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北東北の山(野湯三昧その2)
別所 進三郎

山行日 2004年9月23日~26日
メンバー (L)佐藤、江村(し)、小山、別所

野湯: "一般の温泉地のような立派な温泉施設もなく、歩いていかなくては入湯できない温泉"と説明されています。この言葉を使って例会報告します。

一本松温泉
 乳頭温泉郷の黒湯から乳頭山へのコースの山道を40分で、一本松温泉跡という標識ある現場に到着。灰色の沈殿物のある石ころ囲いの湯漕があった。スコップで湯船を整備したり、湯温の調整に沢水を誘導したりせず、4名いきなりふるチンで膝までの硫黄泉に入る。今回一発目の初級*野湯である。缶ビールを戴き、湯の温度や湯床の不安定さを探ったりしていると、登山者が通りかかったので、話をし、シャッターを押してもらう。
*初級=整備された登山道などをほぼ利用できる。

孫六温泉
 一本松から黒湯に戻って、すぐ下流の歩道橋を渡ると孫六温泉に着く。400円で外湯に入れる。露天風呂3箇所、屋内2箇所に入る。屋内の岩風呂は熱く無色透明である。  宿湯=中ぐらい

往路
 22日21:30水道橋駅集合、東北自動車道の某SAでテントを張りビール・おでん・泡盛にて就眠。翌23日は平泉で途中下車し、修復された中尊寺の金色堂を拝見し"関越え"を実感する。雫石で冷麺を食べに入ったドライブインにセンマイの刺身があったのでビールも頼んで皆で味わった。←当たり、旨かった。
 スーパーで食料調達し、田沢湖一望後、前記一本松~孫六温泉に入った。今夜の幕営地は秋田駒の八合目のバス終点駐車場、秋田のキリタンポと比内地鶏鍋でくつろぐ。

24日の山行
 湧水を引いた飲料設備、水洗トイレ、屋内寛ぎスペースのある八合目休息センターを後にして、火山現象で顕わになった斜面に付けられた山道を登る。
 小一時間で阿弥陀池避難小屋に着く。ここの設備はしっかりしていて、設備の建設、維持、利用者の心ある対応が感じられる。スキーツアーには良い基点になるだろう。男女岳(1637m)、男岳(この辺のピークを指して秋田駒ヶ岳と言っている)の山頂に立ち360度の展望を鳥瞰する。眼下に田沢湖、後方に岩手山そして女岳の横の小岳がサザエの蓋のような形状で面白い。
 風の強い稜線を戻り、車を回してもらう予定のしろしさんと別れる。国見温泉へは大焼砂、横長根経由で下る。外輪稜線上からの火口原の景色が素晴しい。秋田駒は名山だ。近くの八幡平、岩手山を巡る山と温泉、葛根田川の沢登り等、この辺にハマってみてもいいなと思った。
秋田駒ヶ岳頂上にて

国見温泉
 登山道を下りると、こまくさ荘で、オヤジが紫蘇の実を削いでいた。入湯料500円。露天風呂では、上からの湯を導くために掛けられたタオルが硫黄で固められ、縦樋状になっていた。そこからの景色と先客との会話を楽しむ。内湯には薬名が入った、定番の黄色いプラスチック桶があった。
 宿湯=中の上(飲んでも美味しい温泉、冬季休業となる山奥さが貴重)
 国見からは角館-大曲-横手と走り湯沢市内で遅い昼食とする。稲庭うどんの故郷ということで道沿いの食堂にはいったが"外れ"だった。冷やしせいろは腰とつるつる感がいまいち、明さんの頼んだナメコうどんにはなめこが三つしか入っていなかった。←るるぶで事前調査しないと。

川原毛湯
 観音菩薩と立派なトイレ小屋のある大湯滝駐車場にテントを張り、20mの滝がすべて温泉水である大湯滝に入りに行く。←15分の下り
 酸性の強い湯滝は目に少し作用する。滝に打たれたり滝つぼに入ったりして、童心化する。
 野湯=初級(この豪快な温泉はすでに有名、野湯と言えないかも)  今晩は邪道芋煮ナベ、昨晩同様、具を入れて行くうちに食べきれないほどの鍋が出来てしまう。小山さんの話術とたらふくなるつまみで幸せな酒宴を過ごす。夜中幕場下の川原に手掘りの湯に入りに行く。湯辺には、おれが掘ったんだと言う主気取り親父と、取り巻きが5、6人いた。昼間と異なりうす暗い露天の湯の趣を楽しみたかったがそんな雰囲気ではなかったので早々引き上げる。この川原の湯が大湯滝に注いでいるので、大湯滝は二番湯になる。

