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野点山行・丹波天平
峯川 正行

山行日 2007年5月12日
メンバー (L)峯川、山沢、高木、藤井、川崎、田中(恵)、前野、石川、山崎、野口(愛)

 茶道をたしなんでいる関係上、山を歩いているといつか野点をやってみたいと思っていました。茶人にとって野点ほど素晴らしいものはなく、山々の景色や沢の音が格好のご馳走となります。山岳会において野点という企画をたてていいものなのか非常に疑問だったのですが、以前から皆様のリクエストがあったので、新緑がまぶしいこの季節にたててみることと致しました。
 野点をする場所が一番重要だったのですが、野点サイトに選定するには幾つかのポイントがありました。1.人影が少ない場所。2.藪でなく平らであること。3.一応山登りを2時間ほどこなすこと。人気がある山の山頂で野点を行うとある意味見せ物になってしまう危険性があるので、ある程度ひっそりとした場所がいいのです。色々候補があったのですが、奥多摩の丹波天平(タバデンデイロ)と致しました。親川からサオラ峠に向かうこのルートは以前一回通ったことがあったのですが、なんとも静かなルートでなんとも気持が良かったのです。ここなら人だかりもできずにちょうどいいでしょう。また、丹波天平は本当に庭園のように果てしもなく広く、「天空の楽園」と言われているようです。標高も1300m程で多少の山登りもあるので一汗かいていいかなあと。
 前日、近所の谷中のお菓子屋で主菓子を20個ほど購入し、厳重に梱包しザックにつめます。また鉄瓶や自作の茶碗などもザックの底に入れ、結局合計20kgを越えてしまいました。とにかく主菓子が崩れないようにザックを慎重に丹波天平まで担ぎ上げられるかが核心でした。
 皆さんの行いがいいのか当日は雲一つない快晴です。お陰で奥多摩駅は大混雑。満員の丹波行きのバスに乗り、親川に向かいます。サオラ峠を示す指導標を見やりながら住居横を進み、山道に入ります。道脇には電柱が立っており、この先にはかつて人が住んでいて、住居がいくつかあったのです。まだ廃墟がいくつか残っており、廃墟マニアの私にはなんとも興奮してしまうエリアなのです。30分ほど登ると割れた茶碗や靴などやけに生活臭のあるものが出てくると廃屋が見えてきます。一体いつまでここに人が住んでいたのでしょうか。そしてよくこんな大変な所に住んでいたなあと。すぐ先には水場があり、ここで野点用の水を汲んでいきます。お花も咲いていたので、茶花として少し拝借させて頂きました。暫く進むと、住居跡の台地のような場所に出て、天平尾根に取り付いたようです。ここからは現在は廃道ですが後山川側に水平路が延びていたようで行く先は三条の湯に向かうようです。しばらく雑木林を電光形に登っていき、広い台地のような所に出ます。ここは保之瀬天平という場所で丹波天平に比べて規模が小さいです。暫く気持ちのいい台地上の道を進み赤松なども出てきてびっくりしました。思った以上に距離があったのですが、最後の急登をこなすと天空の楽園の丹波天平に到着です。登り始めて2時間くらいでしょうか。なんとも素敵な場所です。ここが標高1300mの山頂なのか疑ってしまいます。
庭園のような丹波天平  新緑も本当にまぶしく、この時期に訪れて本当に良かったです。野点エリアは事前に決めていました。まずは日暮里で買った毛氈もどきを広げて、鉄瓶や茶箱という携帯お茶セットを出して、お点前の準備を行います。作務衣も持参したのでそそくさと着替えます。ザックに大切にしまってあった主菓子は無事でした~。お点前はやるからにはいい加減にできない性分なので、茶箱雪点前という正式なお点前をさせて頂きました。帛紗を捌いているときにふと遠くに目を見やるとなんとも翠がまぶしく本当に気持ちが和みました。
茶箱にてお抹茶が点ちました  高木さんに正客をしていただき、藤井さんには次客をして頂きました。担ぎ上げてきた自作の茶碗で点てて飲んで頂くなんてなんと幸せであり、登山、茶道、陶芸全てが初めて融合されました。そして、偶然お会いした方にも一期一会ということで席に入って頂きました。こんなこともあるかとお菓子は少し多めに持参してきたのです。皆さんにお抹茶を点てて、その後はワインなども出てきて、GW合宿の話など様々な話をしているうちに3時過ぎとなり、丹波に向けてそそくさと下山です。今日はサオラ峠には向かわず、丹波への最短ルートです。あまり使われていない感もありますがトレースはしっかりしていて、1時間ほどで丹波小学校の脇に出て、そのまま営業再開した丹波山温泉のめこいの湯に入りました。
 今回は初めての野点山行でしたが、なんとも思い出に残る山行となりました。こんなまったり山行を山岳会として例会にいれていいものなのかは未だ不明ですが・・・。

山名板を前に記念撮影

〈コースタイム〉
5月12日
親川(10:15) → 廃屋前水場(10:50~11:00) → 天平尾根取付(11:25) → 保之瀬天平(11:50) → 丹波天平(12:45~15:20) → 丹波小学校(16:13) → のめこいの湯(16:30)


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