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山と私
会友 高橋 正純

 私は、福島県の阿武隈山地の中で、昭和33年に収穫されました。
 周囲を見渡すと360度の山です。中学までは、山に包囲され育ったようなものです。
 毎日ハイキングをしていたことになります。ただ、熊の生息域でなかったことは助かりました。
 大学進学のため、東京に住むことになりました。卒業したら、田舎に帰るんだ、4年間の辛抱と思いました。
 東京に来て初めて登った山は、筑波山でした。その後、高尾山に登り、陣馬山まで縦走し、夕焼けこやけの里を経て帰りました。この時の紅葉がきれいで、東京にもこんな自然があることがわかりました。田舎に帰ったみたいになり、これから山登りが始まりました。
 就職は、もちろん福島県の予定でしたが、希望職に就くのが困難なため、地方に支店を持つ会社に入りました(現会社)。勤務地は東京になり、地方転勤を待つことになりました。
 入社1年目は、奥多摩の山々によく行きました。大晦日に、雲取山の山頂直下にテントを張って寝ましたが、とても寒くて寝られませんでした。翌朝、テントをたたもうとしたら、カチンカチンに凍っていて苦労しました。
 入社2年目の春、三峰山岳会に入会しました。初めて、恐る恐るルームに行った時、勝部夫妻が温かく迎えてくれたことを、今でも思いだします。勝部さんの奥さんは、優しくてとてもチャーミングでした。同時に吉岡さんもおられ、その日に一緒に入会しました。
 春の合宿は、谷川岳。滑ったら止まらない急斜面の雪渓は、怖かったです。この時、私のアイゼンが調子悪く、伊藤さんからアイゼンを貸していただきました。たいへん、ありがとうございました。
 夏は、三峰山岳会の記念山行として、韓国の雪岳山に、友好登山に行きました。初めての海外旅行でした。韓国の人達と楽しく登山ができて、貴重な体験になりました。
 翌年転勤になり、三峰山岳会にいたのは、1年だけでした。しかし、三ツ峠での岩登り・丹沢での沢登り・塔ヶ岳のボッカ・ヤブこぎ訓練は、今の山歩きに、かなり役に立っています。三ツ峠での岩登り訓練の時は、既に亡くなってしまいましたが、赤松さんにリードされ中央カンテを登りました。
 翌年は、佐賀県鳥栖市へ転勤になりました。九州へ来たら、やっぱり九重山ですね。坊ガツルにテントを張って、久住山・大船山・三俣山に何度も登りました。ミヤマキリシマのピンク色が強く印象に残っています。法華院温泉にも入れ、しかもビールが通常価格で売っていて、別天地のようでした。
 九州に3年いた後、富山県へ転勤になりました。富山は、やっぱり剱岳です。9月上旬に、馬場島から早月尾根を経て、伝蔵小屋に泊まって山頂に立ちました。一般の縦走路でしたが、山頂付近はたいへん怖かったのを思いだします。その年に亡くなったのですが、伝蔵さんはうわさのとおり、豪快で優しい人柄でした。熊鍋をごちそうしてくれ、牛肉みたいでおいしかったのを覚えています。帰りも、伝蔵さんは、奥さんと一緒に私が見えなくなるまで、ずっと見送ってくださったのを覚えています。
 富山も1年だけで、東京へ転勤になりました。東京は2年だけでしたが、ほとんど山には行かず、毎週、野田市の江戸川河川敷のサイクリングロードを走りました。一周おおよそ、10kmで40分のコースです。
 2年後に、仙台に転勤になりました。結婚もし、子供もできて、休日は子供と遊ぶため、山も走ることもしませんでした。
 2年後に、札幌に転勤になりました。さらに子供が一人増えて、山も走ることも全くできなくなりました。しかし、離婚と子供との別れという悲しく、辛いことが起こりました。
 マンションから遠くに見える空沼岳が、登りにおいでよと、誘っているような気がしました。北海道の山は、空沼岳が初めてでした。登ってみると、気持ちが落ち着いてきました。やっぱり山は、いいなあ。それから何回も空沼岳周辺に行きました。冬はとても山に登れないので、圧雪・凍結のサイクリングロードを走りました。
 翌年、東京へ転勤になりました(札幌勤務は3年間でした)。野田市の江戸川河川敷を毎週走りました。山にも行きたかったのですが、車で簡単に行けるところが無かったため、ほとんど行きませんでした。
 去年おととし、仙台に転勤になりました。泉区に住んでいます。ここは、宮城県内はもとより、秋田・岩手・山形・福島の山への車でのアクセスが、非常に楽です。日帰り登山ができます。鳥海山・大朝日岳も楽に日帰り登山できました。こちらは、山もたくさん有り、登山道も整備されているため、次はどの山に登るか、悩むほどです。どこへいっても、中高年の登山者がけっこういます。私もその一人ですが。
 今年は、9月から毎週、山へ行っています。今までの人生の中で一番多いです。
 とっておきは、蔵王(刈田峠より不忘山までの南蔵王縦走コース)で、1800m前後の尾根歩きと、雄大な景色を観ながらの往復6時間コースです。登山というよりはハイキングです。
 近くには、峨々温泉があります。日帰り入浴できますが、宿泊しないとこの温泉の良さはわかりません。何もありませんが、心身が休まる温泉です。温泉の質・料理は、感動します。したがって女性の宿泊客が多いのです。
 最後に、山に登ると自然体になります。人間本来の姿にもどります。優しさを取り戻すことができます。こんな楽しいことほかにありません。


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