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旭岳東稜
高橋 俊介

山行日 2006年2月4日~6日
メンバー (L)高橋(俊)、金子

 一昨年、「チャレンジ!アルパインクライミング」という廣川健太郎氏の本を購入してから、このルートに一度行ってみたいと思っていたら、荻原さんもそうだったらしく、「じゃあ、是非とも行きましょう」、ということで、例会計画をだした。ところが、急遽、荻原さんが転勤のため不参加となってしまったため、金子会長と2人での山行になった。
 今年は、異常に雪が多いため、一応予備日1日を取って3日で計画した。後にこれが的中することになる。金曜日の晩、いつも通り、八王子に集合し、いつもの通り、小淵沢の道の駅に深夜に到着し仮眠を取る。ここに泊まるのは、今年の冬シーズンだけで4回目となり、なんだか、八ヶ岳ばっかだなぁと痛感する。今回は2人なので、テントを張らず、小生のスズキ エブリーで寝ることにした。軽く晩酌してからと、これまたいつもの通り飲み始めたが、エンジンを切ってからものすごい寒気に襲われたため、缶チューハイ1本飲んですぐにシュラフにもぐりこんだ。それもそのはず、ラジオからマイナス40℃以下のこの冬一番という寒気団が南下しているとのニュースが流れていた。
 翌朝、6時に起床するも、寒さであまりよく寝れなかった。金子さんも同様だったらしく、起床するとすぐにエンジンをかけた。こりゃ、山はやばいね。と話しながら、美ヶ原に向かう。天気は上々。美ヶ原駐車場には、1パーティー準備をしているところであり、権現岳東稜に向かうとのこと。我々も早々に支度を整え、出合小屋まで向かう。いくつか、すでにトレースがあり、この分だと予備日要らないね。と話しながら出合小屋を目指す。途中、いくつかの堰提を越え、2時間強で出合小屋に到着。トレースはこの先も旭岳東稜方面に向かっているので、わかんは小屋にデポしていくことにした。小屋から赤岳沢と別れ、地獄谷を100Mほど詰めた右側から入るルンゼ状から、トレースは上に延びている。ここで、念のため、ハーネス・アイゼンを装着。登攀具の準備をしていると、駐車場にいた後続パーティーが追いついてきた。ここから、権現岳東稜へは完全にトレースが無くなり、腰ラッセルだったので、お互いに健闘の言葉をかわしたが、そこから50Mほど先に行ったところで、トップが沢つぼにハマったらしく、「靴が濡れた~、替え靴下がない~。」と叫んでいた。おそらく、あのパーティーは敗退したのだろう。ルンゼからトレースに沿って尾根上に登る。尾根に出てしまえば、雪の量はぐっと減りしかもトレースもついているので、これは明日も問題ないでしょう!ということで、稜線が狭くなる前に幕場を探し、2200M付近の樹林帯で早々にテントを張ってしまった。まだ、13:00だったが、天気も良さそうだし、ラジオを聴きながら、ちびちび飲み始める。それにしても寒い。昼間で太陽も出ているが、気温はマイナス10℃くらいだろうか?昼間なのにバーナーをたいていないとテント内にいても寒い。14:30くらいになって突然人の声が聞こえたので、顔を覗かせると、1パーティー下山してきた。アルパインスタイルで一気に抜けようとしていたのだが、上部はラッセルがひどく時間切れで下山してきた、とのこと。15:30すぎにも同様にもう1パーティーが時間切れで敗退し下山していった。こりゃ、ひょっとしたらこんなところに幕張っている場合じゃなかったかも知れない。と思い、明日に備え、20:00就寝。
 翌朝も快晴。4時起き、6時出発としていたが、明るくなるのを待ち、7時出発。1箇所リッジ状でクライムダウンする箇所があるものの、残置ロープがあるので、ザイルを出すまではいかない。トレースもありリッジ状の尾根を進んでいくと、尾根が広がると同時に、ついにトレースが消えてしまった。ここから、今日一日ラッセルに終始することになる。寒気が入り、気温が低いこともあってか、パウダー状のさらさら雪で何度も踏み固めても一向に固まらず、もがきながらの登行が続く。すぐ先に五段の宮の基部が見えているのだが、なかなか前に進めない。ラッセル開始から2時間あまりでようやく基部までたどり着いた。
核心部の五段ノ宮  基部からは赤岳がはっきり望める。ここで登攀具とロープを出す。リッジ状に行くとIV級とのことなので、荷物も重いし、左にトラバースしてリッジすぐ脇のルンゼから取り付くことにした。俊介トップでトラバースをし、ルンゼに入るところから金子さんトップ。ここが核心だった。見た目はたいしたことなさそうに見えたのだが、岩・草付・雪壁のミックスでアックスを振っても決まらず、岩に引っ掛け、木を掴みながらのバランスクライミングで攀じっていく。どうも正規ルートはもっと左にトラバースしてから取り付くようだ。よくこんなのリードで行ったなぁ~、と金子さんと話してから、ツルベで今度は俊介リード。2ピッチ目も決してよいとは言えず、これも微妙なクライミングとなった。2ピッチで5段の宮を登りきり、あとはリッジを進むだけだと、ホッとしたのもつかの間、今度は雪壁に苦しめられることになる。 ナイフリッジも雪が深い  ナイフリッジになっているが、雪があまりにリッジについており、またほとんど人が入っていないこともあり、平坦地で腰、傾斜があると胸ラッセルを強いられる。スタカット+ツルベでザイルいっぱいに伸ばすが、ラッセルが厳しく時間ばかりを費やしてしまう。ようやく旭岳ピークが見えたときには、すでに17:00をまわっていた。このころになると、日陰ではすでにマイナス10度以下になっており、確保している間は寒くてたまらない。ピークに着いたときはすでに17:30。ほとんど行動食も水も取らず行動していたが、あと30分もすると完全に暗闇になりそうだったので、水を飲みつつ登攀具をザックにしまい、早々にピークを後にする。ツルネ東稜を下山予定だったので、取り付きの樹林帯に入りたかったが、稜線にもかかわらず場所によってはここでも腰ラッセルだったため、ツルネ手前の稜線上に幕営することにした。すでにあたりは暗闇に包まれており、2人ともなだれ込むようにテントに入った。こんなビバーク久しぶりだなぁ~と話していたものの、メシを作る元気も無く、水だけ作りお茶飲んで就寝。金子さんは委員会業務をここでケータイでしていた。恐るべし。
稜線からの赤岳  翌朝、マルタイラーメンを朝食に作る。これを作るということは相当ヤバイということである。学生の時から非常食はこれかオートミールだったが、久しぶりに食べた。うーん微妙な味。いよいよガスもほとんど無くなり、今日中に下山するぞ!と出発。30分ほどでツルネ東稜の分岐に到着。赤旗の支柱のみ立っており、今年のように雪が多い年はテープは埋まっていたかもしれない。下りもトレースなどなく腰ラッセルである。短間隔で赤テープがうってあるが、支尾根が入り組んでいるため視界が悪いときには注意が必要である。出合小屋に向かって左左にライン取りをする。途中、垣添尾根を登ってきたというパーティーにトップを代わってもらい、2時間半で出合小屋到着。デポしたわかんをピックアップし、林道を駐車場まで引き返した。
 それにしても、今回の山行は寒かったなぁ。証明するように、車に戻ってきてもスパッツが凍りついていて靴が脱げず、車の中でエアコンであっためてからようやく外せた有様である。月曜日のガラガラの中央高速をこれまたやっぱり談合坂のカツカレーを食べて帰宅した。

今日は下山できるかな

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