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日本平山
平 真里

山行日 2005年11月5日~6日
メンバー (L)高木(敦)、金子、天内、平

 日本平という山が東北にあるらしい。とりあえず、岩稜ではない"ふつうの"縦走ということを事前にリーダーに確認した。エアリアマップ(昭文社の地図)にないことに一抹の不安を覚えながら、地形図に赤線を引いて出発準備。
 東所沢へ23時に集合し、関越自動車道で越後をめざす。途中の駐車場でテントを張って就寝。寒くてフリースを着ても震えがとまらない。翌朝6時起床、7時出発。
 8時半くらいに早出川ダムに着く。観光地らしく、トイレ、ゴミ箱とも設置してあった。ダムに沿った穏やかな道を、対岸の紅葉の写真を撮りながらのんびり歩く。紅葉が岩肌にこびりついたような格好なのは、この斜面の山肌を雨が洗うためだとか。
 ダムの水が遠のくと、道はアップダウンを繰り返し、ぐっと下って金が谷の渡渉。事前に調べたところ、とび石伝い、とか渡れなくて引き返した、とかあったわりには、1箇所とぶだけですんだ。渡った直後が急な登りで駒の神に着く。ここは分岐になっていた。一息ついても急な登りは終わらない。ただ、広葉樹のトンネルが日に透けて明るく、山気分を盛りたててくれる。紅葉もいまが見ごろ、真紅の葉をつけた木の下に立ち止まって写真を撮った。
 途中、なめこがみつかったので、登山道を逸れ、木につかまって下りる。つやつやしていて、巷にあるのと別物のようだった。発見者の高木さんの先導で写真だけ撮らせてもらう。ずり落ちそうで、私にきのこを採る余裕はない。
 トコヤとよばれる一帯だけ、樹木がなく土が露出していた。まんなかに石が寄せ集められ、木の棒が立っているのが目印。水場の標識があり、茂みを奥に入ると、水量も豊富な水場があった。テントを張る場所に、水があるかどうか不安だったので、ここで水を補給。
 あたりがブナの林になる。ひとつひとつの樹が細く密集している。急な登りは相変わらずだが、尾根に出ると、視界が開けた。標高のわりにずいぶん高いところに登った気がする。日本平はずっと向こうに見える。途中、2,3組の登山者とすれ違った。日本平山頂の往復だろう。
 両脇が笹になるとようやく傾斜も緩くなる。ぬかるんだ道を通って、日本平の山頂に着くと、かえるが鎮座していた。なだらかな山頂は開けていて、遠くの山が望める。お昼も過ぎていたので、小休止のあと、寒くなる前にテント場所を求めて出発。

日本平はまだ遠い山頂に鎮座するかえる

 山頂から遠のくにつれて、踏みあとがかすかになってくる。草や潅木を縫ってジグザグに下降を繰り返すが、いっこうに大清水に着かない。仕方がないので、ザックを置き、水を求めて探索に出た。
 とりあえず水を汲めるところを発見したので、戻ってテントを張る。邪魔な木はロープで結わえて、でこぼこする木の根の間には、テントの中からザックを乗せた。日が暮れる前に、やや離れた水場に行き、水を汲むついでにきのこを洗う。
 テントの中で火をつければ暖かい。祝杯をあげると、本日の戦果であるなめこの味噌汁になった。くりたけは、ソーセージといっしょに炒め物に。ともにおいしくいただいた(料理はしてもらう)。お酒とともに夕飯の鍋もおいしく、最後のうどんまできれいに食べた。まじめに9時に就寝。
 5時起床。朝食後、6時半出発。天気は曇り。踏みあとはいっそうわずかになる。10から20分くらいのところだったろうか、大清水と書いた札が木につるしてあった。すぐそばには、勢いよく流れる水。昨日、流れが細い沢から、木の葉を使って汲んだのに。テントは1張くらい張れそうな平面があった。
 あまり歩かれていないと思われる道は、足元が非常に悪い。トラバースする道が続いて、標高も稼げない。滑りそうな落ち葉とぬかるみの道で腰が引け、転ぶこと数回。背負っていたポールを高木さんに持ってもらう情けなさ。
 短い急坂を登りきると、高石への下山路と山頂の分岐に荷物を置いて、日倉山山頂に出かけた。山頂までは5分とかからない。展望もないので、証拠写真だけ撮って戻る。
 悪路はまだまだ続く。途中、安心できる場所にくるたびに、周りをみまわして深呼吸をする。緊張さえしなければ良い場所なのに。途中、どうしても川を渡るために石の上をとばなければならない地点に行きあう。石が濡れていて滑りそうだ。覚悟していた昨日より難易度が高い。周囲を探してみても、やっぱりここを渡るしかないと、石の上をとんでほっとするのもつかの間、また目の前に横たわる川。飛距離がアップしたので、ザックを先に渡してからとび移る。と、また現れる。もう諦めにかわって、文句もいわずに黙って飛ぶこと数回。
 送電線の下をくぐると、道幅はずっと広くなる。いままでの欲求不満を解消するべく、スピードがあがる。足にもやさしいふかふかの道である。
 林道らしき道と脇の細い道との分岐に出る。特に道標はないが、作業道と思われる歩き良い道とはお別れして、細い道をとった。そこに、もうないと思っていた川。これだけ下っても橋がないとは。最後に対岸の階段に飛び移るところが難所で、滑りそうだ。イヤといったところで進まなければならず、最後になったので思い切って飛ぶ。
 そこから道を見つけ出すのに少し迷う。道を発見してから先は、道標がところどころ見られるようになる。人家が現れ、その庭を通って車道にぶつかる。
 ここから車道沿いに高石へ向かう。地図だと車道から離れて、進む道があるらしいのだが、もう刺激は十分に味わったと穏やかに主張。迷う心配のないアスファルトの道を高石へ向かった。
 高石を後にしたのは14時過ぎだったろうか。近くのさくらんど温泉に寄って汗を流し、そば屋でご飯を食べて、帰京した。さくらんど温泉は、入浴料700円だが、タオル、バスタオルとも貸してくれる。あいにく渋滞にはまり、東所沢着21時。

 エアリアマップにない山に行くのも、なめこ採りも、藪のなかのテントも、初めてで発見の連続。茫然としているばかりで全然働いていませんでしたが、楽しかったんです、ホントは。いっしょに行ってくださった方々、お世話になりました。

〈コースタイム〉
4日東所沢駅(23:00)
5日パーキング(1:00~7:00) → 早出川ダム(8:30) → 金が谷(10:00) → 分岐(10:15) → トコヤ(12:00) → 日本平山頂(13:50) → 天幕(14:30)
6日出発(6:40) →(大清水)→ 日倉山山頂(9:50) → 高石集落(12:50) → 早出川ダム(14:00) → さくらんど温泉 → (そば屋) → 東所沢駅(21:00)

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