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集中山行・丹沢山
その2 焼山~丹沢山
菅谷 征弘

山行日 2004年10月2日~3日
メンバー (L)川崎、三澤、田中(恵)、室橋、菅谷

 久しぶりの山。7月末に独りで穂高に行って以来になる。単独行では、行こうと思っても朝からの雨や、前夜の夜更かしで中止したこともあったが、仲間がいればそうはいかない。前日も、普段より早めに床につくことになるのである。しかも今回は、集中山行なのでなおさらだ。
 今回の飯は、初日の夜が鍋で、翌日の朝がうどんとのこと。私の分担は、白たき1袋と豆腐1丁、それからうどん3人分。米3合もそうだったが、普段は食べないので勘弁してもらった。それから水2リットル(重たかった)。個人的はビール缶3本、厚揚、キムチ、おにぎり、チーズ、チョコボール、どら焼き。普段は甘いどら焼きも、山での行動食にはちょうどいい。寝るときのマットを、全身用から半身用にしたので、体積的にはまだ入る。こんなことなら、早く半身用にすれば良かった。ビールをもっと入れたいが、重いので我慢する。
 時間に余裕があるので、集合はそんなに早くはない。朝もバタバタしないで済む。さすがに用意は前日にするようになったが、朝食は出来るだけ自宅で取るようにしているので、その用意と後片付けがある。集合時間の15分前にJR橋本駅に行くと、川崎さんと三澤さんはすでに来ていた。
 全員が揃って、川崎さんが手配したタクシーを待つ。待つ場所を捜して右往左往する。川崎さんがタクシー会社に電話をするが、待ち合わせ場所の説明が当を得ない。駅前のロータリーと少し先のコンビニを往復していると、まもなくバンタイプのタクシーが来た。なるほど、こういうタクシーがあるのか。これなら大きい荷物を載せても大人4人が余裕で乗ることが出来る。
 小1時間ほど乗ると焼山登山口だが、ここでもすんなり行かず、登山口を捜して同じ道を何回か往復することになった。三澤さんの助言もあって着くことが出来たが、15分ほど余計に掛かった。
 道ばたで支度を整えていると、乗用車が近づいてきた。運転席の窓が開いて、おじさんが一言。
「これから登るの? 蛭に気を付けてね。」
急な言葉に、私は、「はあ」と返事をするしかなく、それだけ聞くと親切なおじさんは行ってしまった。「何だって?」というみんなからの問いには、言われたことを繰り返すしかなかった。今度は、これから登るぞと歩き出したときに、軽トラックが近づいてきて、今度はおじいさんが一言。
 「蛭に気を付けてな。」
 「さっきも言われたんですが、そんなに出るんですか?」とみんなの声。どうやら沢山いるらしい。
 ゆるやかな坂道をゆっくりと登り始める。2時間ほど登って休憩を取る。このときには、みんな蛭のことは頭にはない。
 さらに1時間ほど登ると、靴に蛭が付いていた。歩いているんだから、そんなに簡単には付かないと思っていたら、さにあらず。足クビまで登ってきていた。初めて見た。けったいな生き物だ。尾を持って引っぱっても、なかなか離れない。肌に吸い付くと簡単には離れず、無理に引き剥がすと、歯が残ることがあるという話も納得できる。靴を脱ぐと、中まで入り込んでいるのには驚いた。5、6匹もいる。みんなも驚いていた(特に川崎さん)。私は、いつも靴下を重ねて履いているので、被害は無かったが、血を吸われた人もいた。それからは、時々立ち止まっては足を確認しながら歩くことになった。昼飯もそこそこに、登り続ける。時間的には十分だが、先に小屋に到着して寝床を確保する必要がある。時期的にも天気を考えても、多分、他に登ってくる人はいないとは思われるが。
 登山道を少し外れて坂道を降りていくと、目の前に広場。広い。3、40メートル四方はありそうだ。20ほどの木のテーブルも配置されている。テーブル周囲の草もきれいに切り揃えられていた。それらを見下ろすように、白い黍殻避難小屋が建っていた。戸を開けて中に入るとコンクリートのたたき。戸の左側には一段高くなって、白い木の床がずっと広がっている。大人6人が並んで横になれる広さである。右側には、1坪の広さの部屋が別にあった。
 広い方に荷物を下ろし、寝床を確保して少しすると、持ち寄ったものを並べて、簡単につまみながらの軽い宴会となる。ビールがうまい。みんなで今日の蛭やこれからのスキーのことを話していると、おじさんが1人、小屋に入ってきた。我々よりも軽装で、ザックも小さめだ。聞くと、鹿が出るので見に来たとのこと。今は、鹿の恋の季節で、多い日には、10数頭で広場のテーブルの周りを走り回るのだという。我々も、それを楽しみに夜を待つことにした。
 つまみも無くなる頃には、鍋の用意を始める。白菜、ねぎ、肉、白たき、厚揚げ、えのき。川崎さんの配慮で、野菜は全部カットしてある。1回では鍋に入らないので2回に分ける。2回目は余ったキムチも入れる。自分が持ってきた物が役に立って嬉しい。2回目も食べ終わる頃、鹿の鳴き声が聞こえてきた。外に出ると、おじさんは小屋の横で座り込んで広場を見下ろしていた。今夜は、鹿は広場には出てきていない。複数の声だけが、広場の向こうの林から聞こえてくる。しばらく待ってみたが、とうとう鹿は姿を現さなかった。
 翌日の天気は雨。夜中から降り出した雨は止むことはなく、勢いは強くなっている。うどんを煮て、おにぎりを食べて朝食とする。
 支度をして丹沢山の頂上を目指す。さすがにもう蛭はいない。雨が嫌なのは、休憩場所が限られる、ザックの開け閉めに時間が掛かる、地面が滑る、などであるが、汗かきの私にとっては、体温調整が面倒になるのが一番つらい。そして、周囲の山々の景色を見ることが出来ないのが、なんとも惜しい。蛭ヶ岳から不動ノ峰、丹沢山へと至る道は、晴れていればさぞ景色もいいだろうと思った。非常に残念だ。
 丹沢山には、1時前に到着。山頂の小屋は、新しく建造中とのことで、旧い小屋は取り壊されていた。この状態で、先に登って来た人たちは何処にいるのだろう。キョロキョロしていると、みんなが簡易休憩小屋(鉄骨の上にプレハブの小屋が建ったもの。工事現場によくおいてある)の方に行った。ついて行くとその中のいくつかは、資材置き場になっていたが、奥のタープが張られた小屋の中に、みんなが居た。雨天で来られないパーティーもあったが、3パーティー、計10人が集中できた。
 帰りは大倉尾根を下りる。竜ヶ馬場から日高を通って、大倉尾根を下りる。天気が良ければ富士山が見えることもあるとのことだが、もくもくと歩くだけだ。塔ノ岳から階段が多い。石を敷き詰めた傾斜の緩い坂が歩きにくい。疲労のためか、足も痛いが休憩を取らずに歩く。晴れていれば、楽しく下りることができるのに。大倉バスターミナルに到着したのは、バスが来る10分前だった。次のバスは、1時間後だ。休憩を取らないで良かった。汗と雨で体が濡れている。トイレで急いで着替えて、バスに飛び乗る。今回も怪我がなく、無事に帰ってくることができた。
 渋沢駅前の居酒屋いろはで慰労会をする。ビールが本当にうまい。これもみんなと行く山行の楽しみの1つ。この店は、三峰のなかでは有名で、みんなに慕われている店らしい。豆腐がおいしい。今回もお疲れ様でした。


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