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奥秩父・小川山(廻り目平)
坪松 聖幸

山行日 2005年8月27日~28日
メンバー (L)小幡、越前屋、天内、坪松

 台風が上陸し天気の悪い日が続き、クライミングが中止になるかなと心配になったが、天候も回復の兆しが見えてきて、ルンルン気分で集合場所の八王子駅に向かう。最近の自分の近況は・・・と言うと、山に行かずに海に(1泊2日の厚生旅行で、茨城県の大洗海岸に男30人ばかりで海水浴しました。とてもいい、目の保養になりました。)行っていたので山の方から遠ざかっていたが、クライミングジムで少しばかりながら練習していたので外岩でも少しは、登れるようになったのではないかなとそんな気がしていました。しかし、実際には・・・。
 10時半に八王子駅に集合し、中央道を経て小川山に向かう。途中で何度か道に迷ったが、午前2時半頃に廻り目平キャンプ場に到着。暗くてよく見えないが、テントがたくさん張られており人目に付かない所にテントを設営して就寝する。起床は8時頃と事前に決めておいたのだが、お日様が出てくるとテントの中では、寝ていられないくらいに暑くなり、起きてテントと荷物を日陰に移動させてもう一眠り。小一時間ばかり再び眠ってから、朝食を取り、登る準備を整える。天気も良く、とても気分がいい。廻り目平周辺には、至る所に岩場があってリードだけでなくボルダーも楽しめるようだ。また、たき火オッケーのキャンプ場だけあってか、クライマーだけでなく家族でキャンプを楽しみにきた人も大勢いて、大変な賑わいを見せている。都岳連の講習会がガマスラブで行われているようだ。(後で川崎さんとお会いしました。)我々はというと、ガマスラブの裏、スラブ状岩壁の左岩壁を目標に途中で水を補給し岩場に向かう。現地に着くと既に何人かがルートに取り付いており、楽しそうな歓声が聞こえてきて、早く自分も登ってみたいと、気持ちが高まってくる。ここのルートのグレードは、5.8、9台が主で小幡、坪松組と越前屋、天内組に別れて登り始める。最初に小幡さんがリードし自分がビレイヤーになる。ボルトの位置が結構離れており、ルートが分かりにくい。そこにトップロープを張って頂き、自分も登らせてもらったのだがイメージ通りに登れず、意気消沈。一気にテンションが下がる。やはり外の岩場は、手強い。ジムでは、色の付いたところを探して登っていれば良かったが、自分でホールドや足場を探して選択するのが、こんなに難しい物だとは、思わなかった。また腕の力に頼ってしまい、足でバランスを取りながら登るのをおろそかにしてしまう。次に隣のルートを自分が登り、最初のボルトにヌンチャクを設置する前にスラブ状になっている所があり、少しすべる。どうもスラブは、苦手だ。慎重に登ってそこを抜けると、その後は、ガバホールドがたくさんあり、安心して楽に登ることができた。終了点に到着し、下まで降ろしてもらう。何とか最後まで登れたが、まだまだ練習が必要だなと率直に思う。小幡さん、越前屋さん、自分3人が最後まで登れないルートがあって天内さんがそこにチャレンジする。天内さんは「落ちるかもしれない」と言いながらも、少しハングしている核心の部分を登っていく。さすが、お見事。
 しばらく左岩壁でクライミングを楽しんだ後、日も暮れてきたのでキャンプ場を抜け出し、買い物に行く。ナナーズと言うスーパーマーケットで、野菜、焼きそば、刺身、酒などを大量に買い込んで、食べきれるのだろうかとちょっと心配になる。キャンプ場に戻り、たき火を起こしてビールで乾杯し、刺身をつまみながら外で宴会が始まる。たき火なんていつ以来だろう。そういえば昔、近所の家の裏で友達とたき火をやって、人の家を危うく燃やしそうになり、親に本気で怒られた事があった。もしあれで大火事になっていたら、まともな人生を送れなかったかもしれないなぁ。そんなことを考えていたせいなのか、小雨が降ってきて外での宴が中止になり、テントに入る。もうお腹いっぱいだったが、焼きそばが残っていたので自分が作り、皆さんに振る舞う。普段、料理をしないので味の方が心配だったが、皆さんおいしく食べて頂いて、大変感激でした。最初は、全部食べきれないと思っていた焼きそばだったが、めでたく完食。(しかし最後にシシャモが残り、天内さんがお持ち帰りする。)吐きそうになりながら午後10時頃就寝する。
