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八ヶ岳横岳西壁
その1 中山尾根
坪松 聖幸

山行日 2007年2月3日~4日
メンバー (L)荻原、小幡、坪松

 雪のある時期のバリエーションは、残雪期の前穂北尾根を登ったことがあるぐらいで今回が初の本格的な雪稜となる。ここを登っておけば、リーダーとして出している阿弥陀岳南稜にも自信がつくなと思い、例会に参加することにしました。
 アタック当日は、4日。前日は、天候が良く、とても暖かい。当日は、4時に起床するが、朝起きると風の音がやかましい。これで登れるだろうかと思ったが、リーダーの行こうと言う判断の下、食事を取って準備開始。朝食は、キムチラーメンだ。余り食欲は無かったが、食べないと持たないと思って、たくさん食べる。いつもそうだが登る前は緊張している。自分もいつかは、荻原さんや小幡さんのように少し余裕を持てるのだろうか。経験をもっと積まなければいけない。
 6時20分頃に天場を出発。途中、石尊稜を登る高橋、竹内組と別れる。お互いに頑張りましょう。昨日、偵察しに行った中山乗越まで行って一旦水分補給し、取付へと向かう。トレースも付いており、ラッセルもなく樹林帯の中を進む。取付前の樹林帯が無くなるところで、登攀準備をする。稜線上は、白くなっていて風が相当強そうだ。リッジを歩き、取付では、先行パーティーが一組おり下部岩壁を登っていた。アンザイレンしていよいよ登攀開始、荻原さんがトップを行く。直上しても登れるのか、ボルトが打ってあったが、そちらだと難しく一旦右下に下がり、凹角状を登る。凹角を抜けてフェースを登り荻原さんがビレーする。自分も登るが、練習通りにうまくいかない。着ぶくれして動きづらく、少しずつ登る。登り始めに岩を落としてしまった。2ピッチ目も荻原さんがリード、正面の岩壁を左から巻いて草付を登ってゆく。風が強く、とても寒い。待っている時間も登っている時間も厳しい。登り始めがきつかったが、草付を慎重に登り、灌木がある尾根上まで上がる。ずっと緊張感が続き、寒さが身にしみて集中力が途切れそうになる。ここから灌木にランニングビレイを取り、尾根を上がっていく。途中でピッチを切り、上部岩壁手前まで自分が行く。難しくないが、プレッシャーだ。支点を作るのにも手袋では、やりづらく時間がかかる。足場を固め腰絡みで確保をする。
 ここからが核心の上部岩壁である。この頃には、早く登り終えて天場に帰りたいと思っていた。何でこんな所にいるのだろうと思ったが泣き言なんか言っていられない。登らなきゃ帰れないのだ。荻原さんが、リードして行く。小幡さんは、石尊稜を登っている高橋、竹内ペアが見えると言っていたが、そんな余裕は自分に無く、ひたすら強風に耐え、ビレーを続ける。やがて核心を荻原さんが抜け、自分も後を追うが、難しい。特にアイゼンの爪をしっかりと効かせられない。セカンドで登っていて安心感はあるが、出だしからきつい。凹角の真ん中を登る感じで、両足を左右に突っ張る。上部の方では、A0で身体を引き上げ、ちょうどアイゼンの爪が入る所があって、それを使って乗り越える。登り切ると上の方の岩場が見える。あれを越えればもうすぐ終了だと思いながら、易しい雪稜をトップで越えてピナクル付近でビレイする。最後は、小幡さんが左から巻くようにして行く。ビレイ点に到着したのだろうが強風の為、声が届かず登っていいのかよく分からない。とりあえずロープが引き上げられているので登りだす。バランスを取りながら寒い寒いと登り切ると、風の当たらない所に支点があり、そこで小幡さんも確保していたので自分もそちらで自己確保を取る。風が当たらないのは、本当に有り難い。最後は、バンドを右へトラバースし、尾根に出て終了。やっと景色を楽しむ余裕が出てきて、周りの山々を眺める。風は強いが雲一つ無い晴天だ。ここからの下降だが、地蔵尾根を下る。まともに風を受けて、雪が舞い散り、とても目を開けていられない。樹林帯に入ると先程の強風が嘘のように治まる。もと来た道を歩いて天場に到着。先に戻っていた高橋さん、竹内さん達と合流し、テントを片付け、パッキングして下山する。最後の締めは、延命の湯に浸かり、疲れた身体を癒してリフレッシュして帰る。
登攀終了直後の組長とツボ  今回もとても緊張感があり充実した山行内容になった。稜線上の強風は、とてもつらく、身にしみて雪山の厳しさを味わった。手袋、アイゼンを着けての登攀、ロープワークについては、まだまだ未熟で練習あるのみ。後は、天候判断や状況判断を身につけ、素早く安全に登れるようになりたいと思う。いつまでも先輩方に頼ってばかりではいられないので、もっと山の経験を積んでいきたいと思う。


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