栩湯
 いよいよ今回のメーンイベント、上級**野湯への挑戦である。
 (とちゆ)**上級=総合的な登山技術や豊富な登山経験を要求される。
 翌朝、新処(あらところ)集落のゲートを開けて林道終点まで入る。
 昨夕からの雨が切れない中登り出す、山腹を巻きながら山道を1時間歩いて目的地の沢に出た。それから1時間、熊がいつ出てきてもおかしくない原生林の沢沿いを上り下りして温泉を探すが見つからない。とち湯とブナの大木に刻みのある地点まで、来た道を戻って再探索を開始する。止めようと誰も言わない"野湯探しの篤志家集団"となっていた。先ほど通り過ごした湯分を含む小沢付近を調査したところ、それはあった。ヤッター!!
 次は湯船創りである。地面を掘ったがヘドロ臭いので止め、沢の狭部に枝木を渡してシュリンゲで吊るし、ブルーシートを袋状にして湯を導き湯槽をこしらえた。熱かったので、持参したバケツに泥水をくんで薄めた。1人ずつ入り、ビールを片手に写真を撮った。目的をはたした安堵感を味わいつつ車に戻る。探し回っている途中にブナハリ茸、帰りがけにミズを採った。
 川原毛地獄 日本三大霊場(恐山、立山、川原毛地獄)と案内板に説明あり。不毛の空間が眼前に広がり異様な雰囲気ではある。雨の中10分ぐらい見て、観光を終えた。←昨夜の幕営地の上流にある。

秋ノ宮温泉
 秋乃宮博物館には温泉があるという。早速博物館の入場券を買い温泉に入る。数百年来の岩風呂温泉でレトロな雰囲気があり、得をした感じである。展示品は大正、昭和のおもちゃ、衣類、ポスター、珍品等で、ご主人がマニアである。
 宿湯=中の上(2m×5mの岩をくり貫いた湯船が二槽あり、適温の湯が絶え間なく流れ入り、スカッとしている)

鷹の湯温泉
 リーダーが予約を入れてくれていて、本温泉山行の最終泊は"日本秘湯を守る会会員の宿"に投宿した。六つの湯殿があり、4名夫々思うままに何度も湯にはいった。特に50m幅の河原に突き出た野天の風呂に、夕と朝、入ったが風情があり心地よいものであった。
 宿湯=上(湯量が豊富、深さ1.3mの湯槽を持つ湯殿あり)

 26日(日) 秋ノ宮温泉郷の朝市で土産を買い、神社で山栗を拾った後宿を出立つ。今日の篤志家向け野湯に向かう。

荒湯
 小雨降る中、銀マットに服を脱いで、イオウと泥の沈んでいる手掘りの湯船に入る。ぬるかったので、他の熱い湯船に江村さんに沢水を導いてもらいあたたまる。
 野湯=初級(湯場は駐車場から歩いて10分、地獄の景色も小さい)

復路
 鳴子町に出て、潟沼を見物する。酸性分が強く、特殊の生物しか住めない。
 湖畔にクレー射撃場があったので覗き見た。岩出山道の駅で昼食をし、東北自動車道経由で飯田橋に無事到着した。
 今回は、あきら温泉探検隊長に、しろしアドバイザー、小山なんでも鑑定士と役者ぞろいの温泉三昧でした。"その3"の企画が楽しみです。・・・北アルプスに野湯が数ヶ所有るという。
 尚、野湯の説明、等級分けは、山渓に載っていた野口悦男さんの表現を使いました。

〈コースタイム〉
9/23 黒湯発(14:40) → 一本松温泉(15:15~15:55) → 孫六温泉(16:25~17:00) → 駒ヶ岳八合目(18:00)
9/24 八合目発(7:00) → あみだ小屋(7:45) → 男女岳(8:10) → 男岳(8:45~9:00) → 国見温泉(11:20) → 大湯滝駐車場着(16:30)
9/25 林道ゲート(8:35) → 林道終点から出発(9:10) → ハイキングコース分岐案内板(9:45~55) → とち湯垂れ流し通過(10:20) → 沢をウロウロ → とち湯発見(11:56) → 栩湯発(13:00) → 車戻り(13:55)
9/26 荒湯地獄駐車場発(10:00) → 荒湯温泉跡(10:10~40)

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