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横尾本谷右俣
土肥 雅美

山行日 2006年8月26日~27日
メンバー (L)越前屋、金子、成田、土肥

 前夜、八王子駅南口に集合して越前屋さんの車で沢渡まで行き、駐車場で仮眠。翌朝、バスで上高地まで入ろうとしていたら客待ち顔のタクシーが駐車していた。料金を聞いてみると、4人だとこちらの方がわずかながら安いことがわかったのでタクシーで上高地まで。上高地バスターミナルから6時に歩き始める。結構たくさんの人々、さすがに上高地だけあってみなファッショナブル。明神、徳沢と順調に過ぎ、横尾に8時半前に到着。ひと休みしてから吊り橋を渡り、左手に屏風岩を眺めながら歩くこと1時間弱で本谷橋に着いた。
 横尾本谷は、この本谷橋を渡らずに、そのまま沢の左岸を直進して、ゴーロの沢に降りる。快晴の下、水飛沫が陽の光にきらめき、ごろんごろんした白い大きな岩に映えて美しい。やっぱりアルプスは豪快。今回は沢装備は不要ということだったので、普通の靴だったが、濡れないように場所を選んで行けば問題なかった。沢靴なら水に入ってしまえば楽そうなところもあったものの、わざわざ持っていくほどのこともあるまいというリーダー判断だった。右岸を見上げると、涸沢への登山道には人がたくさん見えるがこの沢筋はほかに誰もいなくて爽快だなぁ。
 と、しばらく行くと前方に4人ほどのパーティーがいるではないか。それも男の子2人を含むファミリーである。最初に思ったのは、間違って入ってきちゃったのかな?まさかね。 ちょっとだけ行って戻るつもりなのかな?でもその気配はなさそう。途中から涸沢への登山道に上がる踏み跡でもあるのかな?こんな岩ばかりのところはお母さんのストックはしまったほうがいいんじゃないかな? ・・・しかし、すべては余計な心配でした。この4人は、高校生の息子がお母さんをストックで引っ張り上げたりしながら、とうとう右俣を登り切ってわたしたちより先に南岳小屋まで行ってしまったのだ。わがチームのリーダーは、むむむって感じで途中から闘志を燃やしていた?ようだが、わたしのペースが上がらず追い抜けなかった。ゴメン。でもデッドヒートにならなくてよかったかも?
 涸沢出合に10:50着。さらに、ほぼ水流通しに、所々左岸の巻き道をたどり、しばらく登っていくと左俣と右俣の出合。左俣出合は雪渓で埋まりその上に土砂が散乱していて凄惨な感じさえする。やはり今年の多雪の影響か。右俣は、左俣とは対照的に穏やかに水を落としてくる。後ろを振り返れば、蒼い空に真正面に屏風ノ頭。
F1とファミリー  滝といえるようなのはふたつ。F1は左岸の大岩にフィックスロープがあり、使わないで上ろうとチャレンジしたけどやっぱり掴んでしまった。F2は水流右を直登オッケー。このF2を登りきったところではっきりと傾斜が緩み、右俣カールの全景とそれをぐるりと取り巻く横尾尾根と縦走路の主稜線が目に飛び込んできた。暑さにメゲ気味だったのが元気になる。登山道のない天然のカールはすばらしい。8月も終わりだというのに、今年はまだお花畑が残っていた。ハクサンフウロ、チングルマ、シナノキンバイ、クルマユリ、イワツメクサ・・・。
 雄大な景観を行く手にがんばり、モレーンの丘かと思われる小さな樹林帯を越す。最後の大きな雪渓では爽やかな風が吹き抜けた。
 汗が一気に引いていった。ここは文句なしに楽しかった。
幸せな時間  横尾尾根のコルをめざしていくと、カールの底から一線を画してカール壁への登りとなる。決まったルートはないのでいちばん低いあたりをめざしていく。不安定な岩が積み重なり心安らげない。落石もあり。はるかはるかな昔に氷河が削っていった側壁を登っているってこれはすごいね。ヘロヘロながら感動しているわたし。やっと横尾尾根に這い上がると、突如眼前に槍ヶ岳の雄姿が現れた。
 天気が良いことが前提だけど、こういうダイナミックな景観が入れ替わり現れてくるのはやっぱり穂高連峰だなぁ。
 穂高は一般の時期に一般ルートからだと、どんなにいいだろうと思っても、あの混雑を思うとどうしても行く気が起きなかった。山は人が少ないほどいいと単純にわたしは思っている。高山植物が咲き乱れ、あるいは紅葉が錦織りなすどんなに鮮やかな景色でも、人で溢れる山は勘弁だ。だから今回のバリエーションルートには喜んで参加させてもらったのです。
これぞ北アルプス  横尾尾根に上がった地点から左へちょっと行くと天狗原からの登山道に出る。この横尾尾根上部は、本谷右俣カールと天狗原カールに挟まれてかなり大きな岩が盛り上がるように積み重なっている。氷河の強い力が両側から作用したためという説明には納得してしまう。
 槍穂縦走路に出て、緩やかな南岳ピークで記念撮影後、南岳小屋のキャンプ地へ。小屋でビールで乾杯し、宿泊者の女性たちと話していたら、外は風も出てきたようでテントへ行くのがちょっとばかり億劫に思えた。しかし、テントに潜り込んだら、あーやっぱりほっとした。いつものテントにいつものメンバー・・・安らぐ。
南岳ピークで  今回はタイトな日程から軽量化のため、食料はリーダー自ら「梅ジャコおこわ」を用意してくれたがこれは良かった。疲れたときでも食べやすい。美味しい。いけます。
 むかし屏風も滝谷も登った金子さんは、まだ元気そうに飲んでいたが、わたしは疲れていてこの夜は早めに?ダウンしてしまった。
 翌朝は皆やや寝坊気味になってしまい、予定していたキレットではなく、天狗原経由で槍沢から下山した。氷河公園まで下ると人がちらほら、槍沢ではたくさんの登って来る人たちと行き交った。上高地に1時半過ぎに着いた。
 今回の北アルプスはなんだかホ~ンワカと楽しかった。お世話になりました。

〈コースタイム〉
8/26 上高地(6:00) → 横尾(8:30) → 本谷橋(9:40) → 本谷右俣入渓(10:00) → 涸沢出合(10:50) → F1(11:55) → F2(12:40) → 横尾尾根(15:00) → 南岳(16:50) → 南岳小屋キャンプ場(17:00)
8/27 南岳小屋キャンプ場(6:00) → 天狗池(7:40) → 槍沢登山道(8:00) → 横尾(10:50) → 上高地(13:40)

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