トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ321号目次

06年GWの雪山縦走(燕~常念~蝶)
別所 進三郎

山行日 2006年5月3日~6日
メンバー (L)別所、他2名

 なぜか、年末はベースキャンプを設置してからのアタック山行、GWは縦走というパターンが続いている。このGWも雪山縦走になった。来年はどうなるんだろう?

春光を浴びて、雪の合戦尾根を登る(5月3日)
 臨時の特急あずさにて穂高駅で下車し、タクシーで中房温泉に入る(\8,540)。途中からかいま見る稜線に雪庇が張り出しているのが見えた。又、11時に上りだしてすぐ雪道になった。今年は雪が多い、と同行者が言った。上り一辺倒の雪道を辿るが、雪稜越しに大槍と小槍が頭を出している場面に出くわした時は感激であった。
雪稜線上に顔を出した槍  約4時間かかって屋外売店を出している合戦小屋に着く。そこからは今年中には行きたいと思っている、唐沢~餓鬼~有明の稜線を右に見ながら雪の合戦尾根を重荷に喘いで登った。
 17時、20張ぐらいのテントがひしめく燕山荘前に到着。 燕岳往復は意気上がらず取り止めにし、ビールとつまみで、"お疲れさん"となった。

やっぱり表銀座(*)、雪山でも人は列をなす(5月4日)
 稜線上の幕営にもかかわらず、夜中から風が少し出てきた程度で、暖かく寝られた。朝、テントから顔を出すと、雪で化粧された北アルプスがあった。今日も好い天気みたいだ。高気圧にスッポリ被われたこの状況が、下山日まで続いたら初めての経験である。春山では必ず荒れる日があると言うのが、私の自虐的思い込みなのだが。
 山小屋のトイレの行列待ちで時間を取られたりして、7時の出発となる。大天井岳往復組みも含め、登山者がいっぱいで、出だしから他のパーティーと前後して、列の中の一員となって稜線を歩く。
夏道を辿る。後は燕岳  蛙(げいろ)岩と大天井山頂では、チヨット先を見ようと前に出ようとすると「順番ですらから」と、中高年のリーダーから注意が入った。大天井への上りは大いにへこたれて、喜作レリーフから山頂まで、夏タイムの倍ぐらいかかってしまい、12時に到着した。大休憩を取ることにし、今日中の常念越えを断念した。苦労した甲斐あって、2,922mの大天井岳からの360度の見晴らしは素晴らしく、剱~水晶~双六~槍~穂高と北アルプス中心の山々がベッタリと雪を抱いて聳え、周りに乗鞍、御岳、中央ア、南ア、富士山、八ヶ岳、浅間、頚城山塊が眼下にあった。
無人の大天井荘を過ぎる  東天井岳から俯瞰する横通岳方面への道はパノラマのような広がりの中に雪にトレースが続いており、その線上に数組の登山者が動いているのが判る。今日の幕営は常念小屋前と決めたので、気持ちが楽になり、好天候の下、癒された気分で歩んだ。常念坊主の雪形を確認しつつ16時にキャンプサイトに到着した。
(*):表銀座は燕から槍ヶ岳を指す。喜作新道からの、雪の東鎌尾根の縦走は難易度が高い。今回は初めから割愛している。

雪の斜面を上り下って、春山を満喫(5月5日)
 天気は晴れで申し分なし、しかし今朝はいきなり常念頂上への登りである。コースタイムより倍以上の時間がかかって常念岳頂に着いた。途中、雪面ではアイゼンを付けたが、夏道が出ていてコースどおりの道を行ったにもかかわらず、である。歩みが遅いのである。重荷での縦走はもうダメなのかと落胆した。
槍をバックに常念山頂  それでも山頂で、燕から蝶までの今回の縦走路を見渡し、雪を抱く山々を仰ぎみると'いいなあ~'こんどは'槍だ'との思いが湧き上ってくる。懲りない男だ! また、雪ベッタリの三俣蓮華、双六岳には、オートルートを快適に山スキーで滑走している三峰の仲間がいるはずと思うと、3年前つぼ足で縦走した記憶がよみがえってきた。
仲間が滑って縦走しているオートルートは雪がベッタリ  さて、安曇野から望める顕著な南稜線が、これからの常念の下りである。2度の短い休憩を取って最低鞍部まで下り、ひと登りで2,512mのピークに着いた。
 そこからは樹林帯の中の雪道で、申し分ない春山の雰囲気である。実際、蝶ケ岳山頂手前まで雪があり"陽光サンサン・陽だまりハイク"山行になったのである。
 蝶の小屋で大滝山の状況を聞いたら、大滝からの登山者は無く、行った人もいないとのことだった。大滝山から徳本峠経由で下ると、2日かかるかもしれないことと、明日の夕方から天気は崩れる予想も考慮して、明日は長塀尾根を上高地へ下ることにした。

静かさやザックを降ろして一休み(5月6日)
 朝の蝶ヶ岳山頂から、2日間見続けた槍から穂高の山稜に別れを告げ、徳沢までの雪尾根に入る。急なくだりでは、行き交う登山者も少なく、静かな行程が楽しめた。しかし徳沢に出ると人が多く'下界に戻った'ことに気づかされた。
蝶への大くだり準備  ツアー観光客で混み合う河童橋で後を振り向くと、岳沢からの吊り尾根が雪を纏って白さを放ち、青空と梓川沿いの樹木の緑にあいまって澄んだ色彩に心が鳴った、そこにいる人たちもその見事さに感嘆しているに違いない、我々はこの様な景色が移り行く中を4日間も堪能して歩いてきた。良かった、ありがたい、と感じた。

来年、どうしよう!


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ321号目次