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丹波川・小室川谷
小堀 憲夫

山行日 2006年8月12日~13日
メンバー (L)小堀、飯塚、安齋、野口(芳)、天城、深谷、平、平林

 今回は、沢登り企画山行・初級コースとして、小室川谷を企画した。金曜の夜10時、東京駅丸の内南口のキオスク前に集合。皆、時間どおりに集合し、天城車と小堀車に分乗して出発した。いつもよりギャーギャーうるさいなぁと思ったら、小堀車の後ろの席はI嬢とF嬢だった。納得・・・。
 首都高に乗り、しばらく走っていると、携帯に電話がかかってきた。転勤で名古屋に居る松尾氏からの久々の電話だった。
「オー、久しぶり!」
 とばかり、暫し歓談。向こうはこれから谷川岳に入るとのことだった。しばらく走っているとまた電話がかかってきた。よく電話がかかってくる日だ。
「もしも~し、野口どぅえ~す」
 と何やらご機嫌の様子。
「差し入れを持って行こうと思うんだけど、もう出ちゃった~?」
「もう、高速走ってるよ。ご機嫌だねぇ。野口さんも後から来たらぁ?」
「まだ会社~、仕事じぇんじぇん終わりましぇ~ん。絶望的~」
「働きすぎだよ。人生遊びもなくちゃあ」
 半分冗談で誘っている内に、ほんとに来ることになった。
 その夜のビバーク地は、野口氏にも分かり安いように奥多摩駅そばの、もえぎの湯の駐車場とした。例によって寝酒ミニ宴会。女性陣は元気だった。朝起きると、テントの外で野口氏がニコニコしていた。
 三条新橋から泉水横手山林道に入った。前に来た時の記憶がすっかり消えていたので、車をゆっくり走らせながら、どこから降りれば良いのかしらんと、皆で小室川谷の出合を探しながら進んだ。だが、進めど進めどそれらしいものは見つからなかった。だいぶ奥に入った後、漸く明瞭な出合にぶつかった。それでも、そこが小室川谷であるとの自信がなかった。メンバーの中からここに間違いないとの意見もあって、身支度を済ませて入渓したが、どうも印象が違った。案の定、暫く行くと堰堤が出てきて、大黒茂谷とあった。
「アチャ~!」
 平身低頭メンバーに謝り、撤退。車で来た道を戻ると、林道の下の方に出合らしきものを漸く発見した。最初から高度計をセットして探せばこんなことはなかったのにと反省しつつ、踏み跡をかなり下まで降り、出合であることを確認した。時間をだいぶロスしたが、皆、文句も言わず気を取り直して改めて入渓。
 ああ、ここだここだと安心して進み始めたのもつかの間。核心部のS字峡の手前まできた時、突然雨が降り始めた。それも結構激しく、雷まで鳴り始めた。両岸はゴルジュで、逃げようが無い。野口氏は夕べあまり寝ていないはずなのに、一人元気に泳いでいた。野口氏の元気に励まされ、早く抜けきろうと先を急いだ。核心部のS字峡は結構水量が多く、下から見ると、懸垂をした後のへつりが難しそうだった。大高巻きしようか、へつってみようか迷ったが、通常のルートどおり右岸に上がり、上から覗いてみると下から見るほど難しそうでもないことが分かった。時間はかかったが、全員懸垂とへつりで無事核心部を通過した。人数が多いのでザイルを出すと時間がかかる。それでも、大高巻きの方がもっと時間がかかりそうだったので、良かった良かったと一息ついた。その後も結構な滝が続いて気を抜けなかった。安齋氏のクライミング技術に助けられながら進んだ。長い沢なので、最低中ノ沢までは進んでおこうと、頑張って歩いた。やがて前方に焚き火の匂いがし始め、幕場が近いことを教えた。先行者が3人もうすっかり出来上がっている様子で、
「おおっ、大勢でご苦労さんだね~。少し先に広い河原があるよ」
 6時ころ幕場着。初級にしては少し厳しい沢旅になったなぁと思いながらも、とりあえずここまでこられた安心で、黄金の泡水で乾杯。深谷さんが用意してくれた鍋も美味しくいただいた。ただ、薪が少ない上に濡れていて、焚き火がなかなかおこらず、少し寒い宴会だった。皆疲れていたので自然に早めの就寝となった。
 翌朝は、平さんが用意してくれたバナナとチーズのオードブル付き雑炊で元気をつけて出発。途中、4段30mのナメ滝の前は左岸を大高巻きして懸垂下降。そのナメ滝では、沢が始めてのH氏が身体が軽いせいか、思いっきり滑った。だが、ここの下部は、滑ってもさほど問題はない。その後も滝が続き楽しめる。それにしても長い、長~い沢だ。遡行図のコースタイムでは、中ノ沢から3時間で大菩薩嶺に抜けるとあるが、とんでもない。倍以上時間がかかってヘトヘトになって稜線に出た。
 予定より大分遅くなっていたが、天気も良く、稜線では安齋氏提供のカンチュウ杯で乾杯。皆ポカポカ天気の中着替えを済ませ、下山にかかった。と、安齋氏から信じられない提案が。
「だれかぼくと一緒に走りませんか~」
 バテバテで歩くのがやっとのリーダーの亀さんペースに、元気な走りの虫が耐えられなくなったようだ。
「いいですよ。走りますか」
 と答えたのはこれまた元気な天城さん。どうせ走るのなら先に行って車を回収しておいてくださいと、車のキーを渡され山岳ランナー二人は大菩薩嶺を越えて直ぐに見えなくなった。残りのメンバーは、それぞれのペースで丸川峠経由で下山。リーダーはヘロヘロ。
 下山口には二人のザックが仲良く並んで置いてあった。ほんとに走ったんだと、驚き感心。暫くすると安齋氏が野口車に乗って到着。が、待てど暮らせど天城車がやってこない。やがて歩いて到着した天城氏、
「すぐそこで脱輪しちゃた。皆で持ち上げればなんとかなると思うんだけど」
 男衆で現場に行ってみたが、とても人間技では無理な状況。天城車はそのまま放置し、野口車で残りの小堀車を回収しに行き、時間はかかったがどうにか全員下山した。
 楽しみにしていた、めのこい湯はタイムアウトだったが、もえぎの湯に入って汗を流し、時間が遅かったため食事は抜きで家路を急いだ。
 ちなみに、天城車は翌日JAFにより無傷で無事回収されたそうな。メデタシ、メデタシ。
 色々盛りだくさんの山行だった。

三峰バンザーイ!

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