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吾妻・山スキー
成田 義正

山行日 2005年2月26日~27日
メンバー (L)飯塚、佐藤、小堀、三澤、山沢、福間、成田

 スキーは私の数少ない趣味の一つで以前は毎週スキー場に通って楽しんでいたものだが、転勤してからはぐんとご無沙汰したままだ。理由は遠くて簡単に行けないのでだんだん億劫になってきたためだが、三峰に入って山スキーの話を聞いているうちにかなり面白そうに思え、俄然やる気になってきた。広い斜面にシュプールを描く写真を見ていると堪らなくなってきた。しかし山スキー用具が・・・何も無い。買うには高すぎる。ゲレンデ用ではダメかと聞くと一蹴され、どうすりゃ~いいんだ。
 そうしているうち、幸運なことに用具を貰える事になり、早速靴を買い「荷物を背負った滑り方」例会に申込んだら定員だと断られた。出鼻をくじかれ、次の初級日帰り例会に申込んだら、「今回は初心者が多いからどうかな」と暗に拒否の模様。ならばその次の例会に早めに申込むと「縦走だからな・・・」ある人は「日帰りを何回かこなしてからの方が・・・」と悲観的な返事。日帰り企画なんかこの先無いのだ。何とも心許ない状況に置かれ不安になっていたらちゃんとメンバーに入っていた。リーダーに感謝、感謝。ああ、申込むだけで大変な思いをした。参加者は7名、先週は11名。やはり山スキーは人気がある。

【一日目】
 前夜、日暮里に集合し那須高原SAに0時過ぎに着き、さくっと軽い宴会が次々出てくるおでんと酒で盛り上がる。翌朝、天気は曇りで雪が舞っている。福島西ICに8時に着き準備しながらタクシーを待つ。
 今回向かうルートは高湯温泉から高山、土湯温泉に抜けるルートだ。途中、吾妻小屋に泊るので荷は軽い。
 スキー場のゲストハウス脇でスキーを履き、3本リフトを乗り継いで上に向かうがリフト乗り場には誰も並んでいない。直ぐ乗れる状態でゲレンデも人はまばら。このスキー場だけだろうか他も同じだろうかと余分な事を考えてしまう。リフトを降りると先着の10名ほどがシールを付けている。我々はその後出発。トレースがバッチリ付いているし数十メートル置きに「2005冬 慶応山荘」の真新しい緑布が付いているので迷う心配が無い。森の中を快調に登り慶応山荘分岐付近で1本入れる。ここから傾斜がきつくなり出し木々も低くなって風が吹き付けてくる。稜線に出ると強風で雪が吹き飛び地面が見えている。眼下の五色沼は白く凍てついている。ここからトレースは無く、五色沼に下っている組や家形山の稜線を登る組といるが我々は火口壁をトラバースする。トラバースは雪が深くラッセルも大変なので一旦沼に下って先行組のトレースを登り返すことにする。一切経山の分岐を過ぎると西風が吹きすさみ、ガスも濃く視界が悪い。4,5m離れると霞んでしまう程なのでバラバラにならないようシールを付けたまま斜面を降る。ガスが切れだし周囲の地形が確認できたので酸が平避難小屋に一気に下る。眼下には吾妻小富士が火口を広げ、浄土平も見えている。シールを外しパウダースノーを切り裂きグングン下る。見た目に比して直ぐ浄土平に降り切る。登りに比べ何と滑降の短いことか。シールを付けて少し登り返して吾妻小屋に着く。暖かいストーブの傍のテーブルを陣取り早速飲み交わす。ランプに火を灯す小屋番は意外と若く、笑みを浮かべた物静かな人だ。登山客達は夕食が済むとストーブの周りに集まりだしスキー談義が始まる。明さんは自書の本をPRし、情報の仕入れも怠らない。地元の人が多いので知らないコースを紹介してくれる。消灯が有るのか無いのか9時過ぎても話が尽きないようなので先に寝る。暖かく清潔な布団でぐっすり寝てしまう。

