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平ヶ岳・恋ノ岐川
峯川 正行

山行日 2004年9月3日~5日
メンバー (L)佐藤、高木(敦)、金子、藤井、成田、天内、峯川

 前回の丹沢・源次郎沢へいった際に恋ノ岐川の沢登りの話題になり、できれば行ってみたいと思っていた。しかし、その時は1泊の行程であると思い、なんとかいけるであろうと過信していた。実は2泊3日のロングコースであり不安感が増してしまう。
 3日の金曜日は会社を休むことにして、参加希望を出したが、この初心者が行って本当に大丈夫なのであろうかと前日まで本当に心配であり、緊張しまくっていた。ザックも沢用の60リットルの秀山荘のウォータークライムを購入。しかし、恋ノ岐川という名前はなんとも耳に残る名前で心惹かれるものがある。とにかく行って、自分の体で体験してみたかった。
 初日は運がいいのか、快晴。沢登り日和である。入渓してしばらくは小滝やナメ床が多く、景色を楽しみながらわくわくしながら進む。途中にいい感じのナメ滝があったので、憧れていたウォータースライダーを実行してみた。2度3度滑ってずぶぬれになったが天気がよかったのでとても気持ちがよかった。これが沢登りの醍醐味なのであろうか。しかし、やりすぎたのでズボンのお尻に穴が開いてしまった。それもあとになって指摘されて気付く有様。
10m2段の滝 皆さん楽しんでいます  それにしても、ため息をつきながら前へ進んでいく。前回の丹沢とは全く違った光景が私を迎えてくれる。全て目に入る光景が新鮮そのものであり、心がうきうきしてきてしまう。そして、足元が適度に冷たいので、それほど疲労感も出てこない。なんだか、ひとり楽しくてにやにやしていたかもしれない。これは、沢登りにはまる兆候なのだろうか。
 徐々に進むにつれて、ゴルジュが多くなり、水際をへつる場所が多くなる。私は"へつる"という技術を習得はしていないために、何度か踏ん張れなくなり釜にドボンをしてしまう。今日のような天気がよい日は気持ちがよくてよいが天気が悪い日などは地獄であろう。この技術は現場でなければ習得ができないであろう。
 そして、入渓から7時間程して、幕営地を決定する。GPSにて位置をほぼ確定することができた。沢でもGPSはかなり使える事が確認できた。
 初めての沢での泊まりである。今まで私が使用してきた指定の天場とは全く違う。金子さんが持参したノコギリで幕営地を切り開き、焚き火で使用する木々を切ったりと、することなすことがすべて初めての世界。「沢で泊まりをするとはまるよ」と皆さんにかつて言われたが納得である。そして、釣り名人により岩魚を6匹ヒット。この岩魚のムニエルがうまかったー。そして、夜が更け焚き火の周りで至福の時を過ごす。
 2日目も朝から快晴である。なんとついているのであろうか。幕営地を6時40分頃あとにして、まずはオホコ沢出合を目指す。朝一はどうも脚が前に進まない。オホコ沢へは程なく到着。このオホコ沢は思ったほど大きい沢ではなかったが、ここはエスケープルートであり、この沢を突き進むと平ヶ岳の一般登山道へ詰められるそうである。今回は運良く使わずに済みそうである。
 ザイルも使わずに滝をいくつか越えていくと、いよいよ、稜線が目に入ってくる。多少疲れていた体が一気に奮い立たされた。そして、今回最大の50mはあろうかという大滝が目の前に。これが最後の難関である。写真を撮る余裕もなかった。緊張してくるとそれどころではない自分なのである。ザイルはここでも使わずに、皆さんはスイスイと登っていく。私も一歩一歩三点確保でゆっくりと登っていく。もし、ここで滑って落ちたらと思うスリル感はもの凄いものであり、また自分には気持ちいいのである。
 この50m大滝を越すと、いよいよ最後のお仕事であるヤブ漕ぎが。時間的には13時半くらいであったか、藪コギ開始とともに天気が崩れ始め、土砂降りとなってしまう。雨の中のヤブ漕ぎはどうなるかと思ったが、実際20分ほどで稜線にたどり着く。
平ヶ岳をバックに記念撮影  登山道の稜線に出たときは、暗闇のトンネルから抜け出たような感覚であり、感無量であった。景色が悪かろうが関係ない。今回の最大の目的は達成できたのである! 結局天気が悪く、平ヶ岳や玉子石などは行かなかった。玉子石を蹴っ飛ばすつもりだったが・・・。
 3日目はとにかく猛スピードで下山する。天気が朝からあまりぱっとしなかったが、双耳峰の燧ヶ岳などが近くに見え、またガスがかかっていたが水墨画のようで幻想的であった。
 11時半くらいに平ヶ岳の登山口へようやく到着。今回は、初めて尽くしの沢登りであったが、本当に天気にもいい感じで恵まれ最高であった。この体験は自分にとって忘れられないことであり、今後の試金石となるであろう。リーダーの佐藤さんをはじめ、皆さん、こんな初心者にいろいろアドバイスをしていただきまして本当にありがとうございました。

〈コースタイム〉
9月3日(金)晴れ 恋ノ岐橋(7:20) → 清水沢出合(10:00) → 三角沢(12:30) → 1274m地点幕営地(14:20)
9月4日(土)晴れのち雨 起床(5:00) → 出発(6:40) → オホコ沢出合(7:20) → 50mナメ滝(13:00) → ヤブ漕ぎ開始(13:20) → 登山道取付(13:50) → 姫の池幕営地(14:20)
9月5日(日)雨 起床(5:30) → 出発(7:20) → 白沢清水(8:30) → 台倉山(10:00) → 平ヶ岳登山口(11:30) → 恋ノ岐橋(12:00)

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