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戸隠山西岳
斉藤 篤人

山行日 2005年10月22日~23日
メンバー (L)高木(敦)、山崎、成田、紺野、土肥、深谷、高橋(俊)、斉藤(篤)

 1年3ヶ月前まで長野市に住んでいた僕にとって戸隠は特別な場所。山行計画を見た瞬間こりゃ行くぞ。と意気込んでしまったくらい。3年ほど前に一度だけ戸隠は登っている。その時は奥社-蟻の塔渡-八方睨-一不動-高妻山-戸隠牧場のコース。まだ登山を始めたばかりの頃で、その時の自分にとっては1人での縦走だったこともあり、勇気を出してトライした記憶が残っている。その時も西岳というルートは知っていたが、熟練者向けということでいつかは行きたいなとなんとなく思っていたルート。まさかこんなに早く機会が巡ってくるとは。
 前日の金曜日11:00に東所沢駅に集合。上信越道を飛ばし、信濃町ICで下りIC出口の道の駅でテント泊。就寝前に明日(今日だ)の健闘を誓い合い、軽く乾杯。
 就寝は3時ごろだったかな。朝5時頃起床し出発。戸隠神社奥社の駐車場に車を止め車1台を鏡池に配置し、いざ出発。
 天気は曇。雨も今にも降りそうな感じ。戸隠連山は霧がかかっていて全容はベールに包まれており威厳と風格を感じさせる。やっぱ戸隠は神々が住む山だ。気持ちが自然と凛とする。
 奥社までの見事な杉並木を感心しながら歩き、いよいよ登山口へ。開始早々いきなりの急登。どんどん高度を稼いでいく。途中、ちょっとした鎖場、岩場を通過。今回のルートの前半核心部となる蟻の塔渡に到着。切り立ったナイフリッジは高度感たっぷりで、天気が悪く、肌寒いことも手伝って妙に谷に吸い込まれるような緊張感。初めての人も多かったようで、思い思いの気合い(悲鳴?)をあげながら、渡っていく。僕は2回目ではあったが、なかなかの緊張感。たまりません。僕は馬鹿なのか、高い所は大好きなため、妙にはしゃいでししまった。いやー戸隠はいいな。
 八方睨で小休止。10月も下旬となるとさすがに寒い。霧も湿っており、髪も濡れるようで雨も近いかな?と思わせる天気。視界も今ひとつで、これから行く山も良く見えない。防寒具を着込んでいよいよ西岳に向け出発。意外だったのは西岳までの登山道が結構歩きやすく、びっくり。しっかりした登山道で、ところどころすべりやすい所はあるが、なかなかの縦走路。天気が良かったら最高だろう。
 八方睨から2~3時間アップダウンを繰り返し、西岳山頂へ。あこがれの西岳に到着。霧のため視界はなく、山頂もちょこっとした広間で西岳と書いてある指標が一本。あっけない。しかも山頂到着の際、山崎さんから「西岳は次のピークだよ。あと60分頑張ろう」と言われ新人だった僕は素直に信じ、あと1時間であこがれの西岳だと気合いを入れ、かたや他のみんなは「まだ登るの」と不満を漏らした瞬間。「うそで~す。ここが西岳で~す」の一言。これから登るぞと気合いを入れた瞬間に1秒で登頂。ずっこけました。まあ、楽しければいいか。
 ここで軽いお昼。小休止の後30分程縦走しP1へ。ここまでは登り中心ですべりながらも縦走を楽しんでいたが、この後が僕にとって核心の始まりだったとは・・・。長い鎖場が連続する下り開始。岩登り技術のない僕にとってそれは試練の場となってしまった。垂直の鎖場で腕だけに頼って降りてしまい(ぶら下がり状態)、2本くらい鎖場をこなすと腕は既にパンパン。このまま行くと握力なくなりそうだ。よくみんな簡単に行けるな。と思っていると女神のささやき、既に僕の指導員と化している高木(敦)リーダーより「足だよ。足。手なんか使ってたらすぐ疲れちゃうよ」と一言。
 それからいわゆるOJT(on the job training=職場における実地指導:編集委員のおせっかいな注)。なるほど足を重視して下りるとこんなに楽なのかと改めて体感した次第。3点支持を体で感じた瞬間でした。頭で覚えても意味ないや。やっぱり実践で覚えるのが一番。百聞は一見に如かずではないが、百の知識は一の体験に如かずってやつだな~。勉強勉強。
 雨もぼちぼち降る中、その後は何とか岩場もクリアーし危険箇所を通過。P1尾根が終わると安全な道になり、後は歩いて帰るだけと思っていたが、なんと今回の山行の核心部がこんなところにあろうとは。キノコ、キノコ、キノコ。キノコ銀座の始まりだ。ほとんど地元の人も歩かないルートのせいか、手付かずのキノコが採り放題。ムキタケ、クリタケ、ブナハリダケ等々持ち帰れないくらいのキノコラッシュ。高木さん、山崎さんはしゃぎまくりで、まったく前に進まない状況に。結局2時間くらい歩きながらキノコ採りに没頭し採れたキノコは大きな袋に5、6袋。食べきれません。結局鏡池到着は17:00頃。約10時間の縦走。結構疲れました。もちろん夕食はキノコ三昧。キノコ鍋、キノコの大根おろし和え、キノコの味噌汁とキノコづくし。やあ~、よく食べました。場所は戸隠キャンプ場。底冷えのする中、僕は敦子さんと語り合い就寝は24:00頃か?もうみんなとっくに寝てます。
 翌朝起きてビックリ。昨日はぐずつきがちだった天気が今日は快晴。さらに戸隠連峰は雪の薄化粧です。緑の牧場、天空の青い空をバックに、戸隠岩稜の黒、赤い紅葉、そして白い雪のコントラスト。圧巻です。言葉を失いました。
 美しい景色に別れを告げ、温泉入浴・北アルプス鑑賞の後家路へ。最後にサービスエリアで残ったキノコを均等分配。やあ~言うことなし、最高の里帰りとなりました。また行きたいな~。

〈コースタイム〉
10/22
戸隠奥社(7:00) → 蟻の塔渡 → 八方睨 → 西岳(12:00) → P1 → 不帰の剣、無念の峰、猿の踊場、熊の遊場 → 天狗平 → 鏡池(17:00)


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