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谷川岳熊穴沢スキーと銅粉の湯
さとう あきら

山行日 2003年3月15日~16日
メンバー (L)佐藤(明)、藤井、福間(以上2日間)、箭内、飯塚、鈴木(章)

 「あの人たち、先週も泊まってたパーティーじゃない?」上越線湯檜曽駅待合室25時。先週と同じ場所にテントを建てながら、確かにその時も同じテントが、待合室の同じ片隅にあったなぁ、と気付く。先週は悪天候で、我々はゲレンデスキーと温泉めぐりに躊躇なく変更。一方そのテントの住人は全く動く気配が無かった、ということは登攀などの厳しさ追及組なのだろう。天気予報によると週末はほどほどの天気。明日は長丁場なのでこちらも早く寝なければ、とはテントに入る前には思ったのだが、いざ宴会が始まるともうそんな事忘れてしまった。
マナイタグラ(左)とオジカ沢の頭  朝6時起床。既に隣のテントはない。こちらも直ぐにテントを片付け出発。7時過ぎのロープウエイで天神平に登り、歩き出し7時45分。高曇りだがまあ視界は良好で、マナイタグラの稜線が白く輝き神々しい。しかしやはり中高年パーティー。なかなかピッチが上がらない。予定では、今日はオジカ沢の頭から赤谷川に滑り込み、万太郎山を登り返して毛渡沢を滑降、そして土樽まで歩く、という日帰りスキーとしては限界に近い長大ルートなのだ。気はあせるが、結局谷川岳肩の小屋到着は10時20分。その先、オジカ沢の頭へ続く稜線の状態も悪いため、赤谷川滑降をあきらめ熊穴沢経由で土合に戻ることにする。
熊穴沢を下る  谷川岳山頂のトマの耳で大休止後、12時50分滑り出し。頂上付近はクラストしていて快適ではないが、西黒沢源頭に入ったとたん歓声が上がる。広々とした緩傾斜の大雪原が延々と続く。そして雪質もザラメで良好。どんどん下り、熊穴沢のコルまでわずか30分。
 いよいよお楽しみの熊穴沢だ。雪は少し軟いが、スノーボールの落下もなく積雪は安定しているもようだ。今回は熊穴沢右岸の樹林帯に逃げるのではなく、真っ白の熊穴沢の中を滑ることにする。本日の第一滑走者は福間選手。沢幅一杯の大きなターンを繰り返しながら、どんどん滑ってゆく。ウッヒャー、という歓喜の叫び声まで聞こえそう。他の者も次々に滑り出し、青空の下の山岳スキーを満喫したのだった。
 標高差300mを一気に下ると、本谷である西黒沢に合流する。驚いたことに、沢は3日前に降った大雪によるデブリで広く埋まっており、滑れるのは両岸わずかな部分だけだ。それでも谷は広く明るく、開放感はこの上ない。途中小休憩をはさんで、ロープウエイ土合口駅着2時10分。良好な雪質と足並み揃ったメンバーに助けられ、頂上からたったの1時間強というスピードだった。
トマの耳をバックに西黒沢にて  下山後はお決まりの風呂。「三峰の湯」という名前に惹かれ、月夜野町まで足を伸ばしてみる事にする。この仮設入浴施設は三峰山の中腹、かなり分かりにくいところにあるが、三百円の利用料金に加え、雑木林に囲まれた露天風呂はロケーションとしてもなかなか魅力的だ。さらには、かけ流しのアルカリ単純泉でお肌ツルツル。三峰の名に恥じない、満足度二重丸の温泉であった。
 一旦、後閑駅で解散した後、翌日有志で万座温泉近くの「銅粉の湯」を探訪する。ここは谷間に人知れず湧く温泉マニア御用達の野湯で、もちろんガイドなどでの紹介もない。しかも藪がひどいため、積雪期以外は事実上入湯が不可能なのである。
 シールを貼ってさあ出発だ。万座スキー場のゲレンデを登り、途中から下降点を探すが、情報不足で場所の特定が出来ない。しかたなく万座峠から谷を下ること15分。不意に地面が露出している場所に出くわした。もしや、と周囲を調査すると、なんと、湯の川が流れているではないか。早速入湯となり、再び至福の時を過ごしたのだった。
銅粉の湯は最高だ


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