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楢俣川狩小屋沢
金子 隆雄

山行日 2006年6月24日~25日
メンバー (L)金子、越前屋、飯塚、土肥、山崎

 突然舞い上がる銀マットにシュラフカバー、倒れるビール、我々は何が起こっているのか瞬時には判断できずパニック気味だ。
 我々は狩小屋沢へ行くべく夜の関越道を飛ばして湯桧曽駅に到着した。湯檜曽駅には既に寝ている人達が居たので邪魔にならないよう改札を入った階段の踊り場で寝る前に一杯やろうとマットを広げて飲み始めた時にそれは起きたのだ。その後も電車が通る度に突風に襲われる。登り電車が通った時だけこのような突風が吹くのは電車がトンネルを抜けた後に真空状態に近くなったトンネル内に空気が一気に流れ込むのでこんなことになるのではないかと分析してみたが果たしてどうかな。電車が通る度にこれじゃ堪らないので風の来ない所へ移動してさっさと寝てしまうことにする。
 24日(土)、3日程前の天気予報では今週末は雨だったがだんだん良い方向に変ってきて今日は良いお天気となった。湯檜曽駅を後にして目的地へと向う。湯ノ小屋の笠ヶ岳への登山口を過ぎた少し先から奈良俣ダムへの道へ入る。流れ込んでいる川が楢俣川なのにダムは奈良俣ダムで更にダム湖はならまた湖という、何か変だな。T字路をキャンプ場方面へ向い道が二俣になったら右へ進むとゲートがあり車はここまでだ。ゲート前には沢山の車が停まっているが山菜採りの人達のようだ。
 ゲートから先の林道は3方向に分かれるが真ん中の林道へ入る。広くて余裕で車が走れる林道で、小楢俣沢を渡ってしばらくするとならまた湖沿いを行くようになる。
ならまた湖沿いの林道を行く  林道が楢俣川沿いを行くようになると道端にウド、タラの芽などの山菜もちらほら、今夜の酒のつまみに採りながら行く。入渓点の狩小屋橋は気が付かずに通り過ぎてしまい、5分程して気が付いて戻る。思っていたより水量が少ないので違うだろうと勝手に思い込んでいたようだ。橋の下から入溪し平凡なゴーロ帯を20~30分進むと泊れそうな場所があったので今日の行動はこれで終り。「えー、もう終り」と言う声も上がったが先へ進んでも泊る場所はないだろうからこれでいいのだ。
 雨が降ったら水路になりそうな場所だが降る気配はないので大丈夫だろう。タープを張って薪を集めて焚火の準備を終えても夕方までまだまだ時間はたっぷりある。あとは昼寝でも釣りでも好きに過ごせばいいだろう。  暮れなずむ頃になれば焚火を囲み山菜のてんぷらを摘みに一杯やる。街の暮らしで溜まったしこりのようなものが溶けだすように酒が染わたる。そしていつものように瀬音をBGMに眠りに就く。

山菜のてんぷら

 25日(日)、曇ってはいるが降りそうな気配はない。出発は7:30とかなり遅くなってしまった。2m滝を越えると早くも雪渓が現れる。これは安定しているので難なく上を通過する。5mナメ滝を越えるとまたしても雪渓がお出ましだ。今度の雪渓は凄い。雪崩のためだろうと思われるが土砂と倒木が堆積してジャングル状態で、雪渓上を藪漕ぎしながら進む。こんなのがずっと続くようなら今日中に帰れないぞと思ったが幸いにも100m程で途切れていた。
 雪渓がないところでは滝が連続し、ほとんどが登れるので楽しい。二俣手前で今度はスノーブリッジが現われ潜って抜ける。1時間半程で二俣着、右俣は雪で埋まっている。本流の左俣出合の5mナメ滝を越えるとまたしても雪渓が出てくる。滝、雪渓の繰り返しだ。5mトイ状滝の上には崩れそうなスノーブリッジ、両手両足のつっぱりで潜り抜ける。巨大な岩が現われこれを過ぎると傾斜の強い雪渓となる。かなり傾斜があるのでここはアイゼンを付ける。私はピンソールで代用したがピンソールは爪が短いので雪渓にはあまり効果がない。雪渓をトラバースする時に初めてザイルを使用した。この先に雪渓はなさそうでホッとする。
 連続する小滝を越えて行くと2段20m滝となる。下段は右壁を登るがホールドが少なく苦労する。右上するバンドからブッシュ帯に入って滝上に降りる。この滝が最後の滝。この辺りからルートを示す黄ペンキ印が時々出てくる。至仏山の岩峰群が大迫力で迫ってくる。露岩混じりの草付きでどんどん高度を上げ藪漕ぎなしで登山道へ出ることができた。
スノーブリッジ下のトイ状滝を登る  登山道に出ても人っ子一人いない。この時期は鳩待峠からの入山が禁止されているためかと思われる。下山は笠ヶ岳を経て車を停めたゲートまで戻るのだがコースタイムは6時間程、ゆっくりしている時間はないはずだがなかなか腰が上がらない。至仏山はパスして14時下山を開始する。直ぐ先に見えるピークは悪沢岳かと思っていたら小至仏山だった。ということは至仏山直下の登山道へ出たようだった。
 登山道にも雪が残っていて特に樹林帯になると雪が多くなり道が途切れてルートファインディングが難しくなる。ワラビ平で一旦林道に出る。ルートは直ぐにまた山道に入るようになっているが、もう直ぐ暗くなるので暗い山道を行くよりも時間はかかるが林道を下った方がいいだろうということになる。
 20:40ヨレヨレでゲートに到着。取り敢えず着替えて終電に間に合わせるために風呂も飯もなしで一路東所沢を目指す。途中スコールのような雨に見舞われながら何とか終電に間に合う時間に東所沢に着いて解散となる。
 初日のんびりした分翌日につけが回ってきた山行であった。

〈コースタイム〉
24日 ゲート発(7:55) → 狩小屋橋(11:00~11:30) → 幕場(12:00)
25日 幕場発(7:30) → 二俣(8:50) → 登山道(13:25~14:00) → ゲート着(20:40)

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