【二日目】
 昨日シールを外す時きつ過ぎたので長さを調節しているうちに皆さん用意が終わっている。スキーを履くが用具が旧式に加えて扱いに慣れてないので時間がかかる。その度に皆さんを待たせて申し訳ない気持ちだ。最新式のスキーが羨ましい。
 東吾妻山を目指して出発する。一番の出発なのでトレースが無い。地図と磁石で方向を定めて歩くが、歩いた割に小屋から離れていない。スカイラインに出て東吾妻の取付きを探す。兎平から取付く予定だったが姥が平の方の小沢を詰めるらしく移動する。一向に高度が上がらないので適当な所から上がる。この季節なら道なんか関係なく雪さえあればテキトーに好きな方へ行けるのが山スキーの良い所だ。勿論、技術も必要だけれど。かれこれ1時間歩いたので休憩していたら後ろから付いて来た団体に抜かれた。昨夜のグループで我々を横目で見て力強くグイグイ登って行く。徐々に雪が深くなりラッセルがきつくなっていたからこのトレースはあり難い。樹林が低くなるにつれて緩やかな斜面が広がり山頂が見えてくる。しかし風が激しさを増してくる。山頂は更に吹き荒み、飛ばされてよろめきながら進む。かろうじて標識を確認出来ただけで展望なんかどうでも良く早々に下山する。風の来ない斜面で滑降準備。靴を滑降用にセットしようとしたらロックされたままになっている。道理で歩いている間、脛に甲皮が当って痛かった。出発に遅れては申し訳ないと急いだから外す事を忘れていたようだ。スキーを履き直して出ようとしたらビンディングが外れてやり直し。また待たせてしまった。スカイラインまで標高差400m。雪質は軽い。広い斜面は各自好きな様に滑り、樹林帯に入ると木々を縫うように滑る。案外短時間で鳥子平に着いてしまった。
 高山への登り、これがきつかった。急斜面ではないが喉が渇いて息が切れ遅れがち。1本とって欲しいなと思いながら付いて行くうちに電波反射板がいきなり現れる。もう登りはお仕舞い。降りるだけなので大休止。土湯まで標高差1400mのロングコース。
 雪質は東吾妻より少し重いがふかふかの新雪。「土湯・高山」と書いてある丸い標識を目印に思い思いのコースを滑る。見通しが良いから長めに滑れるのが楽しい。ほどなく樹林帯に入り樹林を縫いながら滑降する。地形が複雑になるがトレースが有るため助かる。休憩中の先行パーティにお礼を言って駆抜ける。ずっと樹林の中を滑降し林道手前で大休止。休憩なしに滑っていたので腿が張って痛い。今回は雪質が大変良く、皆さん気持ちよく滑っていたが自分はちょっと不満が残った。一口で言うならただひたすら下ったという思いだ。滑り方がゲレンデ用なので深雪のターンが出来ない。スキー先端が隠れて、雪の抵抗でターンが出来なかった時転倒するかもしれない不安が動作を鈍らせる。軽い雪なので思い切って蹴ってターンを試みれば出来たかもしれないと今になって後悔。ほとんど斜滑降・ボーゲンで滑ったため自分のスキーが出来なかったなと悔いが残る。
 それにしても長い下りだった。仕上げは土湯温泉・富士屋旅館の総檜木作りの自噴風呂「不老の湯」に入る。ここは大浴槽脇の階段を地下に下りると小さめの浴槽があり底の金属の穴から湧き出している。お湯は少し熱めの程好い温度。二つの分厚い檜木の浴槽が重厚な雰囲気をかもし出して中々いい風呂でした。

〈コースタイム〉
2月26日 吾妻スキー場上部出発(10:20) → 慶応小屋分岐(11:20~11:30) → 五色沼乗越(12:20) → 酸が平小屋(14:20~14:45) → 吾妻小屋(15:20)
2月27日 吾妻小屋(7:00) → 東吾妻(9:15~9:45) → 鳥子平(10:10) → 高山(11:00~11:20) → 土湯温泉(14:00)

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