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谷川岳幽ノ沢・V字状岩壁右ルート
坪松 聖幸

山行日 2006年9月17日~18日
メンバー (L)小幡、安齋、竹内、坪松

 何回か本チャンには行ったが、いつもセカンドばかりであり、本当の充実感が味わえなかったように思う。今回は、いよいよトップで登るので緊張もするが、今までの練習の成果を活かし、無事に登りきりたい。
 17日13時、秋葉原駅に集合し安齋さんの車にて、一ノ倉沢出合の駐車場を目指す。高速をおりるとラフティング用のゴムボートを乗せたトラックと幾度かすれ違い、水着姿で路上を歩く若者達が目に着いた。途中、スーパーに立ち寄るが、店を改装するようで、品揃えが悪く、買いたい物があまり無くて、とりあえずちくわと薩摩揚げを大量に買い込んだ。16時40分頃に駐車場に到着。車から降りると目の前には、岩壁があり、初めにここを登ろうと考えた人達は、とても凄いなと感動する。駐車場には、余り車も停まっておらず、直ぐにテントを広げて幕営と宴会の準備をする。ちなみにここに備え付けてあるトイレは、もの凄く綺麗でこの中で寝袋を広げて眠っても良いと思った。いつまでもこの綺麗さを保つように大切にみんなで使用することが出来れば良いと思う。
 夕食については、各人で用意だったが、竹内さんがおでんを作ってくれたので、それに買い込んだちくわと薩摩揚げを入れてみんなで食べる。お酒と会話がはずみ、宴も盛り上がって来たが、適当な所でおひらきにして明日午前3時起床と決め、午後8時30分に就寝。
 翌日、時間通りに起きてテントを撤収して準備に取りかかる。辺りは、真っ暗で少し肌寒く、他の人達は、誰も起きていないようだ。思った以上に早く撤収と準備が終了し、午前3時50分には、駐車場を出発して4時15分位には、幽の沢出合に到着。かなり迅速な行動で、大変よろしいがまだ薄暗く、沢沿いを登るのが少々不安である。左に曲がるナメ滝を越えいくつかの滝を越え、沢が右に曲がる所で大きな滝があるのだが、そこから雪渓の状態が解らないので、リーダーの小幡さんが、確認に行くが通れそうに無いので、ナメ滝まで下り、灌木帯の中を抜けて展望台に出る。ここからは、岩壁が良く見渡せるが、まだまだV字状岩壁への取り付きまでは、長そうだ。展望台から懸垂で降りて、軽い食事を取り休憩する。後続は、誰もこない様子で、もう一度ルート図に目を通す。多分先に見えるVの字になっている所に取り付きがあるのだろう。目の前のスノーブリッジを慎重に抜け、苦手なスラブ帯を登っていくと、目標にしていたV字状岩壁が見え、カンテ状の岩を登る前に安齋さんとアンザイレンをする。カンテ状の岩場は、簡単に登れたのだが、自分がルートを間違えて、右にトラバースする所を、気づかずに直上してしまい、クライムダウンしたのだが、それが今回で一番緊張する場面であった。足下をしっかり確認し、一歩一歩慎重に降り、無事に元の位置に着いたのもつかの間、そこからトラバースする際も支点が少なく、浸みだしもあり、何とも気の抜けない始まりであり、ここで苦戦していて大丈夫なんだろうかと思う。
 その後のルートであるが、上を確認してみると岩溝状をひたすら登っていくようである。最初に安齋さんがトップで行かれ、自分がビレイをする。このピッチも支点が少ないが、ビレイ点まで登り、上から確保してもらい自分も登り始め、ヌンチャクを回収していく。先程のクライムダウンで怖い思いをしたが、ここは、すんなりと登れた。
 ここでトップを交代し、今度は、間違えないようにルートをしっかり見て登る。技術的に難しくないが、トップで登ると緊張感がある。ビレイポイントで確保の体勢をしっかり取って、安齋さんに登ってきてもらい、トップを交代しスラブを登っていく。ルートを迷わずに登って行けているので、順調だと思う。更にスラブを登り、核心下のテラスに出る。安齋さんがトップとなり、出だしの狭いルンゼを登り、かぶっている所を豪快に抜ける。最初の所が少し濡れていて、草付が滑りそうで少し怖かったが、核心を抜けて坪松にトップ交代。チムニーの上に草付があり、チムニーの中を登ろうとしたが、ここも濡れていたので、外から抜けて草付を登る。ここでまた安齋さんとトップを交代し、登っていくと開けた小ピークにたどり着いて休憩を取る事にする。緊張と疲れのせいか、とにかく腹がへり、クラッカーがとてもうまい。
 ここから直ぐに尾根に出られるのかと思っていたが、あと2、3ピッチは、かかりそうである。休憩後再び気合いを入れ直し、自分から登るが、右の方に上がっていき凹角の所を登って行くが、支点がなく途中で少し行きづまり、後ろからきた小幡、竹内ペアに先を越される。どうやら、灌木帯を素直に抜けていくのが正解だったようだ。そこから左に行き、灌木帯の中を通って尾根に出て、安齋さんと固い握手をする。午後2時5分登攀終了。多少出戻りもあり、大分時間が掛かってしまったと思う。
 他のパーティーが登って来る様子もなく、登攀用具とロープを整理し、尾根を下り始めると、途中で突然右ひざが痛くなり、歩くのがつらくなる。最近走りすぎなのだろうか?尾根を下り、沢添いを歩き、林道を通って駐車場に帰ってくる頃には、膝の痛みは消えていた。どうやら下りだと膝の調子が悪いようだ。
 今回の山行でルートを見極める力が如何に重要であるかを実感した。またトップで登り、落ちられないプレッシャーと登った後の充実感も味わう事が出来た。もっとゲレンデでしっかり練習してまた谷川岳に来たいと思う。

〈コースタイム〉
一ノ倉沢出合駐車場(03:50) → 幽ノ沢出合(04:15) → 取付(07:10) → 登攀終了(14:05) → 一ノ倉沢出合駐車場(16:55)


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