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苗場山・曲り沢
越前屋 晃一

山行日 2006年7月29日~30日
メンバー (L)越前屋、金子、高木(敦)、成田、山崎

 長引く梅雨の明けきらない7月最終の週末の沢登りだった。残念ながら苗場山にも曲り沢へも行くことができなかった。言い訳がましいが、この冬の豪雪通行止めで報道番組を賑わわせた国道405号線、秋山郷からの入山でも残雪による沢の増水の影響はさけることはできなかったようだ。要するに敗退の記録なのだが、次の機会にむけたステップとして記録に留めたい。
 この曲り沢は『岳人』98年9月号の特集「ぼくの単独行」に寄せられた旧浦和浪漫山岳会の池田知沙子さん(故人)の記事で知ったものだった。曲り沢を遡り、姿を現した「天狗の庭」の様子が謳うように綴られた文章が忘れられずに長い間暖めてきたこの沢旅を久しぶりの例会山行として提起した。
 昨夜は405号線津南町児玉で夜間通行止めになり、公衆トイレのある駐車スペースで仮眠をして、翌朝、目的の栃川温泉休憩所に到着すると、驚いたことに休憩所はすっかり廃屋になっていた。階段は草生し看板は撤去されていたのだ。5、6台の駐車スペースがあるので、そこに車を止めて林道を歩き始めた。
 林道を10分ほど歩くと最初の渡渉がある。撤去されたのだろうか、あるいはまた流失してそのままになっているのか、栃川にかけられていた橋はなく橋脚のみが残されていた。
 栃川を遡行するか尾根から藪を漕いで白岩沢に入るか最後まで迷ったが、栃川が増水していたこともあり平太郎尾根へ乗ることを選んだのだが、すでにそのルートは廃道化していた。
 しばらく、行きあぐんだがまもなく踏み跡も明瞭になり赤テープも見られるようになって来た。途中で栃川に流れ込む小沢でやっと水にありつき、ほっと一息をついた。いったん、登り返してからようやく再び栃川があらわれ靴を脱いで渡渉。この先、トラロープが張りめぐらされた急登がつづくのだが、一般登山道というには首をかしげたくなるような状態だった。
 この平太郎尾根は「エアリア」谷川岳では実線で表記されているが、2005年版「エアリア」志賀高原では破線の「登山道ではない小道」となっているらしい。しかし、本屋で確認(立ち読みということだが・・)してみると2006年版「志賀高原」では再び実線に復帰している。「谷川岳」にあわせて統一したのかもしれないが、ハイカーが下りにでも使ったらかなり苦労するかもしれない。
 事実、下山にこの道を使うと雨上がりの濡れた急坂とトラバースはよくすべってくれた。もっとも、こちら側の苗場山からの下りは小赤沢コースに集中しているようなので余計なおせっかいなのだろうか。
 1344m、4合目の指導標の場所から、平太郎ゾネノ沢と白岩沢の出合に向かってネマガリの藪を突っ切りようやく入渓。水量比が少し小さくみえるのでついそのまま進んでしまうが白岩沢は左岸から入ってくる黒い模様のある方だ。水量はかなり多くF1を右岸から高捲。やがてF2が・・・。柱状節理逆層、10mほどの滝だ。左岸の泥壁を泥をほじくってホールドとスタンスをみつけ、木の根にランニングビレイをとりビビリまくってピッチを切って先を見ると、また10mの2段目が続いていた。「もう、勘弁してよ」という気持である。今日は満足な装備をもってきていないのだ。
 3人を確保して最後にSLをやってもらっている金子氏につるべで継続してもらい下降ポイントで先をみると、ゴルジュから怒涛の滝が噴出しているではないか。未練たらたらだったが、というわけで今度の遡行はここで打ち切りということになった。せっかく登った泥壁の懸垂下降はことさらにむなしいものだったが・・・。最後の私の下降の頃になると雨が降り出し、足下はズルズルに・・・。
 F1のそばの小高い平地でタープを張って、土砂降りの雨の中で一夜をすごし、翌朝はのんびりと沢の朝を楽しみながら、出発の準備をする。まぁ、いつものことながら、敗退ではあるのだが、酒を酌み交わした前夜のなごりの風景が泊場にただよっていた。
 出合に戻り1344mPに向かいコンパスを設定して直線的に藪を漕ぐこと50分、登山道(平太郎尾根)4合目に着く。たぶん梅雨明けだろう。雨上がりのピーカンの空を見上げ噴出す汗をぬぐい、崩壊した登山道の急降下はヒヤヒヤものだった。
「こんどはあそこのゴルジュを見ないとね」と総括っぽくまとめて、鳩首検討の結果たどり着いたのは、小赤沢コースの下にある「赤い温泉・楽養館」。
 立ち寄り料金300円は格安。WEBでは500円になっているのだが、なぜなのだろう?
 鉄分たっぷりのお湯は赤く錆び色。うたい文句は濃度が倍だとか。
 苗場山のツアー客などで混み合っていることもあるようだが、わたしたちが行った時間はピークをはずした2時過ぎだったせいか静かなものだった。
 館内の食堂で食べた「岩魚丼」900円は塩焼きの甘辛煮(あえて言っておくが甘露煮ではなかった)の乗った丼だった。タレがおいしくぎりぎりセーフだったが、ただし言っちゃ悪いけど岩魚は16センチぐらいで完璧にリリースサイズだった。自慢ですが、わたしなんか、このあいだ27センチをリリースしたばっかりなのだが・・・


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