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日光白根~皇海山~袈裟丸
平 真里

山行日 2006年5月3日~7日
メンバー (L)鈴木(章)、土肥、深谷、平

5月3日(水)晴れ
 8:24着東武日光駅着の列車で出発。車内は登山客でごった返し、立っている乗客多し。日光駅から乗合タクシーで湯元まで。9:20くらいに湯元バス停に着。身支度を整え歩き出す。車道から登山口に入るとすぐに雪。傾斜はきついが踏みあとはあるので歩きにくいところはない。途中でアイゼンを装着。12本爪をつけられる冬靴が足にあわないので、今回新調した8本爪。ここから逸る気持ちに任せて一気に登る。湯場見平でひと息つきながら展望を満喫し、再び登り。樹木がきれているので、展望は申し分ないが、次々に現れるピークに気押され気味。五色山、前白根を越え、避難小屋を眼下にのぞみ、奥白根の手前で幕。土が見えているがまばらな樹木の間で、風もなく快適。水は雪からとった。深谷さん持参の紙とじょうごで水をこす。今回は4人で4泊なので、朝晩の2食ずつを各自担当した。初日は、荷物が重いという深谷さんのドライカレーと野菜、高野豆腐などをご馳走になる。21:00就寝。熟睡。

5月4日(木)晴れ
 3:30起床。あっこさんのそろそろ起きようか、という声で、そろって飛び起きる。(これが毎日の起床の常だった。)朝食を済ませ、したくをしてテントをたたむとすでに6時近くになっていた。白根隠山まではすぐ。避難小屋に泊まったという団体客と会う。きょうも快晴。谷川岳までよく見えるので、ザックを下ろして写真を撮る。広々としていて気持ちが良い。いったん下って登り、白桧山山頂。このあたりのルートを開拓したという人々にも出会う。きょうは大賑わいだ。が、踏みあとがなくなったのはこのあたりからだったろうか。早くも私はバテ気味になり、記憶が不確か。それでも錫ヶ岳ではカメラを取り出しそろって記念写真を撮った。ここから宿堂坊までが長い。思わぬところで埋まる雪に足をとられ、濃い藪に行く手を阻まれてはザックごと突進して、息があがる。大きく遅れた私は、観念して何も考えずにとにかく足を前に出すことだけを考えた。宿堂坊を越えたところで、時間切れ、幕場を求める。六林班峠まで行く予定だったのだが。鞍部になった幕場には、単独の男性がすでにテントを張っていた。夕飯は、疲れた体に酢飯ということで、私のちらし寿司になったが、おかず不足の指摘を受ける。早々と8:00就寝。

5月5日(金)晴れ
 きょうは山場の皇海山。いつもの3:30起床で、5:30すぎには出発した。急な登り。3日めとなって、もはや体力にまったく余裕がなくなり、後ろから黙ってつき従う。今度こそピークという期待を何度もはぐらかされて、三俣山に着く。ザックの重さが堪え、日向山に着くころ大きく離されてしまった。どうしてもきょう皇海山を越えるために、とリーダーの指示で私の共同装備の分配になってしまう。ガソリンは深谷さんに、フライは土肥さんに、ポールはあっこさんに・・・。本当に申し訳ないやら、情けないやらで、身の置き場がない。
まだ元気いっぱい  体力のなさをしきりに悔いる。皇海山に登る直前、国境平で休憩。見れば見るほど巨大で威圧感がある。意を決して腰をあげ、笹原を抜けるとほどなく登りに入った。最初は樹林帯をゆっくり、ジグザグに登る。樹林がまばらになると今度は雪。元気よく先頭をきってはみたものの、あっさり挫折してトップはあっこさんに交代。もう追いつけない。トレースを忠実にたどりながら、急斜面をやっぱりジグザグに登る。アイゼンをつけていないので、危ないところは避け、樹林の中に逃げる。稜線にあがっても皇海山は彼方。ここから雪が少なくなったと思ったら石楠花の密集地帯だった。とりあえず道はあるから良いものの、体力を使い果たした身には障害物が堪える。再び雪の中に入り、あとひといきが長かった。私が大きく引き離されるたびに、土肥さんか深谷さんが私を呼ぶ。もう間近、と思ったところで雪に足をとられて出られなくなり、滑り落ちそうな斜面で泣く泣く雪を掘る。山頂につくと、あっこさんが1人山頂でぽつねんと待っていてくださった。ほかの2人は幕場を求めて先に下ったとのこと。日も落ちようという16時50分である。追っかけて下山し、雪のなくならないうちに幕。登山道の近くだが通る人もいない。夕飯は土肥さんの当番。食欲はまったくなかったが、豪勢な食事(蒲焼だった)に自らを励ましていただいた。さらに、塩、昆布茶、プリンなどどんどんあてがわれた。全然働けなくて反省。
夕暮れの皇海山頂

