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阿弥陀岳南稜・赤岳主稜
荻原 健一
峯川 正行

山行日 2005年1月8日~10日
メンバー (L)荻原、高木(敦)、峯川、天城、成田、高橋(俊)、小幡

(最初に・・・)
 最近、小幡組(組員詳細は不明)をはじめとして岩屋人口が増えていることから比較的敷居が低く且つ自分が行っていないルートとして上記の雪稜2ルートを例会で出すことにした。
 結果三峰の大型新人=峯川ほか、雪稜ルートでは新顔の面々も揃いめずらしくにぎやかな山行となった。
 但し縦走+αの「阿弥陀南稜」は全員が参加したものの、冬壁入門の「赤岳主稜」は結果的に荻原、小幡の2名になってしまい雪稜人口の増加という点では課題が残った。最近の山スキー組の勢いに負けぬよう冬のバリエーション組も頑張って行きたい。

【阿弥陀岳南稜:執筆 峯川】
 正月の南ア・仙丈岳に続き、雪山第2弾として阿弥陀岳南稜に参加することとした。ただ、赤岳主稜はまだ早いと思うので、阿弥陀岳南稜と硫黄岳のピストンとした。夏の八ヶ岳は入ったことがあったが冬の八ヶ岳は一度もない。私にとって冬の八ヶ岳は憧れであり、ここに行かなければ他の雪山には行ってはいけないのではないかと思っていた。
 「ムーンライト信州」で茅野に入り、ステーションビバーク。朝はタクシーで舟山十字路へ向かう。車がちらほらあり、幾つかのパーティーが入っているようであった。天候はもったいないくらいの快晴。お蔭様で立場岳への急登で暑くてしょうがなかった。雪はそれ程多くなく、ラッセルも無く、わかんはザックにかけたままである。3時間弱で立場岳に到着する。そのまま通過し立場岳から少し進んだあたりを幕営地とした。青い空に真っ白い権現岳、阿弥陀岳が見える絶好のポイントである。時刻は13時。有り余る時間は宴会へと流れていく。途中テントから出て心に沁みるような阿弥陀岳の写真を撮ったりして心地よい時間を過ごす。明日はいよいよあの南稜を登るのだなあと。
幕営地からの阿弥陀岳  9日は朝からガスっていた。幾分不安が募る。多少登り無名峰に到着し、いよいよここから雪稜登攀である。ハーネス、ヘルメット、アイゼンなどの装備を確認する。P1,P2を巻き気味で越えて行き、ピッケルを刺しながら一歩一歩慎重に進んでいく。生まれて初めての感触。んーこの緊張感。雪稜登攀はある意味心地がよい。いよいよ核心部であるP3への登攀の取付に到着する。ここは2ピッチ程でルンゼ状になって左から巻くような感じらしい。しかし、本当の核心はすぐ訪れたのである。
 目の前に長蛇の列。まさしく「阿弥陀岳小仏トンネル状態」。とにかく寒くてしょうがない。末端が冷え性の私はとにかく指先を動かしていた。結局1時間は待っただろうか。前のパーティーの動きが不穏だったので、リードの荻原さんがちょっと離れたところから取付き一気に登って行く。セカンドは俊介さんが行き、つるべでそのまま抜けていってしまう。私はフィックスザイルにプルージックで登っていくが、雪が新しいようでさらさらしてピッケルやアイゼンをさしてもなかなか刺さらない。先日、広沢寺でアイゼントレをしたおかげであまり気にしないで岩を踏みしめて登っていった。ただ、この縦走のザックをしょっての登攀はなかなかのものであった。フリーとアルパインの違いはここなのであろうか。高木さん、天城さん、成田さんもするする登っていく。P3に着くと阿弥陀岳頂上へはすぐである。この後はザイルも出さずに頂上へ到着。まったく視界がない極寒のなか、皆さんと握手を交わす。私はほっとしたのと達成感で興奮していた。お地蔵さんがあるらしいが、全く気づかなかった。あまりに寒いのですぐに下山開始。中岳沢は踏み跡があり雪崩の危険もなく行けそうだったので、尻餅をつきながら尻セードで一気に下り、13時半くらいに行者小屋へ。小屋は明日まで営業しているとのこと。ビールを赤岳鉱泉まで買いにいく手間が省けて感謝の一言でした。俊介さんが明日から出張とのことでこれから下山をするという。んーかわいそうー。ちょうどその頃、入れ替わりで小幡さんが美濃戸から到着。
 冬の八ヶ岳は半端でなく寒かったが、私にとって雪稜登攀はもっと踏み込んでいい世界かもしれない。

