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伊豆・城山
深谷 千明

山行日 2004年5月29日~30日
メンバー (L)高橋(俊)、小幡、小林(と)、川崎、深谷、成田、(29日のみ)荻原+2

 4月に広沢寺で岩デビューした私は、岩登りの楽しさを知り、前夜は不安と期待でなかなか眠れなかった。まるで修学旅行の前夜のような懐かしい気分だった。
 当日は初夏を思わせるような日差しの中、南壁の5.8~5.9のルートは超混雑。とみさんと俊介くんがトップロープをかけていると荻原ファミリーが到着!チビッコクライマー登場で一気に賑やかになる。
 一本目。足はガクガク、腕はプルプル、心臓バクバクの汗ダクだったがどうにかクリア。
 二本目。とみさんからアドバイスを頂くと、あら不思議!足のガクガクが止まった。そして小さめなホールドでも立てるようになる。
 三本目。「トップロープは急いで登ることだけが大事じゃなくて、ひとつひとつの動作を考えて、足の置き場所や置く角度を確認することも大事よ。」とアドバイスをもらう。予め本で読んだはずの手の使い方や足の置き方も、実際に登っているとすっかり忘れてひたすらガバ探しになってしまっていた。冷静に岩を見るとガバではないがホールドがある。手や足の置く位置を少し変えただけで今までとは数段も楽に体が上に行ってくれる。感激!
 少し離れたところでは荻原ジュニアも登っていた。小幡さんのコーチのもと、たった5歳と7歳の坊やがスイスイ登っていく。すごい!将来有望ですね!暖かい日差しの中、大人も子供も岩を楽しみ一日目は無事終了。のはずだったが、なんと、とみさんの新品同様のロープが盗まれたことに気付く。駐車場で聞いた話だが、ここは盗難、車上荒しも頻繁にあるとのこと。人の物を盗んでする遊びなんて心から楽しめるんだろうか?ましてや命を繋ぐロープを盗むなんて。悲しい事です。そして荻原さんにもちょっとしたハプニングがあったのだが、こちらの方は荻原さんのほのぼのキャラとみんなの協力で無事円満解決。可愛いジュニアと共に帰っていった。
 残った私たちは車で狩野川の河原まで移動しテントを張り焚き火を囲む。焚き火ってなんだかすごくいいね!体も心もぽかぽかしてくるもん。冷えたビールとキムチ鍋をつつきながら、小幡さんと俊介君が山の歌を歌い、とみさんは踊り、私は演歌を唸り、川崎さんはひたすらワインを飲む。焚き火に映るみんなの笑顔はとってもいい表情をしていた。
 翌朝、5時起床。天気は上々。気分も上々。今日はマルチピッチでとみさんと俊介君は三日月ハングを、小幡さんと川崎さんと私は西南カンテルートをいくことになった。けど、小幡さんはなんと二日酔いらしい。しきりに「頭いてぇなぁ」「早く終わって早く帰りてぇなぁ」と全然やる気なさげ。大丈夫かしら。ドキドキ。何たって岩登り二回目の私が、初めてマルチピッチに挑戦するんですよ。クライミングの本に西南カンテルートは 『レベルIV、易しいフリークライミングに終始する』と書かれていたが、やっぱり不安。・(>_<)・
 緊張しつつ1ピッチクリア。3ピッチ目で「オレ、ルートわかんないんだよなぁ」と小幡さん。川崎さんが「きっと大丈夫よ。あとは簡単なルートで3ピッチで終わりのはずだから」なんて励ましてくれたけど、5ピッチが終わっても上が見えてこない。6ピッチ目は垂直の壁。思い切り掴んだ小さな岩がベリッとはがれた!はっはがれちゃったんだよ!岩ってはがれるもんなの?心臓が口から出そうなほどビビッた。全身から脂汗がジリジリと出てくる。7ピッチ目はトラバース!こんなのやったことないよ!話が違うじゃん!でも行くしかない訳で、恐る恐る足を出すが、中ほどで動けなくなってしまう。恐怖で足が縮こまりしっかり立ち込めない為、次のホールドに手が届かない。今つかんでいる岩からも少しずつ手が外れていく。行くことも引き返すも出来ない。ここで岩から手が離れたらロープにふられて岩にたたきつけられちゃうんだろうなぁ。骨折するかなぁ~。裂傷もできちゃうんだろうなぁ~。もしかして打ち所悪かったら××?ドックンドックンと心臓の鼓動が次第に大きくなる。ここで立ち止まっているのも限界!力を振り絞り覚悟を決めて伸ばした足と手。つかめた!!落ちなかった!涙がにじんで喉の奥がコロコロしてしまった。その後は無我夢中、気がついたら小幡さんの傍でセルフビレイをとっていた。まだ上があるようだけど、ルートがわからない不安と厳しい岩に身も心も限界に達していた。ここで小幡さんにお願いして降りることになった。岩を外れて急な森林コースをひたすら歩くと下方に岩壁が見えた。立木に支点を取り懸垂で降りたところは東南壁だった。初夏のような日差しの中、4時間にも及ぶクライミングはこれでやっと終了。
 帰りは、旅館一二三荘で温泉に入り(¥300)沼津の海岸線を走る。ちょうどお腹もすいた頃だったので駿河湾の海の幸を堪能しようと、活魚料理の店に立ち寄る。みんな生ビールと海の幸をオーダー、まだ二日酔いの抜けない小幡さんも生ビールとヒレかつ定食をオーダー。(んっ?駿河湾って豚も泳いでたっけ???)このヒレかつ定食がきっかけになり話題(笑い)の中心は小幡さんに。ちなみに、あれほど二日酔いで苦しんでいた小幡氏はヒレかつ定食を食べると二日酔いはすっかり治まった。ヒレかつパワーはすごい!
 このヒレかつの話題は尾ひれが付き何だかんだと東京に着くまで笑いのネタになった。
 笑いあり、感動あり、恐怖の涙ありの盛りだくさんの楽しい山行をありがとうございました。これほど怖い思いをしたのに、更に岩登りが好きになった私。前回の山行では雷の恐怖で涙し、今回はトラバースの恐怖で涙し、涙なみだの三峰山行が続いているが、次回はどんな涙が待受けているのか・・・。懲りない私はちょっと楽しみにしてる。


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