5月6日(土)晴れ
 習慣になった3時半起床。5時半ごろ出発。登山道のありがたさを感じながら、踏まれて凍っている下りをアイゼンで歩く。踏み固められた道は泥だらけ。樹木がまばらになり雪が多くなってくると傾斜が緩くなって不動のコル。珍しく人に出会った。反対側から来たらしい。鋸山が前方に見えるものの、ずいぶん高い。体力が尽きないよう用心しながらゆっくり登る。途中、鎖場とロープに遭遇するが、下が切れているわけではないので怖くはない。むしろ切れそうなロープに注意。見ためより意外にあっさり登りは終わって山頂に着いた。後方にはいままで通ってきた山々がすべて見渡せる。看板の横に立ってポーズを決め、写真を撮りあった。鋸の名にたがわずとがっているので、高いところに来た感があってめちゃめちゃ気分が良い。珍しく長めの休憩をとって名残惜しく下山開始。すぐに雪になり、急なところにくるとたちまち足が鈍る。私の足があまりに遅いので、下で待っていた3人が隊列を組んで、おしりで滑れという。このままでは疲れるだけだと叱咤され、ピッケルを脇にして滑り降りた。わずかな距離ではあったけど、後ろ向きで下りるよりはずっと早かったろう。雪道を足に任せて下り、六林班峠。丈の高い笹が人の姿を隠してしまう。いつのまにか登山道も消え、再び雪と藪の世界になる。やっぱりあれこそピークだという思いを何度もはぐらかされて法師岳到着。あとのことは実はあまり記憶にないが、尾根を間違ったのは、確かこの法師岳から奥袈裟丸に向かう途次ではなかったろうか。幸いなことにすぐに気がつき、トラバースして軌道修正した。樹林がまばらになるたびにほっとする。休憩を挟みながら、奥袈裟丸に到着。当初、袈裟丸を下った小屋への宿泊を予定していたが、すでに時間は14時半を過ぎている。遅れ勝ちな私はさすがにあせりが募るが体は動かない。枝に行く手を阻まれ匍匐前進の格好を強いられるたびに、激しく消耗。中袈裟丸山に着いたのは16時半。いったい袈裟丸っていくつ名づけたのか。さすがに幕場探しに入り、沢で水がとれるところで行程終了。きょうは雪の水づくりはない。もっとも、4泊目にしていちばん傾いた家で、火元が危なかった。あっこさんの味噌煮込みうどんを食し、誰もが疲れきって早々と就寝。

5月7日(日)雨のちくもり
 3時半起床、と書くのも疲れてきた5日目である。昨晩の味噌煮込みうどんの残りに、私のソーメンをまぜた朝ごはんだった。夜半に降り始めた雨で朝から合羽。やはり雨だと調子はあがらない。雪は少なく、岩と樹木につかまりながらの登り。後袈裟丸の山頂も早々に下り、分岐に大きな看板が現れる。ここまで来ると、道も格段に整備されて格段に良い。この案内板によるとわれわれが向かう前袈裟丸山が通行禁止になっているらしい。早く下山する道もあるけどどうしよう?雨があがる気配も見えてきたことではあるし、いままで通ってきた道よりは遥かにマシだろうということで、当初予定通り前袈裟丸山に向かう。ちょっとした岩場、鎖場もあるが、もういままでに比べればずっと易しい。難なく前袈裟丸山に到着。ポリタンクやらゴミが散らかっていて、人の気配がある。ここからはたいして急なところもない登山道。一気に気が抜けてしまった。途中の、小丸山小屋はドラム缶の小屋だが、5,6人は泊まれるだろうか。さらに原っぱの小さいピークを横にみながら、賽の河原を超えると、木造の立派な避難小屋。
 鍋など置いてあり、寝床は1段高くなっている。ここで泊まるかもしれなかったのになぁ。沢沿いに何度か渡渉を繰り返すと寝釈迦。ちょっと岩を登ったところなので、荷物を置いて見に行った。そこだけツツジが咲いていて、お供えされているようだった。登山口に出ると、山仕様の身じまいをとき、林道を歩く。1時間ほどで沢入の駅に着いた。そこから、列車で水沼駅の温泉まで行き、さらに特急に乗り換えて帰京。
 4泊の長い縦走は充実感がいっぱいで、お別れも名残惜しく握手をして解散。それにしてもこんな一生にあるかないかの縦走ができたのは、メンバーに恵まれたおかげと思うとしみじみありがたかった。

〈コースタイム〉
5月3日(水) 日光湯元(9:50) → 湯場見平(12:00) → 五色山(14:50) → 小屋分岐(16:10) → 天幕(白根隠山手前)(16:20)
5月4日(木) 天幕(6:00) → 白根隠山 → 白檜山(7:05) → 錫ヶ岳(8:35~8:55) → 宿堂坊山(15:45) → 天幕(16:30)
5月5日(金) 天幕(5:35) → 三俣山(8:40) → カモシカ平(11:20) → 日向山(11:40) → 国境平(12:30) → 皇海山(16:50) → 天幕(皇海山頂からやや下り)(17:10)
5月6日(土) 天幕(5:45) → 不動のコル(6:45) → 鋸山(8:15~8:40) → 六林班峠(10:15) → 法師岳(11:40) → 奥袈裟丸(14:35) → 中袈裟丸(16:25) → 天幕(17:00)
5月7日(日) 天幕(5:45) → 後袈裟丸(7:10) → 前袈裟丸(7:55~8:20) → 小丸山小屋(9:10~9:30) → 賽ノ河原(10:20) → 寝釈迦(11:06~11:25) → 登山口(12:10~12:30) → 沢入駅(13:40)

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