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浦山川冠岩沢
金子 隆雄

山行日 2005年5月29日
メンバー (L)金子、佐藤、高木(敦)、高橋(俊)、別所

 2回目の足の手術が4月に終り、今回は本格的に山へ復帰できるかどうか試すための山行でもあった。長い距離を歩くのはまだまだ不安があるので距離の短い日帰りの沢を計画した。
 前夜に佐藤、高木、別所、金子の4名が東所沢に集合し車で現地へ向う。私は近いので当日の朝出発でも余裕があるのだが他のメンバーはそうもいかないので前夜発とした。シュンスケ君と山崎さんは前夜に出られないということなので当日の朝に現地で落ち合うことにしていた(山崎さんは結局参加することができなかった)。高速は使わずに299号をひた走り、浦山口の手前で県道73号に入る。国道より立派な道だ。浦山ダムの駐車場に車を停めて仮眠&宴会のため幕営しようと車を降りる。時刻は丁度午前0時だった。だが、なにやら怪しげな雰囲気。我々の到着と前後して暴走族風(いかにもというような格好はしていないが)の若者達がやってきた。考え過ぎかも知れないがこれからどんどん集まってこられたら堪らないのでこの場所は諦めて移動することにした。
 県道から冠岩集落へ入る分岐の冠岩橋から少し先の路肩に広くなった場所があったのでそこに幕営する。寝る前のちょっと一杯の積りが明日の朝はゆっくりなのでついつい・・・、別所さん最後に泡盛を取り出しとどめをさされる。
 翌日の天気はまあまあで暑くもなく寒くもないほど良いコンディションだ。撤収してすぐに冠岩へ向う。冠岩への道には通行止めの看板があったが、車は入れるので車で入る。舗装が終ると間もなく行き止まりで橋の手前に3台程駐車できるスペースがある。ゆっくり朝飯を食べながらシュンスケ君達を待つがなかなか到着しない。様子を見に行こうかと思っていたところへシュンスケ君が歩いてやって来た。冠岩橋で先へは入れないだろうと思って我々を待っていたとのことだった。山崎さんが居ないので聞くと昨夜帰りが遅く朝起きられなかったとのことで戦線離脱。
 そんなこんなで出発がだいぶ遅くなってしまったが9:50に出発した。すぐに、今は廃村となってしまった冠岩の集落に着く。3軒ほど家があり完全に朽ちて潰れてしまった家もある。山仕事に来ていた人が居たのでちょっと話を聞いてみる。この沢には埼玉一のブナの巨木があると言う。初耳だがそれを見られたらちょっと儲けた気分になれるだろう。
 ちょっとの間仕事道を辿り、堰堤をいくつか過ぎた所から沢へと降りる。水量は少ない沢のようだ。早速現れる5m滝は登るには腰位まで水に浸からないとならないのでパスして左岸を捲く。ボサが被さり鬱陶しくなってくるので左の山路に上がって避ける。沢に戻って小滝を越えて行くとワサビ田跡が出てくる。打ち捨てられてから長い年月が経っているのか、それと判るのは有刺鉄線の残骸だけだ。20年以上前の古い溯行図によればこの少し先の左岸に50mほどの岩峰があり冠岩という名前がついている。これが集落の名前や沢名になったと想像できるが定かではない。今はもう無いのか、あるいは見過ごしただけなのかは判然としないがこの岩峰を確認することはできなかった。
 3段8m滝を越えるとこの沢の核心部とも言える2段15m滝に着く。右も左も捲くのは嫌らしそうなので直登することにする。ルートは水流のすぐ左にあり残置のピトンもあるが私はトップはやらない(というかやる自信がない)。シュンスケ君にザイルを引いて登ってもらい全員後に続く。下流部は杉の植林帯だったがこの辺りまで来ると広葉樹の自然林に変っている。
2段15m滝の上にて  2段15m滝の上からも滝が続くが快適に越えて行く。再びワサビ田跡が出てきてその先はちょっとしたゴルジュとなっている。ゴルジュを過ぎるとこの沢で最大の25m滝が目の前に現れる。水量が少ないのでスダレ状の滝になっている。この滝は登れるそうだが傾斜も強くヌルヌルしているのでとてもそんな気にはなれない。捲きは左岸だが滝のすぐ手前のルンゼは上部が悪そうなので更にその手前から登って小尾根に出てヤブの中をトラバースして沢床に降り立つ。降り立って上を見上げるとブナの巨木が目に入る。これが例の埼玉一かと近くへ行ってみる。埼玉一が本当かどうかはわからないが半端じゃなく太い。何本かの木が癒着して太くなったようにも見えるし樹齢もそんなにいってないように見える。枝がまたとてつもなく太く普通に見られるブナの幹ほどもある。自重に耐え切れなくなったのか折れて転がっている枝が何本もあった。この木をバックに写真を撮る。 埼玉一と言われるブナの巨木  最後の7m滝を越えると二俣となる。開けて明るい渓相になってくる。二俣から10分も行くと早くも源頭の様相で水も涸れそうだ。ここで水を補給して登山道を目指して右の斜面に取り付く。急ではあるがそれほど長い距離ではない。やがて登山道と平行に走る踏み跡に出て、お疲れさまということでビールの回し飲み(うー、旨い)。
 明さんは大持山まで往復してくると言って出掛けたが、他のメンバーは、沢屋たるもの山のピークなぞ踏んではいけない、とでも言うがごとく動こうとはしない。明さんは30分ほどで戻ってきて下山にかかる。しばらく踏み跡を辿るが歩き辛いので直上して登山道に出る。登山道は5人ほどが並んで歩けるほどの広くて立派な道だ。鳥首峠まではこんな感じの道でハイキング気分でのんびりと歩ける。鳥首峠から冠岩までも道はしっかりしている。
 冠岩沢は短く水量も少なくスッキリしているとは言いがたい沢ではあるが、それなりに楽しめたのではないかと思う。

ヒイラギソウというそうです

〈コースタイム〉
出発(9:50) → 二俣(12:30) → 稜線(13:20) → 鳥首峠(14:40) → 駐車場所(15:20)


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