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役内川ワルイ沢~赤湯又沢
金子 隆雄

山行日 2003年7月19日~21日
メンバー (L)金子、紺野、高木(敦)、天内、天城、橋岡

 今回の山行も大人数になりそうだったので人数を制限した。そのため参加を断った人も出てしまったが間際になり一人減り、二人減りと最終的には6名となった。
 東川口駅に22時に集合だったが、急遽車の供出をお願いした天城さんが道に迷っているようでなかなか来ない。天気予報では三日間とも期待できない天候、盛り上がりに欠けたまま小雨の中を23時頃に出発。
 東北道を古川ICで降りて国道47号線から鳴子で108号線に入り、荒雄湖畔公園の東屋で仮眠をとる。既に朝の4時になっていた。

7月19日 雨
 仙秋鬼首トンネルを抜けて秋田県に入ると心なしか空が明るいような気がする、希望的観測というやつだろうか。秋ノ宮から湯ノ又温泉へ通じる道へと入り、水上林道へ入るとすぐに行き止まりで、そこが駐車場になっている。既に何組かの沢屋や釣人が到着し出発準備中だ。人と荷物を降ろし、虎毛山からの下山口である赤倉橋まで車を一台デポしに行く。戻ると他パーティーは全て出発した後で我々が最後となる。
 小雨模様の中、駐車場からワルイ沢出合いまで続く踏み跡を辿る。草が被さってわかりづらい所もあるが、おおむね問題なく25分で出合い着。ワルイ沢はツブレ沢の堰堤のすぐ下流で右岸から流入している。ワルイ沢に入ると出合いからしばらくは倒木に埋もれて、なんじゃこりゃという感じであるが、直にそれもなくなりナメが続くいい雰囲気の渓相になる。
 いくつかのナメ状小滝を右岸より捲き気味に越えていくと2段15mほどの滝が現れ、右岸より高捲く。二俣を左に入りしばらく行くと先行した9人のパーティーに追いつく。いつもなら人数じゃ負けないけど今回は負けた。9人パーティーを追い越し、どんどん行くとやがて沢は幅数10cmほどに狭まりV字状になるが水量が少ないため特に問題はない。意識して右へ右へと進み、水が涸れると急傾斜のヤブに突入する。かなりきついヤブこぎ20分ほどで稜線へ飛び出した。
 ワルイ沢は赤湯又沢へ下降するためのアプローチとして使われることが多いようだが、それだけでは勿体ないような小粒だが変化に富んだ面白い沢であった。
 登山道を1033mピークに向かって下ったコルから赤湯又沢左俣へ下降開始する。すぐに水が流れ始め、平坦なナメが続く左俣は下降に適した沢だ。二俣を過ぎると水量も多くなり滝もいくつか出てくるが、全てクライムダウンが可能だ。二俣から1時間ほどで右岸に煙が見える、湯煙か焚き火の煙か。右岸に上がってみるとそれは温泉の湯煙であった。ここが予定していた幕場のようだ。
 既に先着していた3人パーティーがツェルトを張っており、湯船の手入れに余念がない。他に適当な場所がないので隣にテントとタープを張らせてもらう。雨は降っているが焚き火も何とか燃え始めた。
 さてお楽しみの山の出湯であるが、入れそうな湯船は三つ。一つ目は幕場の奥にあるやつで、これは浅くてちょっとぬるい。二つ目は沢の流れのすぐそばで、深さもあって温度もちょうど良い。最後は少し下流にある白濁したもの。一番良さそうな河原の湯船の真ん前に遅れて到着した4人パーティーがタープを張ったので入りにくくなってしまったが、男どもは遠慮することもなく焚き火に照らされながら温泉を満喫した。女性はそうはいかず残念であったろう。
 本日、ここの幕場に泊ったのは4パーティーで計22名という大盛況ぶり、他に適当な場所がないので分散できずに集中してしまうのだろう。3連休というのも入渓者が多い一因であろう。
 私と紺野さんはタープの下で寝たが、地熱で地面が温かくてとても気持ちよく寝られた。朝まで断続的に強い雨が降っていたようだ。

