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正月合宿 その2 仙丈岳
峯川 正行

山行日 2004年12月31日~2005年1月3日
メンバー (L)高木(敦)、前野、深谷、道祖土、峯川

 11月の、とある居酒屋での話の中で、高木さんから正月に南アでも行きましょうとのお誘い。正月合宿は剱岳早月尾根であり、私にはとうてい無理である。雪上訓練も12月にあるので、南アの仙丈岳は雪山1年生の私にとってもちょうどよい山行であると思った。その場で私は快諾し、前に座って楽しく飲んでいた深谷さんも参加表明。最終的に道祖土さん、前野さんも加え5名となる。
 当初29日の夜に出発の予定であったが、道祖土さんの仕事の関係で30日の夜に新宿から戸台に向かうこととなる。この日程のずれが私達に幸運をもたらすことになる。31日は東京でも大雪の予報であり戸台川を遡行し始めるとグレー色の空から雪が降り始める。夏はバスで一気に北沢峠へ到着できるが、冬季はこの河原歩きを含め7時間も費やす。アプローチが長いのこそ登山の楽しみの一つなのかと思いながら一面雪景色の河原を進んでいく。
 11時に丹渓山荘に到着。途中、鋸岳への取り付きもあり、いつかはあの難攻不落の鋸岳も行ってみたい。あとは2時間の登りの八丁坂である。大雪の中13時に北沢峠に到着。夏場とは全く違う喧噪に包まれていた。
 長衛小屋は30日から年明けの3日まで営業しているという。私達の日程にぴったりである。まずビールを小屋で買い込む。どうも今日の悪天で下山したパーティーが多いようで、ビールが余っているらしく10本買うと1本サービスしてくれた。嬉しいの一言。テントを設営してまずは到着の乾杯をする。こんな大晦日もいいもんだなあとラジオで紅白を聴きながらシュラフの中で眠りについた。ただ、マツケンサンバを聴けなかったのは無念。
 元旦、当初仙丈岳へのアタック予定であったが、雪は降っていないものの風がとても強い。翌日は天候が回復しそうなので明日をアタック日とし、仙水峠へのピストンのスノーハイクをすることに。時間があったので出発前に網でお餅を焼きお雑煮をおいしく頂く。仙水峠は風が抜けるとのことであり目出帽を初めて使用する。この目出帽の威力にはびっくりした。
 その夜のテントでの主役は「人生はラッセル男」道祖土さんであった。かつて学生の時に金沢でラッセルをしていたということで、誰が言ったか知れないが「人生はラッセル!」という素晴らしい?文言が出来、翌日のラッセルのメインは道祖土さんにお任せという事になる。
 2日はアタックには申し分ない天候となる。道祖土さんのおかげで1日ずれて本当にラッキーであった。6時に北沢峠を出発しトレースのついた樹林帯を進んでいく。途中朝焼けが目に入り振り返ると甲斐駒が白くそびえていた。大滝の頭を過ぎ稜線近くなると高木さん指示のもと目出帽の準備をする。稜線へ抜けると素晴らしい白銀の世界が広がっていた。雲も全くない申し分ない天候である。稜線では体がふらつくほど風が強かった。そして半端でなく寒い。この寒さは生まれて初めてかも知れない。途中、トレースが消え深い所があったので"ラッセル道祖土さん"にラッセルをしてもらっていると、小仙丈岳に到着。ここで初めて仙丈岳の姿が見えた。甲斐駒とは正反対の姿である。"女王"と呼ばれるにふさわしい、白銀の素晴らしい妖艶な姿であった。やはり雪山はいいなあと一人思いにふける。
白銀の仙丈岳  ここからは岩稜帯とのミックスであり、アイゼンとピッケルで注意して進む。これも私にとっていい経験である。11時半にようやく仙丈岳頂上に到着。まずは皆さんと握手を交わす。深谷さんは感動のあまり泣いている。私も感動し言葉を失ってしまう。それにしても360度大パノラマである。来週向かうであろう八ヶ岳もくっきり見え、夏に縦走した北岳、間ノ岳もすべて真っ白で綺麗であった。私は今まで単独であったので雪山には行けなかったが、この三峰へ入会してこうして素晴らしい雪山に自分の身を置くことが出来たのである。本当に入会してよかったとつくづく感じたのである。
 下山はやはり皆さん早い。スキーの様に滑りながら2時間程で北沢峠に着いた。
 今回の山行は私にとってはとても勉強になる山行でした。雪山の厳しさも経験できたし。とにかく、正月は山に来てよかった。寝正月ほどつまらない物はないので。
 今年はどんな山行が待ち受けているのか?本当に楽しみな一年になりそうです。

大パノラマの仙丈岳頂上にて
〈コースタイム〉
12/31 戸台口(7:20) → 白岩堰堤(8:20) → 丹渓山荘(10:20~10:40) → 北沢峠(13:30) → 長衛小屋幕営地(13:40)
1/1 幕営地(8:50) → 仙水小屋(9:30~9:40) → 仙水峠(10:30~10:40) → 幕営地(11:40)
1/2 幕営地(6:00) → 大滝の頭(8:20) → 小仙丈岳(9:30~9:40) → 仙丈岳(11:20~11:40) → 幕営地(14:00)
1/3 幕営地(7:00) → 丹渓山荘(8:30~8:50) → 戸台口(10:10)

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