トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ316号目次

高見石より天狗岳、夏沢峠
宮坂 和秀

(五月五日-六日)
 連休の新宿駅は登山者で物凄い混雑だった。23時45分の行列中に並ぶこととしたので、会の小旗を傘につけて先頭から後尾まで二往復ほどしてみたが、見付からない。何本も臨時列車が出ているので、もしやと思って次の中野発の行列まで見に行ったが、これも見付からない。また新宿まで引返した時には発車時刻十分前だった。超満員でとても乗れそうにもなかったが、一応デッキにすがりついてみたらどうにか乗ることができた。
 大月で室内に入り、甲府までは立ち通し、あやしまれた天候は遂に崩れて本降りとなってしまった。茅野駅に着いたのは6時10分。連中はこの列車には乗っていなかった。次々に到着する列車にも乗っていない。最終の0時50分発の列車で来なかったら上諏訪の父の家に行こうと思ったら、その列車で四人やって来た。
 この雨では予定通り決行することは無理なので、変更することとして、コースを検討。結局、逆に高見石から登ることにして渋の湯泊りと決めた。バスは1時20分までなので待合室で待つ。この日は諏訪神社の御柱祭(おんばしら)なので、待合室は雨泊りと乗降客で一杯だった。結局、汽車に乗った時間が六時間、茅野駅で待ったのが七時間という記録である。
 バスが出る頃には雨があがり、青空が出たと思ったらぐんぐん回復に向って来た。渋温泉の辰野旅館に着いた時には完全に快晴になってしまった。夕食後、赤岳の見える所まで登って見た。
 次の日は六時半出発。好天に恵まれたことを感謝した。渋の湯を経て一汗かくと賽の河原に出る。こゝから高見石までは一投足である。小屋の裏手の岩の上で小休して展望を楽しむ。目の前の中山は立派な山容を示している。
 小屋まで戻って稍々下って中山の登りにかかる。この辺りから残雪が豊富であり、路形に踏まれた所以外はずぶずぶもぐるので歩きづらい。中山からは浅間の噴煙がよく見えた。
 中山峠から東天狗、西天狗をのぞみながら登る。係は御老体なのでなかなかつらい。やっとの思いで到達した天狗岳(東天狗)の頂上岩峰で昼食にする。こゝの展望はすばらしい。
 がらがらした天狗を下り切って次は根石岳で再び森林帯に入る。残雪の径を箕冠[みかぶり]山を越えて夏沢峠に下りつく。こゝは二軒の小屋が佐久側と諏訪側に向い合って建っている。荒々しい火口壁を抱いた硫黄岳が壮観である。
 小休した後、一時半茅野へ向けて下り始める。残雪があるので下りは速くて楽だ。日射の強い西陽を受けながら、ひたすらに下る。単調な路を「何だってこんなに長いんだろう」とぼやきながら、いゝかげんに腹が立って来た頃、やっと北槻ノ木橋に着く。峠から三時間の行程だ。上槻ノ木からバスが出ているが時間が悪いので泉野まで足をのばす。おんばしらの祭なので、バスが増発されていたので助かった。
 茅野からの乗車は祭の帰途とかち合ったため一苦労したが、富士見を過ぎた辺りより楽になり、韮崎から全員が座ることができた。

(タイム) 茅野駅13:20-バス-渋温泉(辰野旅館)15:00(泊)=6:30-御殿の湯7:03=13-中山峠分岐7:23-賽の河原8:30-高見石8:55=9:10-中山10:10-中山峠10:25-天狗岳11:30=12:30-根石岳12:40-箕冠山12:55-夏沢峠13:15=30-オーレン小屋13:47-夏沢鉱泉14:40-途中休憩15:15=30-北槻ノ木橋16:25=35-上槻ノ木16:55-泉野17:15-バス-茅野駅17:50
(参加者) 宮坂、諏訪、播磨、溝越、印牧

昭和37年7月14日発行
岩つばめNo.161 掲載

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ316号目次