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三峰家は創立80周年をめざす
さとう あきら

 創立70周年おめでとう。会は人間に当てはめると何歳位に相当するのだろうか。もちろん子供や伸び盛りの青年、という訳ではないだろうが、現在の会の活動から見ても体力下降気味の70歳のお年寄りでも決してないだろう。人生経験も相応に備わり、経済的にも安定した壮年期、というところだろうか。そんな不惑の年代では、どんなことを考え行動するのだろうか。
 先日、谷川岳天神平で開催された「雪崩事故を防ぐ為の雪上実習」という講習会に参加して来た。主催は天神平ロープウエー(株)、つまりスキー場である。旧来スキー場の管理主眼は雪崩などの事故防止であり、管理域外を滑降しようとするスキーヤーやスノーボーダーに対しては、強権的な態度で指導、排除してきた。そしてスキー場域内では雪崩に対して100%安全ですということを保証してきた。それがなぜ発生させないはずの「雪崩事故講習会」を、スキー場自身が開催するのだろうか。ということは、これを受講すれば管理域外を自由に滑降するためのパスポートとなるのだろうか?
 講師曰く。天神平は本来登山者の場所であった。それをスキー場という遊園地にしてしまったが、その外は今もって登山者の世界であり、山の厳しさや危険は全く変わっていない。一般の人のコース外滑降を承認している訳ではないが、意識の高い人には正しい知識を習得してもらいたい。これは雪をよく知るプロとして当然の行為であり、アウトドアをより安全に楽しんでもらうためのお手伝いをしたいだけなのだ、と言うのだ。
 以前は、コース外で勝手な事をするとして登山者を眼の敵のように扱っていた時期もあった天神平だが、180度の方針転換である。
 スキー場も大人になり、管理域外に行く人は自己責任でどうぞ。そして安全に行けるように協力しましょう、という事なのだ。
 人間も成長する。とにかく教えてもらい力をつける10代。自分本位でがむしゃらにつき進む20代。周囲や物事の仕組みが分かる30代。大局的にあるべき姿を判断できる40代。人生に余裕が出てきて、周囲にも手を差し伸べられる50代。そして時間も十分で、生きがいに没頭できる60代。
 現在の三峰は50歳代後半の親父に10代と20代の息子を持つ家族、というふうに私の目には写る。もっと勉強したい、もっと登りたいという息子たちには出来るだけその環境を整えよう。一方自分の登山のパターンはオールラウンドで、とほぼ固定化し、実力相応の所で無難に楽しむ、という親父。お金も装備もそこそこあり、今のところ緊急に必要となるものもない。
 それならば、まずは息子たちの教育を第一優先に、そして余裕があればボランティアでも、というあたりだろうか。自分達山岳会のため、さらには登山界への貢献を、と行動するのが壮年山岳会としての好ましい姿と思えるのだ。
 既に登山界への貢献としては、清掃山行もやり、岩つばめ山行記録をWeb上で公開し情報提供を心がけている事は特筆すべき活動である。しかし欲を言えば、やはり三峰、歴史のある会は違う、と云わせるような貢献が出来れば嬉しいと考えている。
 登山道の道標整備も良し、安全登山のためのガイドを作成するのも良し、上部団体である都岳連活動に協力するのも良し。あまり負担にならない程度で、細々でも継続させ、「何とか」だったら三峰山岳会、と言わせるような登山界への貢献をしたい。そうすればたとえ自己満足と言われようとも、10年後にはもっと胸を張って、歴史に恥じない創立80周年を迎えることが出来る。これが大人の山岳会としての、日本に名立たる先輩山岳会としての目指す姿だと信じている。


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