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編集後記

 先日の阿弥陀岳中央稜の例会で、下山途中金子さんが小氷瀑の下降で滑落し、右足首を怪我して歩けなくなった。残りのメンバー4人でテントを張れる場所までどうにか搬出した。携帯電話で本部の田原さんや地元の救助隊に連絡をとり、一夜ビバークした後、翌朝から地元の警察、遭対、消防署の力を借りて救助することができた。
 沢から搬出する際、ザックの背負子、ザイルの背負子など試してみたが、普通の登山道ならまだしも、足元の悪い凍った沢で人一人を背負って下るのは無理があった。結局、最初は本人が頑張ってストックを使って歩ける所は歩く、無理な箇所は一時的に背負う、さらに高度差のある箇所はザイルで降ろす、それ以降踏み跡に幅ができてからはザックを連結したタンカで運ぶ、の組み合わせでことにあたった。本人も痛みをこらえてよく頑張ったし、我々4人もかなりの重労働だった。
 結果として、今回の救助活動は幸運も重なり、うまく対処できたのではないかと思う。まず、怪我が頭や内臓系のものでなかったのがまず不幸中の幸いだった。それもあり、落ち着いて良いチームワークで行動できた。また、ビバーク地で携帯が通じたのも幸いだった。連絡を受けてくれた方々の対応も的確でありがたかった。そして、一番の上出来は、日頃から救助訓練をやっていたおかげで、自力で危険地域を脱出できたことだと思う。去年の西丹沢での訓練でザック連結タンカの方法を練習していなかったら、あそこまでできていたか分からない。
 金子さんには不運で気の毒な事故だったが、何事も備えあれば憂いなしで、日頃の地味な努力がいざという時に役立つということを実感できた体験だった。

(小堀 記)

 70周年記念誌がようやくできあがります。うれしい!です。みなさま、原稿やアンケートの回答ありがとうございました。楽しみながら読み、三峰についていままで知らなかったいろいろなことをおしえていただきました。
 「山ヤのかあちゃん」アンケートの味わいのあることばの数々。いいですね~。でも、ひとつギモンです。どうしてかあちゃんが山に行くときに、(ときにはお弁当つくって)にこにこ送り出し、帰ってくるとドロだらけのテントをほしてくれる「山ヤのとーちゃん」、ってあまりいないんでしょうか。
 かーちゃんも、おねえさんも、とーちゃん、にいちゃんたちに山を独占させないで、ずっと生涯登山で登りましょ。

(内山 記)

 ちくま文庫で刊行中の松谷みよ子著『現代民話考』(全12巻)がおもしろい。日本全国のよもやま話を蒐集・分類したものだが、その巻9の蛇の話には驚いた。話の性格上舞台は山里が多いが、疲れたので路傍の丸太に腰を下ろしたらそれが動きだしてタマゲタとか、こんな所に丸木橋がかかっていたかなと不思議に思いながらも渡ったらそれが動いて沢の向こう側から大きな鎌首に睨まれたとか、夜雨が降ってきたので見慣れない穴にもぐり込み雨宿りしていたら入口にたてかけた棒がしなるので出てみたら上に目があったとか、なにしろ大きさが尋常でない。蛇に呑み込まれて助け出された男の子の話もある。かわいそうにその子は耳鼻がすこし溶けてしまい、長じても嫁の来てがなかったという。孤独なその男の背中ににじむ哀しみ、シミジミ解ります、ボクには・・・。
 極め付きは山仕事をしていてうわばみに襲われ、逃げ出したところ体力勝負となり、勝って逆に首を取って村のヒーローになった男の話である。その男は「蛇は尻尾でたたいて人間を倒してそれから呑むので、大きい蛇に追われたときは何か固いものを背負って逃げろ」と聞いていたので、逃げる途中大きなモミ板を背中にくくりつけたという。案の定スピードが落ちて蛇に追いつかれ、バタンバタン背中をぶたれながらも必死で逃げ、そのうち音がしなくなったので戻ってみたら蛇が疲れ果ててのびていたそうだ。蛇がピョンピョン跳ねまわっているアメリカだかのマンガがあったが、そういうことは実際あるのだ! 熊に出遭ったらザックを置いて気を引けという話は聞くが、大蛇の場合ザックは背負ったまま逃げるのがどうやら正解らしい。
 しかしながら、山で「熊に注意」という看板は見かけても「うわばみに注意!」というのは見たことも聞いたこともない。なぜか???
 可能性は二つ。(1)うわばみは日本では既に絶滅した。(2)近年うわばみに出遭った奴は全員が蛇の腹に消えた。
 (1)では残念、(2)だと恐怖。どっちなんだ!

(服部 記)

 ふーっ、やっと編集後記までたどりつけたぜ! 今の私の偽らざる心境です。
 会員、会友のみなさまにはたくさんのすばらしい原稿をいただき、ありがとうございました。とくに続々と届く「70周年によせて」の原稿には、笑ったり、しみじみ感じ入ったり、共感したり、楽しませていただきました。
 そして、今回いっしょに編集作業を担当してくれた他の「岩つばめ」編集委員面子は、10年前の60周年記念号の編集長であり、某企業の広報誌編集長であり、英字新聞の編集者であり、またみな優しいひとたちで助かりました。
 さて、私事になりますが、娘の就職活動が始まりました。厳しい就職状況の中にあって、A社のエントリーシートを朝まで書き続け、寝る時間もなくそのまま今日はB社の説明会とC社の1次試験のダブルヘッダー、という具合に毎日走り回っています。
 娘「わたしいちばん最初に決まった会社に行くからね!」 → 私「Good idea!」
 人間の意思とか希望とか、また、普通はこれと相反するように思われている運命とか受容とか・・・彼女の人生の倍+α生きてきた身としてはいろいろ思うこともありますが、とにかくいま新しい一歩を踏み出すことがいちばん大事。もし、希望が叶わなくても、そのときそのときに次の一歩を考えればいいのだから・・・。
 外を見やればすでに春の気配。まだちゃんと鳴けない鶯と馥郁とした梅の香りに、また今年も新しい門出の季節の到来を感じています。

(土肥 記)

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