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編集後記

 雁を見たことがあるか?
 ガンモドキはよく食べるが本物の雁の肉は食べたことがない、落雁も口にはするが夕景の落雁は見たことがない、というのが大方の関東人ではなかろうか。
 雁は今でこそ北海道、東北と日本海側の北陸、山陰の一部にしか飛来しないが、昔は沖縄を除くほぼ全国に飛来していた。万葉集に見られる鳥が詠みこまれた歌六百余首のうち十分の一は雁に関するものだそうだ。雁はかつての日本では普通に見られる鳥だったのだ。数を減らしたのは明治になって狩猟が解禁されてから。戦後の高度成長期に入ると棲息できる環境が一気に消え、1971年になって漸くマガンとヒシクイが狩猟鳥から外された。天然記念物となった今では見られるのは姿だけで味は見てはいけないことになっている。
 雁が日本にやって来るのは越冬のためだ。9月中旬に飛来し5月初旬には最後まで残っていた北海道から全てが北の繁殖地に去る。警戒心が強く、浅い水面と広い見通しのきく水田が必要だ。雁と一口に言っても一種類ではなく、現在の日本で見られるのはマガン、ヒシクイ、オオヒシクイが多く、カリガネ、コクガン、シジュウカラガン、その他が少数ないし数羽稀に飛来する。因みに世界には15種類の雁がいる。大きさとしては同じカモ目カモ科に属する白鳥と鴨の中間だ。代表的なマガンで体重は1.8~2.5kg。両羽を広げると人が両手を伸ばしたくらいになる。体型は鴨よりも首が幾分長く腹がぷっくりしている。栗駒山の麓、伊豆沼で見た夜明けとともに群れが一斉に飛び立つ壮観な塒(ねぐら)だちと、夕方沼に帰ってきた群れが一斉にバラけて舞い降りる落雁の様は、世代を越えて日本人が育んできた日本の原風景を見るようで、強烈な体験であった。
 以前から気になっていたが、関東と甲府盆地を仕切る山稜にはなぜか雁の名がつくところが多い。北から、雁坂嶺、雁坂峠、雁峠、牛奥ノ雁ガ腹摺山、雁ガ腹摺山、笹子雁ガ腹摺山と並んでいる。いずれも大きな鞍部であったり鞍部を従えた峰で、標高も千メートルを超えている(笹子峠1096m~雁坂峠2050m)。風が抜ける鞍部は渡り鳥の通り道であろうし、地名が残っているのは編隊を組んだ雁の群れがそれこそ腹を摺るようにして山越えしてゆく様が昔は遠望されたからであろう。雁ガ腹摺山を越えてゆく雁の群れは今では遠い日の幻となってしまったが、鳥好きな山好きとしてはいつかまたその景色が見られる日がやってきてほしいと願わずにはいられない。

(服部寛之)

 今年の夏は随分沢に行った。企画山行で沢の例会を担当したこともあるが、毎週のように沢に行った。数年前台風で敗退した葛根田にも、三度目の正直で黄蓮谷にも行った。
 ところが、体重が増えているのに、昔の調子でやったから膝を壊した。一時は駅の階段もろくに降りられないくらいひどくて、しばらく山はダメかなと諦めかけた。息苦しい日々が続いた。それでも、しばらくきのこ山行やジムトレでリハビリを続けたら、どうにか歩けるようになった。
 で、今週末は例会に参加しようと思っている。とても嬉しい。
 今回のことであらためてよく分かった。「オラは山がないと息ができない」
 歳もとったんだし、余分な荷物を減らそうっと!

(メタボリック・K)

 最近、仕事が忙しくなってしまい、なかなか山へ行く機会が作れません。特に土日にかかる出張が多くなって、自由時間が少なくなってしまったことが大きな原因です。それに加えて岩つばめの編集もあり、今年の山行は、なんと僅か5回と近年の最低記録です。
 皆さんから寄せられた原稿を読みながら、いいな、いいな、あぁこの例会行きたかったなぁ、などと思いながら編集作業を進めました。
 厳しい原稿督促の甲斐(?)があってか、今号も大幅増ページで発行出来ました。
 皆さん、ご協力ありがとうございました。

(西尾)

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