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西丹沢・小川谷廊
山崎 邦子

山行日 2006年8月6日
メンバー (L)佐藤、紺野、越前屋、成田、山崎

 以前から「日帰りながら、適度なゴルジュや釜があり、水流もあって水遊び的要素の強いワクワクする沢」と、周囲から楽しそうな話を聞いていた小川谷廊下。暑さ真っ盛りの8月上旬に前夜祭付きの例会山行計画が出ていたので、「これは行くしかない!」とエントリーした。なんせ、前夜は私の○歳の誕生日。もう祝うなんて年じゃないけど、何でも理由をつけての宴会は楽しい。
 穴ノ平橋たもとの河原に5日の15時過ぎに全員集合し、焚き火宴会がスタート。明さん持参の牛フィレ肉のグリル、誕生祝いに戴いたワインなど、豪勢なメニューや花火で盛り上がり、就寝時間は??? ほとんど雑魚寝で一同熟睡ZZZ
 6日は朝から晴れ、絶好の沢日和! 5時起床で時間はたっぷりあるので、ゆっくり朝食をすませ、身支度をして6時半に出発。穴ノ平橋から少し林道を戻ると、弥七沢が合流する手前の左塀の上に沢へ下るような道があったので、塀に登って道へ入る。植林の中の急降下だが、しっかりと踏み跡があった。下った地点はどこの河原なのか~と上流、下流を見回すと、上流の河原の木に小さく「小川谷」のプレートを発見。越前屋さんがトップで、私、紺ちゃん、成田さんの順でスタートする。リーダーの明さんは、最後尾からカメラを持って撮影担当に徹する構え。
 10分も歩かないうちにゴルジュの様相を呈した小川谷廊下の入口に到着。いきなり2mのF1が現れる。聞いてはいたが本当に水勢が強い。滝は当然登れない。先行パーティーが滝の右側の岩をお助けロープを出しながら登っている。「最初からロープ?」と内心ビビッたが、登ってみると以外とスムーズだった。
入口にかかるF1  越えるとすぐに第一の関門、F2・5mのチョックストーンの滝。先ほどのパーティーの前にもワンパーティーがいて、既に渋滞の兆し。「人気のある沢なんだなぁ~」と感心・・・なんて暇はないのだが、とにかく順番を待つしかない。沢の真ん中に大岩があり、左右どちらからでも登れるが、左側は水量が多くて難しいので、右側の残置シュリンゲをアブミにして倒木を頼りに登る。越前屋さんはスラリと越えたが、私はフラつくアブミは苦手。足上げも大きいし、倒木はヌルヌルで滑るし、登るのに四苦八苦!
F2はシュリンゲのアブミで何とか登った  ここからは快適な小滝帯♪~と思ったら、F3の連瀑の手前が人だかり!足場がしっかりあってザイルなど不要な場所なのだが、数十人もいる大パーティーがザイルを出して登っている。それを見ながら滝待ちするパーティーも2、3組。「こりゃあ、時間かかってダメだ~」と越前屋さんと紺ちゃんが高巻きして先に出られないかと、左岸を登り始めた。岩肌を覆う満開のイワタバコの花を見ながら、ガラガラのルンゼを私も続いて登ったが、上から「ダメだ~降り口が悪い」との声。沢に引き返すと、全パーティーが既に登っていなくなっていたので、いい時間つぶしにはなった・・・。
F3では大渋滞!  ここからは快適に登れる滝が多く、シャワークライムを楽しみながら進む。途中で大パーティーも追い抜き、やっと自分たちのペースで遡行できるようなった。第2ゴルジュ帯にかかるF6・5mでは、残置シュリンゲを持ちながら滝の右のツルンとした岩をへつるが、足場がまったくない。落ちたら深い釜にザブンだ。それもいいが、やっぱり全身濡れたくないので、越前屋さん以外は全員右側を巻いた。ほどなく小川谷で有名な「ツルツルの大岩」に到着、8時半。ガイドブックではここまで入口から3時間とあったが、2時間弱しかかからなかった。
 大岩は表面にうっすらとコケがむしていて見るからに滑りそうだ。斜度も結構ある。上部からザイルが2本垂れていた。有るものはすがるに限るので、みんなザイルを持って登ったが、越前屋さんだけは「自力で登る!」と裸足になって挑戦した。が、ものの2、3歩でズリ落ちてしまった。昔は登れたそうだが、大岩も多くの沢靴に磨かれ、老いてツルツルになってしまったというトコロか。