 翌日、7時に起床してお湯を沸かしお茶を飲みながら朝食を取り、本日登る場所を八幡沢左岸スラブとし、ガレ沢を登って行く。ここには、4Pで登れるマルチピッチのルートがあり、昨日と同様2組に別れて、越前屋さんと天内さん組が先に登られる。小幡さんは、ザックを担いで1Pを楽々と登り2Pを自分がトップで登ることになる。ルートは、先行された二人の後を忠実にたどっていけば良かったのだが恐怖心から体が動かず落ちたらどうしようと、それだけを考えてしまう。しかも自分の苦手なスラブで、傾斜が緩いのだがツルッと滑りそうでとても怖かった。がっちりつかめるホールドが欲しくなるがそんな物はなく、四つんばいになって少しずつ進み、2ピッチを終了して小幡さんを確保する。ザイルワークにてこずり、自分がロープを引き上げるよりも早く、凄い勢いで登ってきてあっという間に自分の確保している位置まであがってくる。とても素早い身のこなしだ。3P、4Pは小幡さんにトップで登ってもらい、自分は、セカンドで登る。やはりトップで登るのとセカンドで登るのでは、プレッシャーと恐怖感が全然違う。でもそれを克服し、最後まで登ればとても充実した満足感を得られるに違いない。もっと頑張ろうと思い、エイト環を確実にセットし懸垂下降で下まで降りる。
 まだ帰る時間まで余裕があったので沢を渡り、西俣沢対岸の方に向かい去年登ったと言うルートの左側にチャレンジする。ここは、フリー用のプロテクションが取り付けられており、これならいくら激しい落ち方をしても安心だろうと思い、最初にトライさせてもらう。必要最小限のヌンチャクを持ち、チョークを付けて気合いを入れる。最初のボルトまでにアンダーホールドがあり、足と腕で体を突っ張りながら登り慎重にヌンチャクをかける。よし、いい感じだと思い、2本目、3本目、4本目、までヌンチャクを取り付け順調に登っていたのだが、その上のクラックがどうやっても登れず、腕がパンプし、あえなく断念する。岩が少し湿っていたせいもあるが、広沢寺でクラックの所を登ったときよりクラックが上手く使えなかった。正直言って下から見たときは、クラック沿いに登れば楽勝だと思っていたのだが、またしても自分の思い通りには、ならなかった・・・。そこで天内さんの登場である。自分が苦労したクラック沿いの所から右に移動し、小さなフットホールドに右足を伸ばし、上にあったガバまで手を伸ばして、5本目のヌンチャクを取り付け、最後まで登って行ってしまった。これには、下で見ていた3人も脱帽である。天内さんに上にロープを懸けて頂き、越前屋さんと小幡さんも最後まで登り切り、最後まで登れていないのは、自分だけとなった。トップロープでもう一度トライするが、やはり、先ほどと同じ所で苦戦する。どうしても右足に体重をかけられず次の一手が出ない。下からも色々とアドバイスを頂くが、うまくゆかない。落ちてもいいからと思い、飛ぶようにしてガバをつかもうとしたが、ヌンチャクをつかんでしまった。それで何とか体を引き上げ、力任せに上まで登り切る。結局最後は、フリーで登れなかったが上まで登ったので、帰り仕度を整えて、来たときと同様に中央道を経由し八王子に午後6時頃到着し解散する。  今回は、ジムでの練習の成果が出せると思っていたが、お粗末な結果となってしまった。しかし初めて岩を登った時より、ほんのちょっとは、うまくなったのではないかな?と思う。しかしルートを見て判断するのが未熟であり、まだまだ技でなく力で登っている。上手くなるには、とにかく練習する事が大切だが、ただがむしゃらにやるのではなく、先輩方の技をこの目で見て学び、時には、創意工夫しながら正しい知識を習得して安全第一で岩登りを楽しんでいきたいと思う。そしてまた小川山にきたときに、自分の納得のいく登り方ができれば良いなと思う。


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