと参加できない人もいたことと、日曜日の予報がいくらか好転したので、予定通り日曜日に実行。ご本人や家族の風邪やけがで会員の若者たちが不参加となり、8人で登った。
 登山口の駐車場までは雪もなく、順調に到着。運転してくださる方がた、いつもありがとうございます。入会希望の河村さん(若い方です)は、ストックもアイゼンもきのう購入したばかり、スパッツをつけるのも初めて、ということで、お兄様方が親切に指導。
 歩き出してまもなく、沢を渡る。う、苦手なのです、こういう石ごろごろのところ。とにかく立ち止まって、状況をみきわめ、足を置くところをきめて、よし、と思い定めて、それでやっと渡る。初めていっしょに歩いた人は、え、この三峰にも、こんなひどいヤツがいたのか!と、驚かれたことでしょう。そうなんです。なにしろ、「生涯登山」の会だもん。沢や岩をばりばり登る人もいれば、私のようなのもいるのです。(いいんですよ、ね?)
で、うしろを見ると、河村さんがやはり渡る前に石を見ている。そして、おそるおそる、渡っている。わぁ、私と同じだ・・・と、ぐっと親近感を持ってしまう。
 そのうちに登山道が凍結しているところがでてきた。慎重に歩く。と、河村さんが、「私、高いところ、苦手なんです。切れ落ちているとだめなんです。」と、まさに私と同じようなことを言う。それでも山と山のあとの温泉が大好きでひとりでハイキングに行っているのだそうだ。うれしいなぁ。高いところが怖いのに山が大好きなの、わたしだけじゃないんだ! お願い、ぜひ、入ってね。
 凍結が続くようになって、河村さんと私ははやばやと軽アイゼンをつける。はじめは慎重に歩いていた彼女も、さすがに若いのですぐになれて、快調に歩く。先頭をいく服部さんと渡部さんが絶好調で、気分よさそうにどんどん先行してしまい、かわりに天内さんが私たちの前でペースをつくり、道が悪いところはコース取りを指示してくださる。こぼさんが感心して、「知らなかった。天内さんって若い人の面倒見がこんなによかったんだ。」 え、知らなかったんですか? 天内さんは、弱者の味方。オバサンの面倒見だって、いいんですよ。
 雪の山は静かだ。沢筋についた雪もとてもいい風情。(昔、ちょっと固めのカステラにお砂糖をまぶしたお菓子が、あったのと似ていたりして。)ちょっと歌をうたいながら歩きたい気分。でもときどき道が細くなって緊張する。
 さて、3mのロープ。岩についた雪が凍結しているので、全然易しくなんてない。でも、10月の沢でおそわった、体重を移動してから立ち上がる、という登り方を思い出して、なんとか登った。河村さんもみんなのアドバイスで登ってきた。去年はここで左への上がり口のロープに気づかず、まっすぐ行ってしまったそうだ。そうか、この先で伊藤(め)ちゃんが滑り落ちてきて服部さんにぶつかって止まり、びっくりしてただそれを見ていた藤本伸ちゃんが、あ、こういうときは「ラク!」って叫ばなきゃいけなかったんだ、って思った、なんて、なんか落語のようなことを会報に書いていた、あの場所ね、と思い出し笑いをしてしまう。(ふたりとも今年は来られなくて、残念。)
 この先、地蔵峠まで回り込みながら進む、長い、なが~い登り。服部氏はここでも快調にとばす。いいかげん疲れた頃、ようやく狭い峠。ここで他の方たちも軽アイゼンをつける。と、いうことは、ここまでアイゼンなしだったんだ・・・。すごいなぁ。
 西尾氏が無線機を取り出した。とてもコンパクト、軽量。しかも、尾根筋だけでなく、沢でも開いている方角は通信可能なのだそうで、確かに山ではいざというときのための有効な通信手段だと思った。
 下部温泉からの道を合わせ、ここからはひたすら尾根を登る。雪はだんだん深くなる。空からもはらはらと雪が舞う。この登りは途中で斜度がゆるむはずで、それを楽しみにゆっくり登る。ここでも服部氏、渡部氏はとばし、古野氏はあいかわらずしっかりペース。この方はいつも一定のペースをキープできるらしい。うらやましい。
 途中で私の六本爪アイゼンのチェーンがブチッと切れてしまったが、四本の超軽アイゼンも持っていたので、片足はそちらを使う。5年間、かなりフルに使っていた六本爪だけど、こんな壊れ方をすることもあるのだから気をつけなければいけない。(のちほど修理に出し、八百円でちゃんと直りました。道具は大切に使いましょ。)
 ようやくにして斜度がゆるむと、あとは快適に進む。と、言っても雪は深い。30~40センチくらいか。雪を蹴散らし、ときどき雪に沈みながら歩くのが、なんとも気持ちいい。ここまでだれにも会わずに来たが、山頂も私たちで独占。これで富士がみえれば、最高なのだけれど。
 ここでこぼさんは焼肉セットをとりだし、ワインをあけ、肉を焼く。余裕ですね。みんなでありがたく焼けたところからいただく。渡部氏はカメラつき携帯でさきほどから何枚もご自分を撮影。
 服部さんが用意してくださったお汁粉をあたため、お餅を入れていただく。あたたかくておいしい。でも、うっかりしていると、すぐにさめてしまうのが、やっぱり雪の山。下界にいるとストレスで胃の調子が悪いのに、それもすっかり忘れて、あれもおいしい、これもおいしいと食べているうちに体も冷えてきて、下山となる。
毛無山山頂でお腹いっぱい!  下山は急降下。たしかにこちらの道を登りに取らなかったのは正解かもしれない。ここでもまた、服部氏がとばして、すぐに見えなくなってしまった。実に快調。
 後続は私が前でブロックしているので、ゆるゆると進む。緊張する下りも傾斜がゆるむころには、道の雪も消えてくる。
 不動の滝が見えるところまで降り、いくらかほっとする。落差があり、なかなか見ごたえのある滝だ。
 ようやく駐車場に戻ると、何台かあった車はもう姿を消していた。皆、不動の滝側からの尾根を往復したらしい。結局山の中では他の登山者にはだれにも会わなかった。
 帰りは朝霧高原グリーンパークに立ち寄り入浴。貸し切り状態。温泉大好きの河村さんも喜んでいた。楽しかったのでもう一度、2週間後のスノーハイクに参加したいとのこと。(でも、その後、参加されていないようですね。残念です。またぜひ参加して、いっしょに怖がりながらでも山を楽しみたいのですが。)
 帰り道はかなりの降雪となったが、チェーンをつけるまでには至らず、無事八王子へ。皆様、おつかれさま。ありがとうございました。

〈コースタイム〉(リーダー服部氏のメモ)
麓集落登山口駐車場(08:40~09:00) → 一本(10:20~25) → 地蔵峠(11:20~30) → 毛無山(13:07~14:20) → 一本(15:15~25) → 不動の滝展望台(16:05~10) → 駐車場(16:35)


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