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鳥甲山(とりかぶとやま)
さとう あきら

山行日 2003年10月4日~5日
メンバー (L)佐藤、小堀、鈴木(章)、飯塚、福間、服部、野田、別所、山沢

 信州秋山郷の最奥で三角錐形にそびえる鳥甲山は、交通アクセスが悪くなかなか行くことが出来ない辺境の山である。春にこの近くをスキーで廻ったときにその秀麗な姿に感激し、キノコ山となる時期に来てやろう、という事で皮算用例会を企画してみた。
 東京から車を走らせること4時間半の午前2時。やっと和山登山口の狢平(むじなだいら)着。新車に替えたばかりの服部号は既着で、登山前祝いの酒盛りがもう始まっている。こちらも急いでテントを設営し、別所さんや山沢さんの持参した銘酒のおこぼれを頂く。
展望の白クラ尾根での中高年登山隊  翌10月4日、まず下山口の屋敷登山口に私の車を回送しておき、登山開始午前7時。既に5パーティ程先行しており、キジ撃ちなどでモタモタしている我々はビリの出発だ。さすがにこの山を目指すのは登山の熟達者ばかりのようで、どこかのパーティとはいでたちが違う。色あせたザックやよれよれのウエアの人など、他にはいない。
 歩き出すと直ぐに急登の連続だ。うわさには聞いてはいたが、半端ではない。太いぶな林の中の登山道を腕力任せにゼイゼイ、フーハー言いながら登ると、次は万仏岩の岩稜登りとなる。ゆらゆら揺れるハシゴを怖いよぅと言いながら越えると、ガスが切れ、展望が開けてきた。眼下には屋敷部落の家々が、緑の中に色とりどりの屋根をのぞかせる。一方正面の尾根高くには、黄金色や深紅に装いを変えた木々があでやかに揺れる。登山道わきはスッパリと切れ落ち、岩登りのような高度感も小気味良い。この白クラ尾根歩きだけでも来た甲斐があったと、ちょっぴりうれしくなる。
 すぐ前を歩いていていた小堀氏が急に立ち止まり、今しがたまでここにカモシカが居た、と言い出した。獣の臭いがするというのである。ムムッ、ワイルドな。酒臭い馬鹿なら確かに居そうだが、動物はどこだと周囲を見回すが、幅細の尾根にその姿は無い。我々を察知してどこかに隠れてしまったのだろう。それにしても驚くべき高感度の嗅覚。それでは小堀氏には、今後臭いセンサーとして活躍してもらおう。ではデビュー戦は次回ルーム後の飲み屋だ。参加者はカラキジを打たないように注意されたい。
 難所とのガイドの剃刀岩も順調に通過し、やせ尾根の崩落地点を通過すると、屋敷からの登山道と合流となる。そして10時45分、このルートで唯一展望の良くない鳥甲山頂上での記念撮影となった。
鳥甲山頂上は展望が良くない  小休止ののち下山となるが、昨日まで降り続いた雨のため登山道は良く滑る。そのうち本格的な降雨となり、スッテンコロリンしながらの屋敷登山口着は14時だった。途中キノコ名人の福間女史や飯塚女史が生育状況を詳細に調査するものの、今年は例年に比べ遅れているらしく、収穫は懸念どおりの皮算用に終わった。
 さあ次はお楽しみの温泉へ。地元に詳しい山沢女史ご推薦の小赤沢温泉「楽養館」は赤茶けた土色のぬるい湯が自慢で、浴槽の周囲には堆積物が厚く付着している。梁がむき出しの天井と相俟って、秘湯の雰囲気は十分。日帰り入浴施設ではあるが、このような所に滞在しのんびりとしたいものである。
 ここでお互いの腹の出具合を笑い合う中、一人話題をさらったのは、筋肉で引締まった野田さんの肢体。60歳代ながらも、月間300kmも走るマラソンマンの体に余分な脂肪は無く、とても三峰会員とは思えない筋肉美だ。女性陣もどうぞご一見を、とシャイな本人に代わりお伝えしておく。その夜は下山口近くに戻り、雨の中での幕営となった。
小赤沢温泉は温泉マニア御用達  翌10月5日は温泉三昧の日。まずは切明温泉の川原の露天風呂へ。先人の掘った湯船がここかしこに点在し、既に20名以上が入浴中だ。尻の下から湧き出る熱水と冷たい川の水とがまだらに混じり合い、なかなか適温快適な場所にはめぐり合えない。それでも無料の野湯とあって、気分は最高。元気印の章子女史は、はいれぐ水着持参で臨んだものの、着替える場所がなくあえなく敗退。そうでなくてもハダカのオヤジばかりで、紅一点で入浴するにはやはりかなりの勇気が必要なのだ。
 不運にも温泉旅館の内風呂も清掃時間となり女性陣は入浴出来なかったため、同じ栄村の北野天満温泉に入り直しとなった。しかしここで大事件が発生。男湯の脱衣所に置いた財布から、一同現金を抜き取られてしまったのだ。それぞれに1~3万円の被害が発生し、もう意気消沈である。皆さん、財布はロッカーか車の中に隠して入浴しましょう。
 そして山行の仕上げは十日町のソバ屋「由屋(よしや)」。コシが強く絶品と称されるそばを、男性陣はよく効くワサビの涙と共にすすり込み、静かに帰途に就いたのだった。


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