第2ゴルジュ帯は快適に登れる滝が多い 小川谷名物のツルツル巨岩

 大岩を過ぎると明るく陽光の入るナメ状になり、何とも気持ちがいい。そんなのどかさも数分で終わり、ほどなく暗い第3ゴルジュに突入。沢は屈曲し、滝の両側の岩は水流でスプーン状にえぐられている。傾斜がなければ良い足場となるが、傾斜があると表面は凹凸がないためツルンツルンで長くとどまっていられない。当然へつりも難しく、何カ所かは覚悟を決めて「えーい、入ってしまえ~!」と釜から取り付いた。ちょっとした傾斜の滑り台状のテカテカ岩では、成田さんがふんばれなくて釜に滑り落ちたり、おかげで皆、思う存分水と戯れることができた・・・。
第3ゴルジュ帯は深い釜のある連瀑帯  やがてF11。石棚と呼ばれる小川谷最大の2段20mだ。さすがに登れないので(ザイルを出して下段の滝を登っているパーティーもいたが)右岸の岩場を登って高巻いたが、これが私の苦手な登攀もどきの30m直上。草付きのトラバースも嫌だけど、こんな直上も嫌だなぁ、落ちたら一環の終わりだ・・・などと考えながら緊張して登り、上段の滝の落ち口に降りる。本には50mザイル必要と書いてあったが、岩場で使うってことなのかな?
 とにかく、我々はここまでザイルを出すことなく順調に進み、最後のF13トイ状15mへ。登攀意欲をそそる直瀑だが、ちょっと上部が被っているようで、私にはとても登れそうにない。越前屋さんが早速、右壁を登り始めた。お手並み拝見と一同見守ったが、最後の一歩が出ず、なかなか上がらない。見かねた明さんが、左の巻き道から上がり、お助けロープを出しつつ写真撮影(なかなかグッドなアングルですね)。
最後のF13を登る  結局、ルートを右側に取りすぎたようで、左寄りの滝の中にガバを見つけて見事に越前屋さんフィニッシュ。続いて私。当然、ザイルで確保してもらう。途中までは登れるが、さっきの越前屋さんと同様、足場があるのでついつい右側に寄ってしまった。そうなると最後は被っていて登れず、結局引っ張りあげてもらった。私がヒイヒイ言って登っている隙に、成田さんは巻き道でちゃっかり登っていて、紺ちゃんは私に続いてザイルをゴボウで登ってきた。振り返ると、我々のすぐ後ろから来ていた若者パーティーの女性が、紺ちゃんの後からノーザイルで滝の右端をスイスイと登ってきた。すごいですねぇ~と言ったら「滝の中に手、足場があるので、こっちの方が登りやすいんですよ~」とのこと。聞くと地元山岳会で何度も来ているという。次にここに来る時は、私もこの滝を登れるようになっていたいものだ。
 最後の滝を登りきると、パーッと眼前が開け、日差しがいっぱいに注ぐゴーロ地帯。ここで遡行は終了。堰堤まで行かずに、手前から登山道へ上がれる踏み跡があったので、河原で沢装備を解く。沢登りが終わった後の達成感と、緊張感が解けホッとするこの時間は何と心地いいのだろうか。あとは登山道を下るだけだ・・・って、この下山道がまたヒドかった! 丹沢は本当に年々やせ衰えているのだろうか、あちこちで道が崩れ、寸断され、片足しか置き場所が無いような草付きも数カ所。せっかく解いた緊張の糸をまた締め直して穴ノ平橋まで下ったのだった。
 駐車場では、明さんが用意してくれたスイカを皆でたらふく食べ、水腹になったところで解散。天候にもメンバーにも水量にも、ごちそうにも恵まれ、日帰りながらも内容盛り沢山で大満足の沢だった。

〈コースタイム〉
穴ノ平橋(6:30) → F1(7:00) → ツルツルの大岩(8:30) → F13(10:00) → 遡行終了(10:30) → 穴ノ平橋(11:30)


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