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榛名天狗山
服部 寛之

山行日 2005年3月13日
メンバー (L)服部、西尾、前野、石川、内山、(青木)

 何年か前から榛名の峰詣でをつづけているが、今回の榛名天狗山もその一環として計画したものである。これまで登ったのは、榛名湖を取り巻いている中心部の峰々であったが、榛名天狗山はその外周を形成する峰のひとつで、榛名山全体では南西部に位置している。山名に「天狗」とつくところがいやに登高意欲をそそる山である(と思うのはオレだけか?)。登山口が有名な榛名神社であるところも、天狗との由緒正しき歴史を感じさせ、たいへん好ましい。
 当日の朝6時半に練馬高野台駅に集合してクルマで行く。関越道を高崎で降り、西へ榛名神社を目指す。神社の参道手前の無料駐車場にクルマをとめ、神社の入口へ行くと、立派な山門の右手の道に天狗山への標識がでていた。参道に雪はなかったが、その標識の先からは雪が大量に残っていた。景色はまだしっかり冬だ。だが道にはしっかりと踏み固められたトレースがバッチリついている。ということは、雪の時期でも結構登られている山らしい。
 素直にトレースを辿る。トレースは林道から山道に入り、徐々に傾斜を増しながら、最後は突き上げるようにして稜線にでた。稜線手前には親切に細いフィックスが張ってあった。稜線を左へ(東へ)ゆく。トレースは葉を落とした林の中をめぐり、やがて大きく右にカーブしてゆく地形の前方に目指す峰らしきものが姿を現した。駐車場から頂上まで1時間半ほどだ。
榛名天狗山山頂にて  山頂の標識は大きな岩と岩とにはさまれた狭い場所に立っていた。皆でその岩に乗ったところを証拠写真に撮る。うちらの他に誰もいないことでもあるし、しばらく休むことにして、わたくしはひとり山頂の百メートルくらい南側にある展望地に行ってみる。山頂は全体に大きな岩が多い。展望地も岩だらけ。切り立った懸崖の端っこの大きな岩に乗ると展望がよろしい。が、スリルも超よろしい。回復兆しの青空の下、取り残された雲が低く流れる眼下には、榛名町周辺の山里が茫洋とした関東平野の広がりへとつながり、遥か西には軽井沢や妙義方面の稜線が上下動を描いてつづいている。中規模程度に雄大。北側を見ると双耳峰である天狗山の片割れ、西峰がスカスカの林の衣を着てまぁるく視界を遮っている。その右側には本峰山頂の大岩が木々の間に見え隠れしていて、双眼鏡で覗くと岩陰で皆熱心に食事に取り組んでいるのであった。花より団子、景色より弁当といったところか。さっそくわたくしも空腹を覚え、小さな社の横でザックからジャムパンを引っ張り出してかじる。続いてカレーパンに取り組んでいると、内山さんを筆頭に空腹処理顔のメンメンがやってきた。
 山頂に戻ってゆくと、山頂標識の手前の大岩上に天狗様のお姿が見えるではないか。山頂に背を向け直立して関東平野を睨んでいらっしゃる。「こんなところにおいででしたか」と下からよく見ると、イカツイ顔して石のように固まっておいでだ。イシの固さを体現しておられるのだ。そのうしろでは、標識の前で青木さんが依然としてお弁当に取り組んでいた。青木さんはわたくしの前職場の同僚である。そろそろ下山しようかと思って声をかけたのだが、しかし彼女もイシは固くマイペースを貫くタイプである。あわてる素振りはみじんもない。・・・黙して待つ。そのうしろの岩陰では、前野さんが「締め方を忘れちゃって」と奥さんの一本締めアイゼンの装着に楽しそうに四苦八苦しておられた。持ってさえ行けばどうにかなる、とはA型の人間ならあまり考えないが、お二人はB型とO型なのだ。・・・まっいいか。
 出発し、山を下りる前に西峰にも行ってみる。雪のトレースはあまり踏まれていない。山頂は樹林の中だが風が通って寒いのですぐに去る。
 順調に下って、先ほどの突き上げるようにして稜線に出たところに来た。下山は右へ降りるが、直進鏡台山とある。せっかくなので行ってみる。10分ほどで着いたが、山頂は樹林がなく開けていて、なかなかの展望である。谷を隔てた正面に先ほどの西峰が立っている。来た甲斐のある景色である。
鏡台山から見た天狗山西峰  そこからはアイゼンを効かせながら30~40分程で榛名神社入口まで下りた。あらためて神社の案内看板を見ると、歴史も境内も奥が深そうである。時間もあることだし、せっかくなので奥の本殿まで行ってみる。凍てついた沢を右手に見下ろしながら、苔むした石の参道を辿る。霊験あらたかな雰囲気。寄進者の名前を刻んだ石柱が両脇に際限なく並んでいる。最後に小高い石段を登り切ると、立派な本殿が現われた。本殿のうしろには、ご神体なのか、見上げるような高さの垂直な岩の柱が立っている。御姿岩というらしい。その上の方には誰がどうやって付けたのか、白い紙片が飾られていた。歴史を感じさせる本殿と圧倒的迫力のにょっきり岩との組み合わせはちょっとシュールな風景だ。
 尚、神社内の案内図にも出ていたが、この神社から榛名山(氷室山)へと山道が延びている。ハイキングマップにも記されているが、昔からの登拝路なのかも知れないと思うとちょっと興味が湧く。昔、天狗も歩いたろう。
 参道脇につづく寄進者名の中に青木さんが有名人の名前を見つけたとかで、帰りに皆でもう一度それを探す。『エノケンこと榎本健一』なつかしか~。枕詞付きのところがまたいい。
榛名神社社殿  帰路のお楽しみの温泉は、神社から少し南へ戻ったところのハルナ温泉なる素朴な構えの一軒宿に寄る。どんな風呂だったか、三月もたった今となっては殆ど覚えていない。駐車場と休憩室の様子は覚えているのだが・・・。  スキー渋滞の関越道経由で練馬高野台駅に戻って解散。お疲れさまでした。


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