7月20日 雨のち晴れ
 昨日からの雨は朝になっても降り続いていたが、土砂降りというわけではないので予定通りに虎毛沢に入るべく出発する。赤湯又沢は昨日よりも濁りがひどく、水量もかなり多くなっている。平水なら気楽に行けるのだろうが、増水しているので慎重に下降して2時間弱で虎毛沢との出合いに着く。先行していた4人パーティーに追い着いたが、彼らが言うには虎毛沢は増水していてとても行けそうにないとのことだ。出合い付近はゴルジュになっている。紺野さんが右岸のヤブ沿いに下って様子を見てきてくれたが、やはり虎毛沢は濁流になっていて無理そうだ。4人パーティーは引き返していった。
 ここまで来ていながら無念ではあるが引き返すしかないようだ。更に悔しいことに、諦めて戻る途中で雨が上がって晴れ間が広がってきた。昨日泊った幕場まで戻る途中で先ほど引き返した4人パーティーがまた下降してきた。思い直して虎毛沢に突っ込む積りのようだ。また、昨日隣にツェルトを張っていた3人パーティーも下降してきて、虎毛沢が増水していることを話したが意に介する様子もなくそのまま下降して行った。下山後にこのパーティーに話を聞くことができたが、減水するのを待って溯行することができたそうだ。正に『待てば海路の日よりあり』ってところだが我々は待てなかったのである。
 このまま下山するには中途半端な時間なので昨日と同じ幕場にもう一泊することにする。昨日ここに泊った9人のパーティーは引き返したようでいなかった。晴れて暑くなっていたので濡れた物を全て広げて乾かす。時間を持て余し、昼寝をしたり温泉に浸かったり、薪を集めたりしながら夜を待つ。昨日温泉に入れなかった高木さんも今日は心置きなく浸かることができたようだ。

7月21日 曇り時々小雨
 下山は赤湯又沢の右俣を詰めて稜線に出て、高松岳手前から湯ノ又温泉への登山道を下ることにして6時半頃に幕場を後にした。二俣を右に入ると小滝の連続となりロープが必要な滝もでてくる。何かおかしいなということで確認すると入り込んだのは右俣ではなくてその手前の枝沢のようだ。一昨日の下降時に二俣を見落としてここを二俣と思い込んでしまっていたようだ。1時間のロスだった。戻ってしばらく行くと本当の二俣となる。間違いないことをじっくりと確認する。
 右俣に入るとすぐに滝があり、これを越えると平凡な流れとなる。一本目の枝沢が右岸より流入し、すぐにまた枝沢が入る。ここでしばし迷った。右は水量多く開けており、温泉が湧いているのか水が生温かい。左は細くヤブっぽい。地形図に従えば左が本流なのだが今一つ納得いかない。が、ここは地形図通りに左に進むことにする。不安を抱えながらしばらく行くと二俣となる。地形図上の標高と一致するのでやっと不安を解消して左へと進む。
 この先はナメの連続となり、ナメは稜線直下まで続いている。但し、登るにつれ傾斜は増し、もはや沢登りと呼べるものではなくスラブ登攀状態だ。赤湯又沢の右俣はとても下降には使えそうもない。最後は20mほどのヤブこぎで稜線上の登山道に飛び出した。ヤブこぎがほとんどないのがせめてもの救いだった。
 高松岳に向かって登山道を少し行くと、正規の登山道ではないが湯ノ又温泉へ下れる近道があった。ハイキングマップには不明瞭なので入り込まないようにと記載されていたが、見た感じでは問題なさそうだったのでこの近道を下降した。ナメの沢を渡るのでスリップに注意さえすれば問題のない道だった。正規の登山道を使うより1時間は短縮できたと思う。
 赤倉橋の車を回収し、秋ノ宮の宝寿温泉(380円)という温泉に入って、名物の稲庭うどんを食べて帰途についた。

 虎毛沢は三度目の挑戦だが三戦して二敗一分けといったところだ。一分けとは、溯行はできたが怪我人がでてしまったので一勝とまでは言えないということだ。再度の挑戦が必要のようだが、今度はツブレ沢の三滝沢から行ってみるのも面白いかも知れないと思っている。

赤湯又沢の湯煙
〈コースタイム〉
19日 駐車場(8:40) → ワルイ沢出合(9:05) → 二俣(11:25) → 稜線(12:50) → 赤湯又沢下降開始(13:30) → 二俣(14:30) → 幕場(15:20)
20日 幕場(7:40) → 虎毛沢との出合(9:20) → 幕場(11:20)
21日 幕場(6:40) → 登山道(10:50) → 駐車場(12:45)

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