〈コースタイム〉
1/8 舟山十字路(8:10) → 立場岳(12:00) → 幕営地(2360m)(13:00)
1/9 幕営地(7:10) → 無名峰(2564m)(8:40) → P3取付(9:30~10:30) → 阿弥陀岳頂上(11:40~11:50) → 中岳のコル(12:20~12:40) → 行者小屋(13:30)

【硫黄岳ピストン:執筆 峯川】
強風が吹き抜ける硫黄岳にて  今日も朝からはっきりしない天気であるが、風はそれ程感じない。赤岳主稜メンバーを見送って、7時すぎに天城さんリーダーのもと出発。赤岳鉱泉を通過し、しばらく樹林帯をずんずん登っていく。とにかく人影が多いこと。やはり冬の八ヶ岳入門には硫黄岳が一番なのであろう。途中でアイゼンを履き、赤岩の頭へ着く。ここからは稜線に入るので目出帽が必須である。
 10時前に硫黄岳に到着する。昨年の夏に登った硫黄岳であったが、まったく世界が違う。ここには長居ができないので、記念写真を撮ってもらい一目散に下山。赤岩の頭付近でしばしの休憩。ちょうどこの頃視界がひらけ、景色が私にとっていい補給剤となった。やはり雪山はいいなあ。
 下山途中、赤岳鉱泉のアイスクライミングの人工壁を見学する。近い将来やってみたいなあと。11時半前に行者小屋へ到着。

〈コースタイム〉
1/10 行者小屋(7:00) → 赤岳鉱泉(7:45) → 赤岩の頭(9:00) → 硫黄岳山頂(9:30~9:40) → 赤岩の頭(10:00~10:20) → 赤岳鉱泉(11:00) → 行者小屋(11:30)

【赤岳主稜:執筆 荻原】
 3連休の人気ルートということで昨日の阿弥陀岳南稜に続き混雑が予想されたので、取付に着くころ明るくなるよう出発予定を6時とした。しかしながら今回も出発時間=予定時間+30分の三峰タイムのジンクスが破れず6:30出発となり硫黄組との合流(行者小屋12時)に一抹の不安を残す。
 まだ暗い中、懐電歩行で取付を目指す。行者小屋から約1時間で取付到着(取付は文三郎道より左へ5分程トラバースする)。先行パーティーは1パーティーのみ(ガイドパーティー)。ここからつるべで登攀開始。1P目は雪が多いと4級程度となるが、今回は雪も多くなく下を潜って行けたので簡単だった(多分3級+ぐらい)。2P目は出だしの数mが、ちょっといやらしいがホールド豊富で腕力で越えられる。3P~5Pは半分以上は歩いて行けるほど傾斜も緩く簡単。核心の6P目(トポ図だと7P目)も特段どこが核心だかわからなかったが、最後のチムニーで先行パーティーが渋滞しており右の垂壁から華麗に抜こうとしたところが意外に難しく苦戦した(結局抜けなかった・・・)。ルートは全部で8P(トポ図では9P)。終了点からはコンテで5分程で赤岳山頂に到着し終了する。行者小屋着も11:15と予定よりだいぶ早く、今回は迷惑かけずに一安心。
 今回スムーズに登攀出来たのは、2番目に取付けたこと(後続Pはかなり多かったようだ)、先行PがガイドPでルートファインディングが必要なかったことが大きな要因だろう。登攀レベルが低かったのと、ルーファイがなかった分、西高東低特有の西風が非常に強くそれなりに充実した雪稜登攀だった。

〈コースタイム〉
1/10 行者小屋(6:30) → 赤岳主稜取付(7:30) → 赤岳(10:30) → 行者小屋(11:15~13:00) → 美濃戸口(15:30)

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