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丹沢水無川本谷
平 真里

山行日 2006年7月8日
メンバー (L)小堀、別所、高橋(俊)、橋岡、峯川、前野、石川、竹内、平

7月8日(土)曇り
 8時渋沢駅集合。週末ごとに雨の降るこのごろ、お天気が心配されたが、薄日のさすまずまずの天気。丹沢のハイキングには暑すぎる7月、大倉行のバスは立っている人もまばらだった。終点の大倉バス停で下車、巨大なつり橋を渡ってすぐ左折。平坦な登山道を、時折車をよけながら歩く。作次小屋までコースタイムにして1時間45分とある。喋りながら歩いてもなかなか着かない。汗だくになり水が待ち遠しくなってきて、途中の水場で、顔を洗った。
 小屋の裏手をさらに歩き、入渓口にたどりついたときは、10時になっていた。すでに別のパーティが身支度を整えている。こちらも身仕度をして出発。足首程度まで浸かる水が心地よい。いくらも歩かないうちにF1。滝の横にしっかり看板がかかっている。10m、高い。これを登るのか・・・と見上げて思案していると、時間がかかりそうだからと、あっさり巻いてくれた。さらに歩いてF2は、F1より低くしかも鎖つきで難なく通過。左壁を思い切り鎖に頼って登る。大岩を通過して、ひらけたところで休憩。きょうの核心、と思っているF3はまだ先の模様。
 F3の看板の横には滑落事故多発と書いてあり、緊張感を誘う。ロープを張ってプルージックでかけかえをする、というリーダーの指示があり、やり方の説明がある。まず俊介さんがリードして、後続部隊は、ロープに数珠つなぎになった。右壁を行くのだが、途中、岩の張り出しているところをトラバースするところがいやらしく、核心。登るとすぐに、結び目を引っ張るのを忘れてしまうのが気になる。水平移動にうつるときに、手がかりがなくなり、思い切りヌンチャクをつかんでしまった。直後に1回目のかけかえをするが、進めない。かけかえ方を間違えて、最初からやり直し。ちょっと、岩を回り込む途中の不安定なところで、2回目のかけかえ。決めた足場がすべりそうで、必死になる。そこを越すと、足場のしっかりしたところでひと安心。くつろいで待っている観客になり、きょうの課題は終了とばかり座って待つ。
 時に小さな滝で水遊びしながら進む。汗をかいても水のおかげで快適。わざと水に濡れるように進路をとっているのだろう。ちょっとした水流がある段差を登るように促されて(というか巻き道をさえぎられて)、試みるも、流れに足をとられて頭からずぶぬれになった。押し戻されては取り付き、真剣になっているのは私だけで、笑い声が降ってきた。
 巻いたり登ったりのF5、F6(もう忘れてしまった)。分岐を金冷シ沢にとり、沢が尽きるとザレ場に突入する。最初こそラクと掛け声がかかるたびに驚いていたが、落石を起こさずに歩くのが不可能な道なので、きたきた、と思うだけになった。涸れた沢を1歩1歩くごとに砂礫が降るので、体勢が不安定で歩きにくい。落ちたくないと思うあまりに、足が踏み出せなくなり、列から離れてしまうと、樹林の影に、待ってくれている姿が見える。樹林に入ってほっとしたのもつかの間、急な傾斜は終わらない。手も足もずるずる滑りそうになりながら、前の人を追いかけた。きょうの佳境はここだったようだ。
 やっぱり丹沢だから急なのは仕方ないとあきらめ、淡い期待は抱かずに歩く。14時を過ぎると予報にたがわず雨が降ってきた。ようやく塔ノ岳山頂に着いたころには、15時半をまわっていた。誰もいない。
荷解きをして乾杯。お酒がまわって大倉尾根を下る自信はまったくないので、私は自制。ガスで何も見えない山 頂で、とりあえず証拠写真を撮り、下山開始。踏みならされた登山道を惰性で下る。花立山荘で休憩。こんなところでケータイが鳴るのだと思って、確認すると、明日表尾根を歩こうというお誘いだった。さすがに2日続けて丹沢を歩く気持ちはないのでお断り。リーダーはまたビールを飲み、のんびり休憩。そこで足の調子が良くないと言っていた前野さん、石川さんを待つがいっこうに現れない。迎えに出ようとして、引き返していくらもしないうちに、2人と遭遇できた。
 山荘で合流して再出発。17時である。下山のスピードにはついてゆけないだろうと、後ろにまわって歩く。先ほど合流した2人が、自分たちを追い越して先に行くようすすめるので、息抜きは許されなくなり、足を速めた。沢と雨で冷えた体も暑くなり、雨もやんだので合羽を脱いでいると、たちまち遅れる。大倉着、18時半過ぎ。
 渋沢駅前のいろはで反省会。反省会は21時過ぎにおひらきにして、帰途につく。自宅に着いたのは0時、長い1日だった。
 楽しかった。水面に映る濃い木の影、水流に逆らって滝を登る気持ちの高まり、巣から落ちてしまった鳥の雛の姿、久しぶりに見た沢蟹。忘れられず、原稿を書いているとその場にいるような気になって、なんともうれしくなる。だから塔ノ岳山頂でいきなり原稿を書くように言われても、感謝こそすれ文句は言えない(対価にしては安い)。それで写真も撮っていませんでした、ごめんなさい。

〈コースタイム〉
大倉(8:25) → 戸沢(9:40) → 入渓(10:10) → F1(10:4) → F3(11:40) → F5(12:20) → 書策新道(12:35) → 金冷シ沢出合(13:25~13:40) → 表尾根(15:30) → 塔ノ岳(15:40~16:05) → 大倉(18:30)


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