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狩倉岳
金子 隆雄

山行日 2004年11月27日
メンバー (L)金子、三澤、土肥、鈴木(章)

 狩倉岳は両神山から南へ延びる梵天尾根から西に派生する狩倉尾根上にある。ちゃんとした登山道は無く不明瞭な踏み跡があるだけだ。どうってことないだろうと軽い気持ちで出かけたが、なかなかどうしてかなり手強いルートであった。
 26日夜に東所沢駅に集合して三澤車にて出発。滝沢ダム下流のループ橋の途中にある駐車場にて幕営。小雨が降り出していたが東屋の中にテントを張れたので濡れずに済んだ。ここの駐車場は時々利用するがいつも空いていてトイレもあり重宝している。
 27日、天気は快晴、いい一日になりそうだ。国道から中津川方面への入口は閉鎖されていて以前より少し先に新しい道ができていた。以前は川の右岸にあった道は左岸に付替えられていた。
 事前情報によると国道脇の下山地点は落石防止用の金網が張られて人が出入りできなくなっているとのことだ。私が持っている古いガイドブックにはそのようなことは書いていなかったが改訂されたガイドブックには記載されているようだ。通れないようなら下山ルートを変えなければならず予定が大幅に狂ってしまうので登山口へ行く前に確認しておくことにした。出合バス停近くの下山地点はすぐにわかった。確かに一面に金網が張られている。金属製の扉が設けられているが鍵がしっかりとかかっている。金網はかなり高く、よじ登って越えるのは危険だ。扉の下に少し隙間があるので潜り抜けられないか試してみる。三澤さんが代表で潜ってみると何とか抜けられたので、じゃ後の三人は試さなくても大丈夫だということで予定通りの下山ルートをとることにする。
 下山の心配もなくなったので登山口の長栄橋へと向うが、これがまたなかなか見つからない。トンネルを抜けた所に橋があったがこれは新長栄橋と書かれており長栄橋ではない。行ったり来たりを繰り返すが見つからない。地図をようく見てみると道が大きく蛇行している部分をバイパスするトンネルがあり、このトンネルを通って行ったり来たりしていたので見つからなかったのだ、間抜けな話だ。今は使われていない道へ車で入ったが途中土砂崩れで通行不能、Uターンもできずバックで戻り歩いて行くことにした。
 歩いてもほんのわずかの時間で長栄橋に着くことができる。橋の付近は少し広くなっていて2~3台なら駐車できる。新長栄橋の方からなら車でも入ることができる。なんだかんだでかなり時間をロスしてしまい登り始めがだいぶ遅くなってしまった。これが今日の行程に大きく影響してくるとはその時は思わなかった。
 出だしから沢沿いの道ではなくちょっとの間は尾根状の道を行く。このまま尾根を行くのかと思うとすぐに沢沿いに行くようになる。途中は伐採のため木の枝が沢を埋め尽くし踏み跡がわかりづらくなっているが、踏み跡はずっと右岸についているので構わず沢沿いを進んで行くとはっきりとした踏み跡が現れ1時間弱で二俣に到着した。ここには石舟という名の滑滝があるが離れた所から眺めて見る限りわざわざ見に行くほどのものでもなさそうだ。
 ルートは右俣にあり、出合すぐの滑滝は右岸より捲く。ほとんど水流のない沢は落ち葉で埋め尽くされ落ち葉のラッセルをしながら登って行く。もう踏み跡がどうのこうのと言う次元ではなくルートだろうと思われる所を大峠目指してガンガン登って行くしかない。結構な急登を登りきると梵天尾根上の大峠に飛び出す。ここからは梵天尾根上の一般登山道になるのでわかり易いが、ミヨシノ岩付近だけはちょっとわかり難い。東西から尾根が交差してきており、ルートも一旦梵天尾根から外れるので真っ直ぐ進むと石舟沢へと下っている尾根に引き込まれてしまいそうになる。
