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北アルプス主脈縦断路・結びの縦走
別所 進三郎

山行日 2003年9月23日~25日
メンバー (L)別所

 出発前日のルームの帰り道で、委員長にジャンダルムを縦走予定と伝えたら、"気つけて下さい"と私の目を正面に見据えて2回言われた。私の身を案じての言葉である。
 帰りの電車の中で"気をつけて"に対し対応を考えた。結果として、今回はヘルメットを着用することにした。そしてもし、3回言われたら"止したほうが良い"と、取るべきかもと考えたりした。
 上高地でバスを下り、"飲料水"と看板のある水道口から水筒に水を入れて6:55分出発した。東京は台風の影響もあって雨だろうけど此方は晴れで、吊り尾根を拝み見ての登路を行く。
吊り尾根を背にして  岳沢ヒュッテでは350円のりんごを齧りながら、屏風のようそそり立っている西穂-天狗-奥穂-前穂-明神を見回す。少し紅葉した西穂方面の岩稜に日があたって美しい。
 階段や鎖を伝って、岳沢パノラマと白ペンキで岩に書いてある展望所に着くと、雲上に乗鞍、手前に焼岳と視界が広がり見事である。しかし目を下方に移すと、登ってきた道が直下に見え、落石を起こしたら大変なことになると感じた。
 紀美子平で大休憩をし、奥穂高に15:00に着く。明日のジャンダルム方面はガスって見えず、早々に穂高岳山荘キャンプ場に向った。

奥穂に朝日が  9月24日6:07、出だしのハシゴでは順番待ちして、奥穂に向う。
 西穂への縦走路に入ると、いきなり両側がスパッと切れているリッジが出てきた。重いザックに振られない様、慎重にクライムダウンする。ジャンダルムの登りは残置シュリンゲのある正面のルートを取らず、ペンキマークに沿って、左に回り込み小鞍部から斜上する。
 7:30標高3,163mのジャンダルム頂上に到達した。槍-野口五郎-水晶-三俣蓮華-黒部五郎-笠 と大好きなアルプスのパノラマを満喫する。

ジャンダルムを背にしてジャンダルム頂上からの槍

登山者模様
(1)天狗のコルまでの道のりでは、所々出てくる悪場を落ち着いて対応してゆく。同じルートを縦走しているカップル(彼女方は無帽)がいて、彼らが時々、私の真下を昇降する場面が出てくるので、落石しないか気を使った。声をかけると"自分たちは初心者なので先行って下さい"と道を開けてもらった。
(2)天狗への登り口の鎖場付近では、今日西穂山荘を出発してきたパーティー4組とすれ違った。10:30頃だった。その中で3名の高年女性のパーティーはヘルメット、手袋そして小さいザックがカチッと決まっていた。このコースを習熟して挑んできた様子が読み取れた。
(3)そこから1時間強で間ノ岳頂上に出ると、重そうなザックを投げ出しているオジサンが居た。私と同じ、テント泊の単独行者であった。奥穂へは先がありますねと言ったら、"このコースは最初で最後になるんで、少しずつ行くしかありませんよ"と、覚悟して臨んでいる気持ちが伝わってきた。
(4)赤岩岳山頂で西穂からきた高年夫婦は"昔このコースをやったことがあり、間ノ岳まで行くつもりだったが、家内が鎖場でフウフウ言うのでここから引き返します"と旦那が話してくれた。しかし西穂への急登では、"俺はゆっくり行くから、先いっていてくれ"と奥さんに言っている声が聞こえた。後で、西穂山頂で再会したとき、旦那は投げやり的に"気力充実、体力ボロボロ"と迷句をはいた。
(5)昨日の紀美子平で、若い二人組みの縦走者がガスコンロを使ってインスタント物を作って昼食を摂っていた。食事を終えると散らかった荷物を片端からザックに突っ込みパッキングした。ザックに入れる順序は関係ないらしい。新しいタイプのザックで、どう入れてもバランスが取れるようになっている様だ。私のザックは荷物を出したら、ただの布袋のようになってしまうので、荷入れには重さと順序に気を使うが、彼らの場合は必要ないのだろう。小屋泊まり山行みたいであったが、私のザックの1.5倍ぐらいの大きさだった。

 さて、苦行山行も西穂高岳に近付くと、例会の西穂隊と会えるのではないかとの思いが強くなり、楽しい思いがこみ上げてきた。霧の中、西穂手前のピークでMOOTOOコールを掛けると、モートーが帰ってきた。最後の上りを微笑みながら登り、12:53山頂で小堀さん、西尾さん、平さん達と握手した。小堀さんが差し出してくれたビールを一気に飲んだ。旨かった。
西穂で会えた  西穂からは皆さんと会えたからか、疲労が表出した感じで、足元も覚束なくなりつつ下る。途中でザックを西尾さんに担いでもらって、西穂山荘キャンプサイトに15:10到着した。
 サイトでは田原、野口、前野、石川面々の歓迎に遇う。祝杯を空け、スパゲティを食し、尽きない話に入っていった。しかし疲れもあったので早々にテントに潜り込み、明日の焼岳行きに備えた。

 25日5:12出発。晴れが三日間続くとは思っていなかったので、今朝の空模様は有り難い。朝霧がたなびく西穂方面を振り向き見つつ、栂の森を行く。9:00焼岳小屋-11:13焼岳北峰着(三角点峰である南峰へは通行禁止)頂上ではガスっていたので早々に下ったところ、数十名の登山者グループが何組も上高地方面と中ノ湯方面から上がって来た。山頂は100名以上でごったがえしだろう。百名山パワーである。こちらは登頂時間のずれで、静かに中ノ湯に下った。新しい中ノ湯温泉に入り、釜トンネル入り口まで旅館の車で送ってもらった。16:15松本行きのバスに乗り込んだ。本山行の〆である。

焼岳頂上  今回で"中ノ湯から越後親不知までの北アルプス主脈縦断路"を完歩することが出来た。この完歩を意識したのは三峰70周年記念号の原稿を書いているときで。その岩つばめに"烏帽子-鷲羽岳と奥穂-中ノ湯が残っている"と記している。烏帽子岳~鷲羽岳~双六岳を昨年の五月に縦走し、今度残りを実施できた。北アに足を踏み入れてから40年ほどである。若い頃、北アの縦走は山小屋が整備されているから、年取ってからで良いと思っていたので、それが実現出来たことが嬉しい。
 北アルプス行きはこれで終わった訳ではない、まだまだ訪れたい稜線、沢、温泉がある。今回はこれからの山旅の節目であると位置付けたい。


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