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70周年記念 三峰神社集中参拝
タワ尾根経由長沢背稜ルート
小堀 憲夫

山行日 2003年10月25日~26日
メンバー (L)小堀、福間

 奥多摩駅の改札を出ると金子パーティーと出会った。あとの3人は眠そうな顔なのに、川崎さんだけはパッチリシャキシャキ。空を見上げれば良い天気だ。
 2パーティー一緒のバスに乗り東日原まで一眠り。バス停から小川谷林道と日原林道の分岐までおしゃべりしながら仲良く散歩。「それじゃまた明日」と手を振りそれぞれの道に入った。途中の茶店のメニューをしっかりチェックしていたのは福間さん。
 一石神社の石畳を上がり、靴の紐を締めなおして境内裏の急な踏み跡を登り始めた。少し先を単独の年配男性が歩いていた。一石山までの道は急なジグザグのガレ道で、結構汗をかいた。この道は鍾乳洞への道に昔使われていたようで、所々にセメントで固めた階段などがあるが、今はもの好きさん達の専用路らしく、荒れた不明瞭な踏み跡を丁寧にひろって高度を稼ぐことになる。下に石を落とさないよう注意が必要だ。途中で先行の男性を抜き、一登り終えた小尾根の肩にちょうど良くベンチがあった。汗を拭いて一服。続く岩場の登りを終えると、この先通行止めの表示がありタワ尾根への入口となる。
 タワ尾根は名前のとおりゆったりとした尾根で、穏やかな登りが続く。道は途中までは片側が植林されているが、やがて自然林に優しく囲まれ始める。小川谷からの尾根が右から合流する辺りは広々とした雑木林になっている。そして、そのド真ん中に鎮座するのは幹周り7.5m、樹齢500年以上と言われるミズナラの巨樹だ。前号の岩つばめ編集後記にブナと書いてしまったが、ミズナラの間違い。最初に見た時は、そのあまりの存在感に福間さんと2人我を忘れ巨樹の前に平伏し、「世紀の大発見!あなた様のような巨樹さまがこの世に居ようとは!」と何度も拝礼したのだった。ところが下界に下りて数日後、ある雑誌にこの巨樹さまが『金袋山の巨木』としてどうどうと紹介されているのを見てがっかり?しかも、我々が恐れ多くてけっしてできなかったことをやってしまいやがっていた!! ぬわんと、巨樹さまにどうどうと登り、上でふんぞりかえっている写真まで載っているではないか! これも後日談だが、我輩はこの巨樹さまの根元でどうしても一晩明かしてみたくて一升瓶担いで再訪したのだった。その時は、なんと20名以上は居ただろうか、巨樹ツアーの団体が所狭しと巨樹を取り巻き、写真パチパチ、おしゃべりペチャクチャ、木肌ペチャペチャやっていたのであった。そういえば、途中『巨樹コ-ス』なる標識があったような・・・。ともかく、その時は先を急いでいたので、再訪を心に誓い、金袋山への登道へと向かったのだった。
 途中右の斜面下に人の気配。後で出会ったその人は、登り始めた時に追い抜いた男性で、きのこ採りに来た人であることが分かった。きのこが採れると聞いて、福間さんの瞳が瞬時にきのこ型に変形してしまった。はるか遠くの我輩にはただの木肌の模様としか見えないものにするどく反応してダッッシュ! タバコをふかすことしばしの間に大量の平茸をゲットしてきたのであった。イヤハヤ・・・。ところが、続く枯れた笹薮の中の踏み跡を辿っていくと、途中の倒木になにやらきのこらしきものが! 我輩が4~5枚ゲットしたそれは、なんと天然のシイタケだった。
 岩っぽい登路を登りきり稜線を少し行くと、ウトウの頭にあっけなく到着してしまった。頂上脇の木に、だれが彫ったか色鮮やかな木彫の看板が掛かっている。表にはウトウが、裏には藤原定家の善知鳥(ウトウ鳥)を詠んだ歌が彫ってある。これを観るのが今回このルートをとった理由の一つでもあった。
ウトウの頭にて  『ウトウ』というのは、我が国では本州北部以北の島に棲むハトぐらいの大きさの海鳥のことで、腹部の白をのぞいて全身のほとんどが黒で、オレンジ色の嘴の上嘴基部に、繁殖期だけ10mmほどの突起ができるが特徴だ。ウトウはアイヌ語で突起のことを意味するらしい。なるほどと納得。だが、なぜ、この三角点をウトウの頭というかは、定家、じゃなかった定かではない。
 しばしの休憩後稜線を少し辿ると、大京谷のくびれへの下降となった。それからの登りも穏やかで、あっけなく長沢背稜に出た。
 途中、水松山を過ぎた辺りで明らかに今朝川崎さんがザック脇に挟んでいたものと思われる日焼け止めクリームのチューブを見つけ、回収。ちゃんと天祖山を登ってここを通ったのねと、安心した。その夜は長沢山を越え細い岩稜帯が始まる前の比較的広い鞍部で幕営。うまい具合に風を避けることができる地形で、快適に山の晩餐を楽しむことができた(天然の焼シイタケは香り歯ごたえとも絶品!)。
 翌朝、集合時間に間に合うように早めに出発。途中白岩小屋の前でまだ時間に余裕があることが分かりラーメンを食べていると、金子パーティーと成田さんがほとんど同時に白岩山から降りてきた。それからは、仲良く3パーティーで見ごろの紅葉を愛でながらのんびり三峰山へと向った。


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