トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ319号目次

遭難対策 ビバーク訓練・三峯神社参拝
斉藤 篤人
山行日2005年10月1日~2日
メンバー(L)小堀、原口、田中(恵)、三澤、佐藤+息子、道祖土、峯川、斉藤(篤)

(参拝組)箭内、小幡、西尾、福間、広瀬夫妻

 三峰山岳会に入会して初めての例会で少々緊張気味。山登りをはじめて5年目になるが、これだけの大人数で山に入るのは初めてで、賑やかな山行になりそうだ。ああそうだ遭難訓練だったっけ。気を引き締めていかないと。
 奥多摩駅からのバスに揺られながら30分程で東日原到着。天気は快晴。10月だというのに10分と歩かないうちに汗ばむくらいの陽気だ。佐藤家は息子さんと2人で参加。息子さんは聞けば中学生だ。僕もこのくらいの頃から山を知っていたらな~。日原鍾乳洞に入る手前で、遅れていた原口さんがタクシーで合流。ようやく全員集合だ。少し歩くと鍾乳洞近くの神社に到着。神社を左手にやり過ごし登山道入口に到着。さあいよいよスタートだ。
 登り始めて2分もたたず、リーダーの小堀さんから「ところでさ。今回の原稿どうする。初回だし斉藤さんでいいよね。」との提言。みんな賛成の声。全く考えていなかった状況だ。登ることにだけ集中すればいいと思っていた山行だったが、急遽頭を切り替えなければならず、文章が苦手な僕にとっては少しブルーな気分。まあ後のことは後で考えよう。
 5万分の1の地図で赤線の入っていない登山道。かなり険しいのでは?と思っていたのだが、かなり整備されていて非常に歩きやすい印象だ。どんどん高度を稼いでいき500mくらい登ったところで、小休止。その後しばらくだらだらと登りが続き、ミズナラの巨樹に到着。見事な巨樹だ。巨樹の周辺の木々は枯れており、巨樹の生命力の範囲内は他の生命の存在を許さないかのごとく堂々としている。う~ん、一見の価値あり。
人形山のミズナラの巨樹  ここからは登山道も不明瞭になり、いよいよ核心部。小堀さんから「読図の訓練を開始しよう」との声がかかり、2.5万図とコンパス片手に方向を定めながら進んでいく。峯川さんがGPSを片手に先頭を歩く。みんな慣れたもので、特に道に迷うこともなく進んでいく。この人たちが遭難することはあるのだろうか?そんな疑問を持ちながらコンパスを見ながら進む自分も一端のヤマ家になった気分に浸る。しばらく歩くと尾根沿いの道に出て、道に迷う心配もなくなった。尾根沿いの道は何年か前まではヤブが多く歩きにくかったらしいが、今ではヤブは枯れていて歩きやすい明るい道となっていた。途中きのこを採りながら進む。三澤さんに食べられるきのこを聞きながら、ビニール袋を膨らませていく。今夜はキノコ鍋だ。僕はキノコが大好物だ。天然キノコが食べられるなんて幸福この上ない。そんな想像をしている時に、小堀さんより遭難ビバークのポイントの講義が始まる。
 遭難ビバークのポイントは(1)遭難したら慌てず、動き回らずビバークの覚悟を決める。(2)体力が残っている内にビバークの準備に入る。(3)暗くなる前にビバーク場所を確保するとのことだ、果たして1人で遭難した場合落ち着いて行動できるものだろうか?今回の訓練が役に立ってくれることを祈る。
 緩急交互の道を繰り返しいよいよ峯川さんがずっと楽しみにしていたウトウノ頭へ到着。山頂には得体の知れない鳥の標札が、まるで八咫烏(やたがらす)だ。何とも言えない絵柄だ。誰が書いたのか?なんでも奥多摩のシンボルの1つらしい。ありがたい。みんなで記念写真。パシャ。
趣のある山名板があるウトウの頭にて  午後15時を過ぎた頃長沢背稜の分岐に着く。小休止の後、時間も時間であり長沢山方面にビバークポイントを探すことに。小一時間後水松山を過ぎたあたりで平らな広い窪地を発見。風も受けにくい地形で、ビバーク地に最適だ。早速ツエルトの設営開始。僕は小堀さんとチームを組み、2人で設営。本日は簡易テント型での設営だ。テント場以外での設営は初めてで、少しワクワクした。設営後焚き木をかき集め、焚き火開始。同時に食事(宴会?)の準備だ。田中さんのご好意により、豆腐、豚肉を使った鍋料理がメニューに加わった。きのこも入り山の中とは思えない豪勢な食事となった。お酒もそこそこ。明日は早朝出発であり、21時にはみんな就寝。夜になっても気温は下がらず、暖かい夜となった。鹿の鳴き声も遠くに聞こえる。明日も晴天を期待します。
ビバーク地にてツェルト設営  明朝4時頃起床。外は真っ暗。12時30分三峰神社参拝の予約をしており、朝食もそこそこに明るくなるのを待って出発。今日もいい天気だ。長沢背稜はとても静かな道でなんだか落ち着く。奥多摩にもまだまだ素晴らしい道は残されているのだとちょっとうれしい気持ちになった。芋ノ木ドッケまではハイカー1人にあったくらいで誰にも荒らされないさわやかな朝の風に吹かれながら気持ちよく歩いた。
 芋ノ木ドッケを過ぎると雲取山からのハイカー達が賑わう主要登山道に出る。ここからは歩きやすい道で、あと3時間程で三峰神社だ。途中白岩小屋で小堀さんがビールでお清め。昨日あれだけ飲んだのにまだ飲むのか、さすが委員長。前白岩山では富士山が。何度見ても美しい。最後のピークである霧藻ヶ峰を過ぎ、一気に高度を下げ下山。11時40分頃三峰神社へ到着。神社前では参拝組が我々の到着を遅しと待ちわびていた。参拝前に神社隣の興雲閣の温泉で体を清め、三峰神社にて参拝。小堀委員長の行動に合わせ2礼2拍手1礼。「どうか今年の山行が無事に行なわれますように」
 参拝後は見通しの良いベンチで小宴会。西尾さんの〆張鶴をはじめとした差し入れもあり、大いに盛り上がりながらみんなでお清め? そんなこんなで僕の初めての山行&遭難訓練は終了した。ビバーク、焚き火、キノコ等々今回の山行だけでもたくさんのことを学ぶことができ、とても充実した山旅となった。自分が知らない知識を吸収できる点だけでなく、みんなと同じ思い出を共有できる点が山岳会の醍醐味だ。今回の山行は僕にとって記憶に残るものとなるだろう。

〈コースタイム〉
10月1日 東日原出発(9:00) → 燕岩先登山口(9:50) → 一石山(10:40~10:50) → 人形山ミズナラ巨樹(11:20) → 金袋山(12:00~12:30) → ウトウノ頭(13:40) → 長沢背稜縦走路(15:10~30) → 水松山西側鞍部ビバークサイト(16:00)
10月2日 ビバークサイト(5:30) → 長沢山(5:50) → 芋ノ木ドッケ(7:30~7:50) → 白岩山(8:10) → 白岩小屋(8:40~8:50) → 霧藻ヶ峰(10:30) → 三峰神社(11:40)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ319号目次