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編集後記

 秋の山の楽しみといえば、「胃」の一番にキノコを挙げる人もいるけれど、ぼくの場合はなんと言っても紅葉・黄葉だ。「旨い」を「美味い」などとも書くが、ぼくには味覚の美よりも視覚の美の方がはるかに心に響く。華やかな秋色に染まった山を見上げながら浴する河原の露天風呂など、まさにこの世の天国。まんいち清楚な美女が寄り添って微笑んでいたりしたら、もうこのままイッちゃってもイイかなとさえ思えますね。
 このような天国的シチュエーションから遠目に愛でる紅葉・黄葉もよろしいが、そういう秋色の森を歩くのもまた格別な味わいがあるものだ。秋の澄んだ陽射しを受けて、森の中は柔らかな色たちで満ちている。陽の光に透かして見る紅葉・黄葉の色のすばらしいこと! 落ち葉を踏みながらそんな中を歩いていると、何とも言えぬ豊かな気分になってくるから不思議だ。 
 そういうとき決まってぼくの耳に響いてくる音楽がある。ブラームスの4番、ホ短調交響曲の第1楽章だ。ブラームス独特の分厚いハーモニーと渋い音色が、どっしりとした豊かな山の自然と秋の色合いを思わせるのだ。あの冒頭の愁いを帯びたテーマはしっとりとした秋の風情を感じさせるし、そのテーマにからんで下降する管の旋律ははらはらと舞い落ちる枯葉のようだ。つづいて朗々とチェロが歌う二つ目のテーマはまさに秋の森を歩く気分そのもの。曲全体を覆う、ほとばしる情熱をつつみ込むような抑制感も、潤いのある華やかな秋山の景色にふさわしく思える。同じように感じる人はぼく以外にもきっと大勢いるだろうが、視覚と聴覚は共通のイメージでつながっているのかも知れない。

(服部記)

 先日70周年記念行事の一環として、集中山行形式で三峰神社に皆で参拝した。タワ尾根を登り、長沢背稜、白岩山経由のルートを選んだ。ルートの途中でソレに出会った。急登を終えふと顔を上げると、目の前に巨大なブナの古木がそびえ立っていた。今までに見たこともない巨樹だった。大きさもさることながら、周りの木々とは明らかに違う、まるで魂が宿っているような圧倒的な存在感だった。
 太古に絶滅した恐竜に遭遇したような驚きを感じ、しばらく動けなかった。我に返り、静かに近づき木肌に触れ、少し離れて上を見上げ、次には我知らず手を合わせ拝礼していた。山登りを続けている理由の一つを実感した出会いだった。また会いに行こうと思う。

(小堀記)

 岩つばめの編集をしているメンバーは山を歩くのも速いけれど、いろいろ決めるのも実に速い。今回ふみあとの記録を確認するのにちょっと手間取っていたのだが、日曜日、私が丹沢にでかけているあいだに、編集委員と金子さんの間でメールがとびかって、山行届けを記録に残すシステムがWeb上に即、構築されていた。金子さんに感謝です!(なにしろ勤務時間のつごうで集会に参加できないため、ふみあとノートと集会の記録がたよりだったので)
 70周年記念号の企画も、暑い夏の日に集まって大筋を決めたあとは、テーマごとにメールがとびかい、次々に内容やフォーマットが決まっていった。ときには日曜日にしごとから帰ってきてみると、新しいテンプレートがすっかりできあがっていたりして。(ん?私は歩くのも遅いけど、ここでもやっぱり出遅れてる?)
 でも、実際の編集は地道な時間のかかる作業。委員長職をこなしながらのこぼさんも、同じく総務のしごとをしながらアンケートの郵送なども一手にひきうけてくださるはっとりさんも、原稿依頼から、みんなの校正のまとめ、レイアウトまで大変な作業の土肥編集長も、今回もおつかれさまでした。

(uchi記)

 みなさま既にお気づきのとおり、本号から「岩つばめ」を横書きに改めました。横書きにするにあたっては躊躇がなかったわけではありません。いつの頃から現在のような会報を出していたのか、寡聞にして知りませんが、70周年を迎える今日までの長きにわたり、たぶん一貫して縦書きで発行されてきたことと思います。この伝統を破るにはちょっとばかり勇気が要りました。また、ご年配の方の中には縦書きにより親しみを感じておられる方もいらっしゃることでしょう。
 それでもあえて横書きにしたかったのは、簡単に言ってしまうと編集作業の効率化を図りたかったからです。「岩つばめ」の編集は、小堀前編集長のときから「ワード」で作業をするようになったそうですが、「ワード」はもともとが日本語用のワープロソフトでないためか、殊のほか縦書きには馴染み難いようです。
 例えば、横書きテキストファイルでいただいた原稿を縦書きにするには、ボタンひとつクリックすればいいのですが、半角数字等は全部横に寝たままなので、怠け者の子供みたいに1個1個名指しでたたき起こしてやらないと起きないのです。そういうわけなので、ぜひご理解いただきたいと思います。
 さて、今行きたいのはバッハの管弦楽組曲第3番ニ長調の第2曲、そう、「G線上のアリア」が響いてきそうな山・・・なぜか、八ヶ岳が想い浮かびました

(土肥記)

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