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越沢バットレス(岩トレ)
坪松 聖幸

山行日 2005年5月15日
メンバー (L)小幡、藤井、峯川、道祖土、深谷、坪松

 前回の広沢寺で岩登りを経験し興味を持った自分は、足手まといになるなと思いつつも、今回の山行に参加させて頂く事にした。前日に寮でハーネスを身に着け靴紐をロープがわりにしてエイト環、ATCの使い方を復習し、8の字結び、マスト結び等を何回か繰り返して練習する。これで明日の準備は、万全?だと思ったので早めに寝る。
 翌日、4時半に起床し、鳩ノ巣駅に向かう。奥多摩方面には、御岳山や御前山には行ったことがあったが、岩登りをする場所があるのは知らなかった。やっぱり三峰に入らなければ、こんな経験はできなかっただろう。8時半に集合し、越沢バットレスに向かい前進する。広沢寺の岩場より傾斜が強く、見た目にも恐ろしく見えるが、いま自分が出来る限りのことをして登ってみようと思った。
 また小幡さんにリードして頂き、小幡さん深谷さん、そして自分と3人で登る事になる。峯川さんと道祖土さんは、ツルベで登るそうだ。小幡さんが最初に登り始め、深谷さんが確保をする。二人のとても頼もしい姿をみて、いつの日にか自分もこの二人のようになりたいと思い、もっと色々な事を学ぼうと俄然やる気が出てきたが、やっぱり自分が登る番になると恐怖の為か思うように体が動かなくなる。少し登った所でルートが二つあり、左右どちらにいけば良いか迷ったが、左の方が近かったのでそちらを選んだ。しかし、足場がなく、ホールドも小さく足が滑り、心臓がバクバクする。変な汗が出てきて、動きが止まってしまう。下から右の方に行くように言われ慎重に体を右に移動し、登る場所を変え上の方をよく見るとガバがあり、それをつかんで力と勢いで一気に体を上に伸し上げた。息を切らしながら登り、セルフビレイを取りほっと一息つく。やっぱりとてもおっかないが、登れた事がうれしい。しかしこのままでは、先が思いやられる。もっと周りをよく観察しなければだめだ。三番手の深谷さんが軽々と登られ最初のピッチが終了。下のほうでは、峯川さんがトップとなって黙々と登っている姿が見えた。他の人から見て自分の登り方は、一体どのようにみられているのだろうか。ちょっと気になる。
 次のピッチでは、順番待ちの間に深谷さんからカチ持ち、足の置き方をアドバイスして頂く。この間もそうだったが自分は、何も考えず力任せに岩を登っているだけで、どのように登れば効率が良いかなど、何一つも考えていない。落ちるのが怖いので岩にしがみついているだけだ。もう首から下だけでやっていける時代じゃない。頭を使わなければ・・・。なんとも情けなく思って、次は、足で登る事を意識し岩にしがみついてよじ登り始めた。足、足と頭の中で考えるのだが、足を置く場所が小さく、ここの足場に体重を掛けても大丈夫だろうかと不安になる。息が切れ、心臓が高鳴る。早く登ってこの緊張感から抜け出したい。ガバがあれば力で登れるのだが、ちっちゃいホールドばかりで力が入れにくい。登りの最後のほうにクラックがあり手足を突っ込み、ここを登れば最後だと無我夢中で登る。腕は、パンパンになり足の筋が疲れたが、そこを登り終えた後の達成感と言うか、なんともいえない充実感がとても心地よい。でも、あんまり頭で考えられなかった・・・。全員無事に登り終えて懸垂下降で下まで降りる。
 もう一度、最初に登ったルートから始まったのだが、先程同様に左右に別れるルートの所でまた左側を選び、足が滑って落ちてしまった。上からロープで確保されているので落ちたと言うより滑っただけなのだが、落ちた自分自身に腹が立ち、ちゃんと登れないことがとても悔しかった。少し膝を擦りむいてしまい、チキショーと自分自身に怒りながら再び登り始める。自分自身への怒りの方が恐怖心より強かったようで、体がすんなりと動き、そのおかげで先程より早く登れてしまったが、もう絶対落ちないように登ろうと強く思う。次は、スラブを越えて上まで抜けるルートで、岩がツルツルしていてとても登りづらそうに見える。でも登るしかない。小幡さんが登ったルートを忠実にたどり、足に体重をかけ周りを見ながら、足場やホールドを探して登っていく。途中どうやって登ろうかと迷う所があり、立ち止まってしまい腕の力を消耗し、足が震えてくる。右へ横移動して登ると、スラブが近づいてくるのが見え、緊張感で体が引き締まる。思い切ってスラブに手を伸ばすのだが、とても岩がつかみにくく、次に片足を掛けたが重心を足に掛けられない。一端立ち止まり、どうやって登ろうかと考えたが、うまい考えが浮かばなかったので、上にあったヌンチャクを持ち、体を一気に引き上げしっかりした足場のある所まで登る。後で深谷さんから聞いたのだがアンダーホールドがあったらしく、それに気づいていればもしかしたら少し楽に登れたかもしれない。何だかんだでスラブになっている場所を登り、最後のピッチに取り掛かる。最後は、歩いて行ける所だったので、先行させてもらい頂上まで到着し少し休憩する。眺めがとても良い。気分は最高だったが、懸垂下降の順番待ちの間に突然雨が降り出し、一気に盛り下がる。ずぶ濡れになるのを覚悟したが、小幡さんが下降中に雨がぴたりと止んで、有難い事に幸運にも自分と深谷さんは、濡れずに下降することが出来ました。
 下に降りると、峯川さん、道祖土さんも雨の為に途中で登るのを中止して降りてきたとの事で、編成を取り直し小幡さん、峯川さん、道祖土さんの3人で再び上までのルートを登ることになるが、悲しい事にまた雨が降り出してしまい、残念ながら途中で断念となる。3人が降りると、天候が回復し、お天道様が顔をだしてくる。最後は、お天気に振り回された一日となりました。


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