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集中山行・甲武信ヶ岳 その二 釜ノ沢
小堀 憲夫

山行日 2003年7月26~27日
メンバー (L)高橋(俊)、小堀、成田

 7月第2週の沢登り講習会が中止になり、それに参加する予定だった成田さんには、今回が初めての沢登り体験となった。一番簡単な沢のルートを集中山行のメニューに入れたのは、企画委員の高橋くんの配慮だ。昔は一般登山道だったルートなので、ハイキング気分でのんびり行くつもりだった。
 夜に西沢渓谷の駐車場まで入り寝酒をやって仮眠。翌朝テントから頭を出し空を仰げば、青い色も見えて快適な山行が期待できた。ただ、外へ出て川を覗けば前日までの大雨の影響で濁流が谷底にうねっていた。
 西沢渓谷からの登山道を西沢山荘先の吊橋を渡った後すぐ右へ分かれ、笛吹川へ降りる。早くもここから沢の足ごしらえをしての河原歩きとなる。「むむむっ、こりゃ手強いぞ」最初の徒渉で手応え、いや足応えを感じる。鶏冠谷も結構な水量で水が落ちていた。後から来るはずの藤井隊のことが少し心配になる。そこから釜ノ沢までの何回かの徒渉が結局今回の核心部となった。一度成田さんが流されそうになり、安全のため何回かザイルを出した。なんとか無事に釜ノ沢の出合に辿り着いたが、通常の倍、時間がかかった。
 釜ノ沢に入ってからは水量の影響は少なくなり、コースタイムどおり順調に高度を稼ぐ。下部の徒渉で時間を使った分、予定より遅れていたが、両門ノ滝辺りまで上がっておかないと翌日の集中時間に間に合わない。少し頑張って歩くことにした。途中から小雨も降り出した。ああ、これは雨男の金子さんが西沢に入ったのだなと了解した。金子隊が土砂崩れのため入川を諦めて、秩父からこちらに回っているのは朝の電話交信で知っていた。そう言えば藤井さんからも足ごしらえをしている時に電話がはいっていた。
「コボちゃんあと2~3時間で着くから少し待っててよ。一緒に行こうよ」
両門の滝  漸く両門ノ滝に到着。西俣と東俣から水が唸って落ちている。まるでダムの放水の様だ。予定していた滝下の幕場は沢風と飛沫が強く、周りに薪も少なかったため、諦めて滝上に幕場を探す。幸い滝を左岸から高捲いた直ぐのところに広い幕場があった。早速ビールを冷やし、焚き火を始めた。ところが、これが難物だった。長雨のため薪が湿りきっていて、火がなかなか着かない。結局、持参した火種をほとんど使い切りどうにかメシを炊くことができた。その夜はショボイ焚き火を前に高橋くんと2人ヤケ気味に酒を飲み、歌をがなって寝た。成田さんは大人しく焚き火を扇いでいた。
 翌朝早く起き出発。長いゴーロ歩きが続く。集中時間のことが気になる。水師沢、木賊沢を過ぎ、ポンプ小屋の屋根が見え、一安心。
 ほぼ予定通りに小屋に到着すると、小屋前のテラスを占領して我が三峰登山隊が賑やかに待っていた。早速沢支度を解いて残りの酒や食べ物でミニ宴会となった。小屋番のおにいさんも、よくあの水量の中を登ってきたね、と呆れ顔で話に入ってきた。井戸沢隊を待つ間のしばしのオシャベリ。この時間が集中の大きな楽しみの一つでもある。昼ごろに全員集合し、仲良く下山した。


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