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宝登山ハイキング
服部 寛之

山行日 2004年2月1日
メンバー (L)服部、菅谷、(青木、久保田)

 梅干が嫌いだ。
 すっぱくてまずい。
 祈るような気持ちで手にした正体不明おにぎりを喰いすすむという状況下で不幸にしてこれにぶちあたると虫酸が走る。
「すっぱいした!」と、悔やんでも遅い。
 しかし、梅の花は好きだ。見た目きれいだし、匂いもよろしい。
 それにしても、この花と実とのギャップは恐ろしい。片やあでやか、片やしわくちゃ。なにやら行く末暗示的と云えなくもないが、梅干ファンに言わせれば実に味わい深いといったところだろう。
 で、花皺つづく。
 宝登山に行ったのは蝋梅を見たかったからだ。去年の新年山行で行った鐘撞堂山の山里で初めて咲いている蝋梅を見てその美しさに感嘆した。艶のある純な黄色で、匂いも馥郁としてまたすばらしい。宝登山の山頂にはその蝋梅園があるのだ。
 宝登山があるのは、埼玉県西部、荒川中流のあの有名な長瀞だ。長瀞駅を降りて、東に行けば長瀞、西に行けば宝登山である。山登りは早朝にこしたことはないが、西武飯能駅でみんなを拾ってから登山口まで行きさあ登ろうとなったときには、既に9時になっていた。それでも適当に突っ込んだ登山口前の有料駐車場にはまだクルマは1台もなく、早朝の乱されぬ空気がそのまま残っていた。登山口には立派な宝登山神社があり、一応、当地のカミサマにご挨拶してゆく。宝の山に登る神社とはいかにもご利益がありそうで、この神社は名前でだいぶ得しているに違いない。
 神社の横から林道に入る。一般車は通行禁止だが、山頂直下まで広い林道が通っており、これが表登山道になっている。山頂まではロープウェイもあるが、これだと5分で頂上直下まで行ってしまうので楽しくない。林道には所どころ串刺し状に近道が通っていた。
 小一時間で山頂に到着。お目当ての蝋梅園は山頂の南側にあった。林道には人の姿は数えるほどしかなかったが、蝋梅園にはロープウェイで上がってきた人々が結構いた。園の規模は小さいが、それでも満開の蝋梅が春まだ浅い陽の光を浴びて山の一角をあでやかに黄色く染めていた。木の下に立って見上げると、青い空に黄色い水玉模様が映えてうつくしい。期待した馥郁たる匂いは、人込みにかき乱されてしまうのか、思ったほどではなかった。しかし、蝋梅園の前からは展望もすばらしく、クリアな視界に、秩父山地の彼方の浅間山の白い頂きまで見通せた。
 一段落して観察すると、蝋梅園の下の斜面は勾配が幾分大きくなっており、それ故かどうか定かではないが、紅梅園が幾分大きく広がっていた。紅梅は蝋梅に比べると花はまだ少なく、出遅れている観があるが、よく見ると木一本いっぽんが違う種類で、贅沢な紅梅園なのであった。そちらの方が人がまばらなので、下の方の平らな段になっているところまで下りてマットを広げ、おしるこ大会を行なう。本来はチョコフォンデュ大会の予定であったのだが、リキュールの小壜が手に入らなかったので、急遽おしるこ大会に変更したのだ。おしるこには必殺ワザがあって、薄切りカットのお餅を入れるとグレードが大幅アップするのじゃよ、むはははは。梅見おしるこ大会は野鳥の来客(キビタキ、たぶん)もあって風雅なひとときを過ごしたのだが、実は参加者のひとり久保田さんから今回参加した主要目的のひとつがチョコフォンデュだったと激白されて申し訳なかった。次回はやります。ちなみに、青木さんはわたくしの元同僚、久保田さんは彼女のハイキング友達で、三峰の基準からいえばふたりともまだギャルの範疇に入るお年頃なのですね。
山頂の蝋梅園 好展望が広がり、両神山(中央)もよく見える  おしるこ大会を終了し、再び蝋梅園を通って山頂へ行ってみる。世相を反映してそこはさながら中高年ハイカーの憩いの場となっていたので、山頂の標識だけ確認してすぐ去る。そして山頂を挟んで蝋梅園とは反対側にある動物園へ行ってみるが、ここはいくばくかの入園料を取られるうえに、身近な動物と触れ合えるといった趣向の子供向きファミリーズーのようで、これといった珍しい動物もいなさそうなのでパスする。動物園前からつづいている林道は朝上がってきた林道につながっており、そのまま往路を下山してゆくと、林道には下から人の切れ目がないくらいぞろぞろぞろぞろハイカーが上がってきていて驚いてしまった。
 12時過ぎに神社まで下りてくると、今朝のガラ空き景色は一変し長瀞駅からつづく参道は蝋梅見物のクルマでびっしり大渋滞で、さらに驚く。駐車場はどこも満杯。遅くクルマで来た人はロウバイ見る前に駐車場探しにロウバイするのだ。早めに来て正解だった。蝋梅見物にこんな人出があるとは思ってもみなかった。まさしく、オドロキモモノキウメノキと、オドロクことしきり。
 まだ時間があるので、下りてきたその足で長瀞の岩畳を見にいった。何年か前に来たはずだが、ぜんぜん憶えていない。岩畳から見上げる宝登山はペッケリとうずくまって見えた。しばらくぼおっとしたのち、土産物屋をひやかしながらクルマに戻った。
 帰路は去年の新年山行で行ったかんぽの宿寄居の展望風呂でいい具合にあったまり、関越道で帰京した。練馬高野台駅で解散。お疲れさまでした。


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