行く手に聳えるは狩倉槍  狩倉尾根との分岐となる大笹まで約4時間を要した。ここからルートを西に変え核心部の狩倉尾根へと歩を進める。少し行った1683mピークで視界が開け、鋭く聳える狩倉槍やその手前の岩稜帯が一望できる。あの槍のどこに登路があるのだろうか。狩倉槍までは横八丁と呼ばれる岩稜帯が続く。岩稜帯が切れ落ちて尾根通しに進めなくなった場合は北側の斜面に降りて藪をこげばザイルを使用することもない。南側は概ね切れ落ちているので通ることはできない。
 アップダウンを繰り返し狩倉槍の広くなった基部に着く。遠くから見た時は険悪そうに見えた狩倉槍だが登路となる東西は樹林帯のため急ではあるが何も問題はない。狩倉槍のピークは今回のルート中で唯一にして最高の展望台である。天気も良くしばし眺望を楽しむ。
唯一最高の展望台、狩倉槍にて  狩倉岳へは一旦大きく下降してから急登を登り返す。狩倉岳のピークは樹林に囲まれて展望はゼロである。核心部の岩稜帯は終わっているので気分は少し楽になっているが先はまだまだ長い。長居してもしかたないので次のアンテナのあるピークを目指す。それらしきピークには着いたがどこにアンテナがあるのかは確認できなかった。
 このピークからは下る一方となるがある意味この先が最も厄介だったと言える。出だしは緩く気持ちのいい尾根が続いていたがそのうちに恐ろしく急な下降が延々と続くようになる。木につかまりながら滑り落ちるように下降して行く。急下降から開放されると小岩峰がでてきて左の沢状へ下ってトラバースして尾根に戻る。この頃になると私の足も限界に近づきつつありかなり痛むようになってきて遅れがちになる。たいして重い荷物でもないのだが皆に少しずつ持ってもらい少し楽になる。
 晩秋のこの頃は日が暮れるのが早い。既に辺りは薄暗くなってきており早く降りなければ真っ暗になってしまう。そんな焦りからかルートを外してしまう。左に分かれる踏み跡を見過ごしてしまい行き詰って右往左往する。戻って分岐から左のしっかりした踏み跡を辿る。既に辺りは真っ暗で懐電歩行となる。しばらくははっきりしていた踏み跡もすぐに不明瞭となりまたもや右往左往しながら踏み跡を捜し求めることになる。ついに見つけることができず方角を定めて適当に下って行くことにする。車道の灯りが見えているので近くまで来ているはずなのだが真っ直ぐは降りられず尾根の末端と思われる所を左にトラバース気味に行くと遠くに橋が見えてきた。あの橋はなんだろう?と思いながら松林の中をとにかく下って行く。どうも左に寄り過ぎているような気がしたので今度は右にトラバースしていくと大量のゴミが散乱している場所にでた。先頭を歩いていた三澤さんは、「ゴミを下から投げ上げるやつはいない、上に何かあるんだろう」と言って登って行くと廃屋に行き当たった。廃屋とは言え家があるからにはそこに続く道があるはずだと探してみるとしっかりとした道があった。やれやれ、しかし夜の廃屋は不気味だ。この道を辿ると出発前に確認しておいた場所にでることができ、扉の下を潜り抜けて車道にでることができた。
 いやーまったくとんだハイキングになったもんだ。危うく新たなビバーク伝説を一つ増やしてしまうところだった。

 後日、三澤さんからGPSのデータを地図上にプロットしたものが送られてきた。それを見ると我々の迷走ぶりが実によく表れていて面白い。GPSがあったのなら迷うことなかったじゃないかと思うだろうが肝心の場所で電波が拾えず役に立たなかったのでした。

GPS軌跡

〈コースタイム〉
長栄橋(8:05) → 石舟沢二又(8:55) → 大峠(10:40) → 大笹(12:00) → 狩倉槍(13:45) → 狩倉岳(14:35) → アンテナピーク(15:30) → 車道(18:30)


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