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北岳バットレス・第四尾根
小幡 信義

山行日 2005年9月3日~4日
メンバー (L)小幡、紺野、高橋(俊)

 昨年は3連休を利用し、白根御池小屋をベースにアタックを計画したが、下部岩壁bガリーでの混雑と、小雨の降る中、登攀してもつまらないだろうと敗退を決断。同じメンバーでまた来年来ようと約束していたが、実現できず、残念に思うと同時に、二人に呼びかけ、それなりのトレーニングをしなかった私のやる気なさが反省されます(ゴメンナサイ)。
 今回はメンバーに恵まれ、特に心配することもなく、登頂することが出来ました。第四尾根はアルパインルートの中でも、最も人気の高いルートの一つで、下部岩壁を経由し取付き、総数10ピッチのフェースとクラック、リッジ、懸垂下降と、変化に富んだ好ルートですので岩登りを目指している方は、是非登っていただきたいと思います。
 八王子駅南口23時集合、俊介君に車を出していただく。夜叉神峠~広河原間はマイカー規制のため、市営芦安無料駐車場でバスに乗り替えることになる。1時20分駐車場に到着。隅っこに車を止め、エスパーステントを張る。早く眠りたいところだが、ビールとつまみで明日の成功を祈り乾杯する。空は星が輝き、明日の天気を約束してくれているようだ。
 今回は、混雑を避けるため、御池小屋ベースでの登攀はやめ、途中ビバーク、または肩の小屋まで頑張るつもりで計画しました。テント、1泊の装備と食料、ザイルとかなりの重量を担いでの登攀です。
 9月3日4時起床、芦安始発バス5時10分に乗り込む。北岳の人気は相変わらずで、マイクロバスも満杯で出発。約1時間の行程だ。バスガイドが、時々観光案内のような放送をしていたようだが、とにかく睡眠に没頭する。広河原6時10分着、外はひんやりとやや寒いくらいだ。寝不足のためか足取りが重く感じるが、本日の行程を考えると、ゆっくりもしていられなく、大樺沢をひたすら歩く。ヘルメットパーティーに注意しながら歩くが。1パーティー(4~5人)位で、岩場の渋滞もなさそうな感じだ。二俣に9時到着。休憩をとっていると、ヘルメットパーティー8~10人が続々と私達の前を通り過ぎて行くではないか・・・。それも中高年パーティーときているので、多分四尾根だろうと推測される。先に追い越して行きたいところだが、まあ、何とかなるだろう・・・と10分後に出発。C沢との間の尾根をつめていくと、やはりそうであった。下部岸壁のbガリーに14人、順番待ちをしている。「こりゃーだめだあー」と思い、6~7年前に行ったことのあるdガリーを目指す。
 1パーティー(2人)が準備し、これから登ろうとしていたが、私達は、もう1つのルートに陣取り、何とか登攀にこぎつけることができた。登攀開始11時、リードはもちろん俊介君にお願いした。2番目小幡、ラスト紺野さん。出だし「悪いねえー」と言いながら、ザイルは快適にのびてゆく。1P、2Pと難無く登り切って行くが、横断バンドが出てこない。「変だねー」「もう少し上かなー」などと、思案していると、右斜目上方に踏み跡らしきものあり。私が偵察に行ってみると、ありました。
 崩壊バンド・・・。古ぼけたテープシュリンゲが垂れ下がった状態は6~7年前に行った時と何も変わっていないように思われる。最初に俊介君通過、2番目、私、ロープを引くごとにボロボロ。一歩足を移動するたびに、ボロボロ、容赦なく小石が落下してゆく。俊介君から、この現状を見かねて「やめたほうがいいんじゃないですかー」と声を掛けられたが、下に取付いているパーティーもいないことだし、ま、仕方無いよ、と思いながら通過する。ちょっとびびってしまったトラバースでした。
 dガリーよりの取付は、先行パーティーが居る場合、登らない方がよいかと思われます。その後、大量の浮石が集まるcガリーを過ぎたあたりで、4~5人登って来るのを発見、おそらくbガリーから取付いたパーティーであろう。何人か追い抜いたかたちとなった。(しめしめ・・・。)
 しかし、四尾根の取付大テラスに着くと、いるいる・・・!!順番待ちのパーティーでごったがえしていた。3パーティー、8人のあとの登攀となる。前回のときも感じたが、登っているより待っている時間の方が長く、どうも好きになれないルートである。
 40分位経ったのだろうか、やっと私達の出番だ。1P目は正面のクラックを登る。最初の5mがグレードより悪く感じられるが強引にクリアー。2~4P、特に困難な登りもなく、スムーズに流れる。4P目のナイフリッジを登るとマッチ箱のピークに着くが、ここでまた、待ち時間となる。左の上部フランケ側に10mほどの垂壁の懸垂下降があるのだ。私は荷物の重さと、寝不足で、時間待ちの間、セルフビレーをとり、居眠りをこいていた。寒くもなく、暑くもなく、ついつい、うとうとしてしまった。30分位待ったのだろうか、やっと流れ出した。懸垂下降も問題なく終え、残り2Pで終了点に到着。
 大テラスでは、大パーティーのメンバーがくつろいでいた。「お疲れ様でした」と声を掛けられ、私達も頭を下げ「あー、どうも、どうも」とニコニコ顔だ。登り終えた達成感で、ひとときの至福の時間なのだ。ロープと装備をザックに収め、北岳山頂に向かう。16時45分到着。
 私達だけで他には誰もおらず。静かな山頂であった。ベンチに腰掛け、ザックより菊水(酒)を取り出す。山頂よりの景色はどうだったか・・・。北アルプスは見えたっけ・・・?いや、ガスっていたのかな・・・?いや、そんなことはどうでもよいのだ。唯、酒を飲みたかった・・・。
 30分山頂でのんびりと過ごし、今夜の幕営地、肩の小屋へと下る。キャンプ指定地もかなりのテントが張られていた。キジ場の臭いが気になったが、「ま、しょうがないか・・・」。テントの中でビールを飲みながらくつろいだ時、やっと終わったな、と感じる。酒が入ったら・・・歌うしかないでしょう・・・。大きな声では歌えないが、俊介君の好きな「北岳の歌」を最後に終わります。

♪♪ こぼれる 朝日の中
   木の葉の 散る音に
   旅発つ 人の心は
   あの 頂き
   ここは 北岳 草すべり
   遠く はるかな 甲斐駒に
   何を 思い 語りかけて
   そそり立つ あの頂き ♪♪

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