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越沢バットレス-カン違いの巻!
竹内 豊

山行日 2006年7月30日
メンバー (L)小幡、高橋(俊)、天内、竹内

 「次はあの子よ」なんて噂がたっているかはどうか知らないが、前回の湯河原幕岩と同じ感覚で「越沢バットレス」に来てしまった。そのカン違いはとても大きなものであった。なんていったってバットレス!なのである。
なんていったってバットレス! 【バットレス】buttress(E)きょうへき【胸壁】山頂や稜線の直下にあって、それを支えるかのように切り立っている岩壁や岩稜。谷に向かって立ち並ぶのっぺりした大岩壁。 バットレスは、元は建築用語で、壁を補強するために作られた、壁から直角に張り出した一定間隔で並ぶ柱のような支えのこと。控壁。登山では壁の意味が強い。(IN登山用語集より転載)

 樹木林の小径を抜けてゆくと目の前に現れたのはその名のとおり切り立った岩壁だった。その姿を見た時に「ありゃ」という思いの他に「この壁を登るのだ。うれしい」といった変な感情も湧き出てくる自分に驚く。
 今回は小幡+竹内、高橋+天内で組み登ることとなった。用意をしていると他パーティもちらほら到着し、思いのほか登りにくる岩場なのだと実感する。正直なところ、初心者の僕としては初めてのマルチピッチだし、岩場を独占してゆったりと練習したかったがそうも言っていられない。この場所は僕達の所有物ではないのだ。なんとなく、お互いにどのルート行くの?なんて探りあいをしながら各自取り付く。マルチ初回という事もあり、2-数ピッチの「右」ルートから攻める。
割と大勢の人が練習に訪れる  小幡氏より「俺が先に登るので声が掛かったら登って来て」とのこと。小幡氏リードで快調にザイルが伸びてゆく。岩場でのビレーはとても緊張する。ある意味において命を託されているからだ。また、越沢バットレスは湯河原幕岩のやわらかい感じと違って、雰囲気や岩の触感全てに厳しい印象がある。それがこの岩場の個性なのかもしれない。
 1ピッチ目、完全に姿が岩影に隠れ、ザイルが揺れている。どのくらい時間が経ったのだろう? なかなか声がかからない。おかしい。しかしどうしたら良いのか...。
 なんて考えていると小幡氏が岩影から降りてきて「どうして登ってこね~の」とのこと。
「ありゃ」コレか。岩場ではコールが届かねぇってことは。その後もセカンドで行くも、登攀中ザイルが弛んだまま登ってしまい、またまたご指導を頂く。一回歯車がずれたら、うまく噛みあわせる努力をしないといけないなと反省する。また、僕の場合は殆どが書籍からの知識のみで、机上の空論とはよくいったものだ。実際に体験して感触をつかまないと覚えないものだと痛感した。
 2本目の「第2スラブ」もマルチピッチで緊張した後の初実体験40m懸垂下降×2だったりしたのでやっぱりまごつき、おまけに次パーティのプレッシャーもあって自分としては最善を尽くしたが不本意な練習となった。たぶん、一番大変だったのはパートナーの小幡氏だったと想像するけど・・・。ちなみに高橋+天内組は岩登りを堪能した模様である。高橋氏の笑顔がそれを物語っていた。
 その後、時間もそろそろ良い頃合だし、疲れたから(僕は精神的に)下山しようと相成り、駅前の蕎麦屋で一杯やろうとしていると、その日に余毛沢に入渓していた鈴木さんパーティと偶然にも逢う。
 なんか思いかげず仲間と逢うのはうれしい。
 おまけにそのパーティには「おためし山行」を体験している方がいて隊長の笑顔がこぼれたのはいうまでもない。
 帰りの電車では飲み過ぎて「NATURE(かな?) CALL」がかかり途中下車したり、下山報告に不備があったりなど最後までしまらなかったけれど、蕎麦をつまみながらビールを飲み、つらつら思った事は『初心者は常に混乱している』。この持論を体験できた一日であった。
 経験や知識とともにそういった混乱もおさまると思うが、なによりも、出来る限り皆と一緒に行ける山行を増やし、ちょっと照れくさいが『信頼という名のザイル』を仲間と結びたいと強く思った。


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