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矢岳
道祖土 巌

山行日 2006年9月30日~10月1日
メンバー (L)鈴木(章)、川崎、峯川、道祖土

 この日は、私だけが秩父駅からバスに乗り、リーダーと他のメンバーとは西武秩父で同じバスに乗り合わせることになっていました。秩父駅に到着し私一人でバス乗り場に待っていると、なにやらタクシーの運転手が寄ってきて「どこの山に行くのか、一人で行くのか」と、まるで問いただすかのように聞いてくるので仕方なく地図を取り出し説明をしていると、後からもう一人寄ってきて「そんなルートを行った人は最近聞いたことがない」とのこと、私は8時に出てしまうバスの方が気になりすでに10分近くも過ぎているのにバスが来ないと思っていると何と後から寄ってきた人がそのバスの運転手で、結局定刻よりも15分程も遅れ乗客は私一人で出発しました。多分、西武秩父駅のバス停で待っていたメンバーの方々は、遅れるはずもないバスがなかなか来なくて少し心配していたかも知れません。でもこのマイクロバスは、貸し切りの状態で金倉橋に到着、そのころは少し晴れ間もでてきました。
 歩き出して暫くすると集落のおばあちゃんとすれ違い「そこの家の軒先の柵をはずして行ってください」とのこと。おばあちゃんはその民家の住人だったらしく本当に一言二言の会話でしたが山里で出会う地元の方とのほっとするやり取りでした。登山道に入り、しばらくすると586mの地蔵峠に到着。お地蔵様と巨木がありここまではハイキングコースになっているようでした。
二十三夜塔もある地蔵峠  ここからは快適な尾根道ですが、廃村となった細久保集落へ続く分け道がいくつもあり往時が偲ばれます。しばらくは順調に尾根道を進みましたが、徐々に笹薮が濃くなりだし大ドッケの登りから独標、大平山手前までは背丈以上の薮を掻き分けての行動となりました。それでも踏み跡がなんとかあり、迷う心配もなく藪の中を泳ぐような感じで進みます。天気もよかったせいか不快感もなく藪が少なくなりだした頃には、大平山に到着でした。ここからは、長沢背稜からの往復コースとなっているようで多少の藪はあるものの一般道の雰囲気です。天目山林道(大クビレ)に下り、七跳山へ登り返すとリーダーが、足元にきのこを発見、あたりを注意してよく見回してみるとブナハリタケを発見!つづいてサンゴハリタケも見つけ思わぬ収穫となりました。後は、酉谷避難小屋で少しゆっくりするため足早に長沢背稜に向かうことしました。
大収穫のサンゴハリタケ  長沢背稜に入ると正面から一風変わった登山者が向かってくるのが分かりよく見てみると短パンにランニングシャツ姿、本人曰く戦前の昭和3年生まれ、今日は雲取避難小屋から来たとのこと、ついでに酉谷避難小屋の様子をたずねるとマグロとイカの収穫があったとの意味不明の返事が返ってきました。その場では、戦前戦後に苦労しながらも長生きをして今は山登りを生きがいに楽しんでいる元気なお年寄りなのだろうと素直に受けとめました。しかし小屋に到着してみてやっぱり気になるのはマグロとイカのことで、その意味(マグロ→赤い物/イカ→鋭い→ナイフ)する収穫とはよくよく考えると、先週来た深谷さんが小屋に忘れた登山ナイフのことかもしれないというのが、峯川君の見解でした。真相は分かりませんが、小屋にはすでに登山ナイフは見当たらなかったですし、冷静に考えるとその素振りがかなり気になる反応だったのは確かでした。
 それ以上詮索することはやめて酉谷避難小屋ですが、水場も近くいつもきれいな小屋でこの日はまさに貸し切りの別荘でした。ここで山行前リーダーに矢岳北尾根行きを掛け合い却下されながらも単独で来ると連絡をしていたN氏の到着を待ちました。しかし遅くなっても姿が見えず、詳しい行動予定も分からないのできっと出なかったのだろうと思い、夕食の準備にとりかかり、きりたんぽ鍋に採れたてのきのこを入れて賞味して、色々と話をしているうちにちょうどいい疲れも感じ21時前には、就寝しました。
幻想的な長沢背稜主尾根にて  翌日は5時45分に起床し、出発前に峯川君が再度小屋のノートに目を通すとN氏は昨日北尾根を登り時間が早かったので日帰りしますとの伝言を見つけ、昨日の心配がいっぺんに取り越し苦労に変わってしまいました。そうこうして雲行きの怪しい中を出発、せっかくなので矢岳分岐までは、尾根道を行くことにしました。途中、少しの晴れ間から薄日が差すと初秋の雑木林と薄日の醸し出すコントラストがなんとも幻想的でその光景は感動的でした。
 ただ矢岳分岐あたりから目につきはじめた「東京ガス1997」のグリーンのテープ多さには、少し興ざめしてしまいました。それでも赤岩ノ頭あたりの岩場や何回か続くアップダウンは変化があって楽しく、木々も徐々に色づき始めていました。素敵な光景で目まで良くなりキノコ目になったのか、またこの日も途中でサンゴハリタケを見つけ、お土産に持ち帰ることにして間もなく矢岳に到着。ルート的には全く危険箇所もなく、迷う箇所もテープの多さにより全く皆無でした。
樹林に囲まれた矢岳山頂にて  リーダーがN氏の主張した北尾根を確認したあと下山路を進みデンゴー平はよく確認できないままに通過、篠戸山を経由し大反山のトラーバス路過ぎの分岐で尾根をひとつはずしたものの集落はもうすぐであり、運動会の行進曲が鳴り響く中12時前には下山しました。下山した途端に雨が降り出し、この日、そばの花祭りで賑わっていた駅前での昼食をあきらめ電車で三峰口まで行き、駅前のそば屋で天ぷらそばを食べることにしました。三峰口には、ちょうどその時間にSL列車が到着しており、峯川君がSLに乗って帰りましょうとのこと、リーダーと川崎さんは数十年振りに、峯川君と私は初めてSLに乗り帰途につくことにしました。私以外は御花畑駅で下車したため気が付かなかったかも知れませんが、SLは速度が、かなり遅いうえに写真撮影のためか駅での停車時間も長く、途中でいい加減乗り換えようとも思いましたが、急ぐ必要もないし、特別料金もかかっていたので、気長に乗り続けてしまいました。  今回は、一度に奥秩父から奥多摩までの静かな初秋の山をゆっくりと堪能することできました。皆さんありがとうございました。

〈コースタイム〉
9/30 金倉橋(8:45) → 地蔵峠(9:10) → 鉄塔(9:30) → 大ドッケ(11:20) → 大平山(13:10~13:20) → 大クビレ(13:30) → 七跳山(14:15) → 長沢背稜縦走路(14:30) → 酉谷避難小屋(15:20)
10/1 酉谷避難小屋(6:05) → 矢岳分岐(6:45) → 赤岩ノ頭(8:10) → 矢岳(8:45~9:00) → 篠戸山(9:55) → フナイド尾根分岐(10:15) → 大反山(11:00) → 下山(11:50) → 武州中川駅(12:10)

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