トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ314号目次

私の青春の山パートⅡ
小林 健二

 三峰山岳会創立70周年、おめでとうございます。
 1997年4月にキリマンジャロ山を登山後、タンザニアでサファリを楽しみケニア、エジプトと観光しロンドンに渡る。アルプス登山には時季が早いので、約1カ月西ヨーロッパを電車とバスで観光旅行し、7月初めモンブランの登山口シャモニーにテントを張る。キャンプ場で知り合った日本人5人でアタック、悪天候のため敗退。
 2回目、3人の即席パーティでバス・ロープウェイ・登山電車を乗り継ぎ、2372m。さあ、ここから登山。難所落石が多く(遭難多発地帯)、ヘリ救助を目撃し少々緊張して雪の斜面を小走り、トラバースする。標高約4000mのグーテ小屋に5時間余りで到着、小さい山小屋は国際色豊かで同じ山仲間ということで気軽に話しかける。2日目AM3時出発、一回目敗退した広い広いグーテ雪原を横断し、上部の人々を仰いで喘ぎ喘ぎ登る。頂上直下幅約40cm長さ200mの稜線を登りつめ8時5分、4807mのモンブラン頂上!! 日本風に万歳三唱し、記念写真撮影後下山。狭い稜線、登り優先なので雪壁に身をかがめ必死の思いで道を譲る。即席パーティは合流しボソン氷河をザイルを組んで助け合いながら無事に下山。
 翌日ツェルマットに移動。キャンプ場で大阪の山岳会男女4名に再会。天候が良いので明日登山とのこと、私も同行することにした。ロープウェイで登山口へ。ヘルンリ小屋から仰いだマッターホルンは急峻で少々ビビる。ペンキの矢印を追いつつ八合目のソルベイ小屋(無人)4003mに着く。小屋は岩場と岩場の間に宙に浮いた感じで建っていた。今日の泊まりは我々5人だけ。2日目、アイゼンを装着し、固定の太いザイルをしっかりと握り一歩一歩登る。高度感は抜群で千数百m真下に氷河が見える。4478mの頂上へ着くが下山のことを考えると嬉しくない。記念撮影後、下山。2度ほど仲間のザイルにお世話になり無事下山。下山してからあの憧れのマッターホルンに登ったぞという感激に足の先から頭のてっぺんまでしびれた。キャンプ場で仲間とステーキとワインで賑やかに登頂を祝った。
 アイガーのふもとの町グリンデルワルトに電車にて移動。駅のホームから見た景色はすばらしく写真か絵の様である。北壁の真下のキャンプ場、天候はいいが体が全然動かない。休養し4日後、登山電車でアイガーグレシャ駅に降りる。駅員に"トゥモロー モーニング アイガークライミング。ヒア ワンナイト スリーピング OK?"と聞くと、笑顔でOKと快い返事が返って来た。
 早朝軽く食事して、南西壁を駅からルートファインディングし、登山開始。遠くから見て簡単そうな岩場も実際に登ってみると少々難しい。岩は、積み木の様に崩れやすく刃物の様に鋭く手は血に染まる。八合目あたり一番の難所、左手には北壁が切り立つ。この岩場を乗越さなければと、もろい岩に全神経を集中させ右足をかける。この右足に人生の全てを懸けて踏ん張り、何とか乗越す。後は雪壁を淡々と登り3970mの頂上へ。頂上からの眺めは最高で、ヴッターホルン、メンヒ、ユングフラウと氷河へ続く。後から同じルートを登って来たイギリス隊2名と合流し写真を撮り交わす。登頂したのはいいものの、何処を見ても雪壁で下山出来そうもない。考えが甘かった。下山ルート図とザイルを装備しているイギリス隊に"トゥギャザァ ダウン"と同行を促して、ザイルを何回も借用し肩がらみでダウン。氷河に大きなクレバスが口を開けている。上部をトラバースして無事下山。クライネンシャデイクのレストランでイギリス本隊の仲間と合流し一緒に祝福を受ける。握手握手で、気分は最高。"サンキュウ サンキュウ。シー ユウ アゲイン"いつか何処かの山での再会を誓う。
 モンブラン、マッターホルン、アイガー3山とも山の仲間に助けられ無事に登頂下山出来たことを、心より「ありがとう」とアルプスの青い空に叫ぶ。これからも人の出会いを大事にし、いつまでも自分なりの夢を持って精進し、三浦雄一郎さんの様に青春したいと思っています。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ314号目次