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三峰初山行の思い出
天内 基樹

 三峰山岳会創立70周年おめでとうございます。
 街の一つの山岳会が70年続いているとは、すごいことです。そういう歴史有る三峰に私が入会したのは、01年5月。その間、20年ほどのブランクがあります。
 初山行は、6月の鷹ノ巣山集中。その前にお試し山行で天城山に行ってます。
 ここでは、この鷹ノ巣山集中の時の思い出を書いてみようと思います。

【01年6月2~3日 鷹ノ巣山集中】
 私が参加したのは、服部さんをLとする榧ノ木尾根パーティー。他には、藤本伸子さんと内山弥生さん。登り出して驚いたことは、服部さんの速いこと。一人スタスタ行ってしまう。山岳会に入ると、こんなに速く歩かなくてはいけないのかと不安になる。しかし、ふり返ると、ラストでSLの藤本さんがしっかり見ていてくれて一安心。やっと着いた倉戸山山頂。しかしリーダーは休まず通過。やはり山岳会だなあと感心。私一人だったら、一本とっていただろう。
 集中場所は鷹ノ巣山避難小屋。
 次々と登ってくる三峰の会員のものものしい沢姿にびっくり。
 あーっ、まちがった!
 やはり山岳会。ハイキングクラブとは違うのだ。すっかり恐れをなし、服部さんに、「入会したのはまちがいました。これから帰らせてもらいます」とよっぽど言おうと思ったけれど、降りてから大変そう、今から降りて大丈夫か、などと色々考え、迷い、結局とどまってしまった。同じパーティーの藤本さん、内山さんだけが頼り。他はみな沢屋、ものものしい装備、別世界の人々だ。二人に感謝。
 全員集まっての夕食。内山さんが『岩つばめ』306号に書いているが、豪勢な食事にびっくり。内山さんは、わがパーティーは質素なように書いてあったけれど、私には十分豪勢でしたね。大体、米をといだり、生野菜を持ってくるという事にびっくり。感心。普段、家でも米をといだりするのがめんどうくさくて、パンにしている私は感心するだけです。(ごはんは好きですが)
 そして、焚火を囲んでの簡単な自己紹介。談笑。その中でも一人特にもりあがっていたのは、小幡さんか。
 翌朝。
 早くに眼がさめていた私は、一人外に出、鷹ノ巣山山頂をめざす。
 祭りの後の寂しさ、ではなく明るい静けさ。透明な空気。
 少し先を、一人の登山者が登っていく。小屋に泊まっていた人かと思っていたが、山頂に着いてあいさつすると、三峰の山口さんだった。
 きのう一人石尾根を登り、夜遅く着いたとの事。まだ日の出前。二人だけの山頂。富士山がピンク色にそまってゆく。
 しばらく休憩した後、山口氏は日原の方へ、私は元きた道をひき返す。
 下に、みんなが眠っているテントが見える。スヤスヤ、寝息がきこえてくるようだ。中で人の眠っているテントは、まるでテント自体が、呼吸している一つの大きな生き物のようだ。

 突然、前方道のわきに、ほおの朱色も鮮やかなキジが一羽現われ、笹ぞいに、トコトコ歩いて行った。そして、いつのまにか、消えていた。ふと、私の好きな監督、テオ・アンゲロプロスの映画『永遠と一日』を思い出した。(キジが出るわけでも、山の映画でもないけれど)
 ところで、後日、山行の車中、映画の話になり、私が、ここ何年かで見た映画で一番よかったのは、テオ・アンゲロプロスの『ユリシーズの瞳』ですね、と言ったら、二人とも(服部さんと伊藤めさん)全く知らない。色々説明するが、監督さえ全く知らない。あげくのはて、伊藤めさんに、「天内さんて、超々マイナーな映画が好きなんですね」と言われてしまった。イヤ、そんな事ないですよ、『スターウォーズ』などのハリウッド映画も見ますよ、とあわてて反論したけれど、まあ、たしかに、そういう傾向があるようだなあ、と納得。鋭い。(今はメジャー派に変わってしまった)
 テントの所に戻る。みんなまだ寝ている。テントに入ってガサゴソ音をたてても悪いので、そのまま反対側のピークをめざす。
 帰り、正面に鷹ノ巣山の淡いシルエット。道が、朝日に、明るくうかびあがっていた。
 朝食後、各パーティーに別れて下る。
 私は一番楽な浅間尾根コース。
 斎藤誠さんは、張りきっていて、本来同じ浅間尾根組だったが、もの足りないと、石尾根組に入った。私も少し迷ったが・・・。
 一時間ちょっとで車道に出、すぐ車中の人に。温泉に入り、昼には食堂で昼食をとっていた。
 こういう山行もあるんだなあ。
 昼におりてきてしまっているのは初めてではないか。昔々(70年代か)、何も知らずに入った山の会の新人歓迎山行は、奥多摩駅から歩いて本仁田山、川乗山、そして酉谷山をへて、雲取山までのカモシカ山行だった。(この時は、先輩会員の、この辺でいいんじゃないのという声で、全員天祖山から日原に降りてしまったのだけれど)
 山岳会によって随分違うのだなあ。
 はたまた、時の流れか。
 そして、それに一応満足している自分。
 以前の私なら、石尾根を下ったろうなあ、と、少しばかり思いつつ。これも時の流れ。
 そして今(03年11月)、入会して2年5ヶ月あまり。(いつまでもつか、全くわからないけれど)
 日帰りできる山を2日かけて登るという方法も、それはそれで得るところは大きかった。
 あの、早朝、明るく、静かな山道を、一人歩いた時の充実感は、今でも心に残っています。

 そして、前夜の豪勢な食事。食べて、どんどん食べていいよ、といった小堀さんや俊介君の声も。


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